「いいゲームが繰り広げられた。両チームともハードワークをしチャンスを作った。1-1で終わったがフェアな結果だと感じる」(横浜FM・ポステコグルー監督)
「開幕戦で勝った相手に対して、ホームでもしっかりと勝ちにいくということを選手に伝えてスタートした試合。引き分けになったことは残念に思う」(G大阪・宮本監督)
どちらの指揮官の言葉にも実感がこもる。試合全体を見ればホームのG大阪が主導権を握っていたが、横浜FMは自分たちのスタイルを貫き、6連勝中の相手に引き分けに持ち込んだ。確かにG大阪にゴールだけが欠けていたとは思うが、それでも互いに球際で激しく戦うナイスゲームだったということには宮本監督も同意するだろう。
この試合では[4-4-2]を採用した宮本監督。一方の横浜FMは[4-3-2-1]のクリスマスツリー型。試合全般を通じてG大阪は激しいプレッシングで横浜FMに圧力を掛け続けた。ただプレスを掛けるというのは、選手が体力の続く限りがむしゃらに走ればいいというものではない。ボールを奪われた瞬間、ネガティブトランジッションでいかにサイドでボールを奪うまで追い込めるかになる。
立ち上がりは両チーム似たようにプレッシングを見せていた。最初の10分はG大阪の、その次の10分は横浜FMのプレッシングが相手を押し込むという猫の目のような展開だった。ただここでG大阪はひとつの割り切りをする。ロングボールをFWパトリックに運ぶ。そのセカンドボールの支配率がG大阪に傾いたことで、徐々にゲームはG大阪のものになっていった。特に横浜FMのボランチの両サイドにできるスペースを有効活用するケースが多かった。
「チームとして前からいくことは徹底している。(しかしロングボールを)蹴られてセカンドを拾うために戻るタイミングが遅れてしまった」(MF渡辺皓太)
G大阪のロングボールを使ったプレッシングに、細かいパスを繋いで崩すことを徹底している横浜FMは苦戦を強いられた。ただパスにこだわることはチームとしての哲学の問題になってくる。横浜FMには彼らのやり方があるということだ。その結果として去年の優勝があるし、それを見た相手はどう崩すかを考える。その攻防がこの試合の球際を非常に激しいものにした。
G大阪から見れば「前半から良い距離感でプレイできていたし、守備の時の距離感やプレッシャーの掛け方が良かったので、ボールを取ったあとそのまま選手たちが近い状態でボールを回して攻撃にいけた。まず自分たちが回すところからスタートするよりは、前でボールを奪ってからスタートするというようなところが良かったと思う」(FW宇佐美)。
まさにこのコメント通りだった。
試合は26分にFWマルコス・ジュニオールのシュートのリバウンドがDFに当たってゴールインし、横浜FMが先制。このままハーフタイムかと思われた前半アディショナルタイムに、宇佐美がGKにエリア内で倒されPK。これをしっかりとゴールに沈めた。結果的にはこのゴールがそれぞれにとって唯一のものとなった。ただゴールシーンこそ少なかったものの、両チームの激しい攻防、GKのビッグセーブなど見所の非常に多い試合だった。
過密日程を言い訳にしないナイスゲーム。両チームの選手に拍手を送りたい。
文/吉村 憲文