[名良橋晃]J1は残り5試合 OBの名良橋が語る、首位に立つ鹿島の強さ

攻守で主導権を握る鬼木スタイルが浸透

攻守で主導権を握る鬼木スタイルが浸透

ボランチを務める舩橋は、鬼木監督が目指すスタイルを体現している Photo/Getty Images

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現在、J1の優勝争いは首位の鹿島が2位神戸に勝ち点5差をつけています。34節神戸戦、35節京都戦に連勝すると優勝に向けていよいよ視界が開けてきます。いまの鹿島は鬼木達監督がやろうとしているサッカーが浸透しつつあり、24節柏戦から10試合負けなし(7勝3分)となっています。

鹿島といえば試合巧者で勝負強いという伝統があります。最近では30節浦和戦のように、押し込まれても我慢強く守って勝ってきました。こうしたベースをもとに、鬼木達監督は攻守で主導権を握るサッカーを目指しています。シーズンの前半戦から選手の組合せをいろいろと試行錯誤するなか、ようやく形になってきました。やろうとしているサッカーに近づいていると思います。

いまの鹿島が志向するサッカー、鬼木達監督のチーム作りではボランチが肝となります。後方からビルドアップするときに、ボランチのところで相手のプレスを怖がらずに素早く前進させたいというのがあります。舩橋佑はこれができるタイプであり、相手を潰すことに長けている三竿健斗も低いポジションでボールを受けられるようになっています。
柴崎岳、知念慶、樋口雄太も含めて、ボランチが後方から前進できるようになったことで、鈴木優磨、レオ・セアラの強力2トップ、チャヴリッチ、夏に加入したエウベルなど攻撃の選手たちがいかんなく力を発揮できています。さらに濃野公人、小池龍太といったサイドバックがからむことで攻撃にバリエーションが生まれています。

攻撃面だけではなく、守備の強度もチーム全体で共有できはじめています。結果として、すべての試合ではないですが、攻守両面で自分たちがアクションを起こして主導権を握るサッカーができてきています。そして、いまの鹿島はスタメン、サブともに誰が出場しても同じように戦うことができています。松村優太、荒木遼太郎、徳田誉といった途中交代で出場することが多い選手たちも結果を出していて、一人一人が戦力になっています。誰かにフォーカスすることができないぐらいチーム全体が良いなと感じています。

32節名古屋戦ではキム・テヒョン、知念慶が累積警告で出場停止でしたが、4-0で勝利しています。今季の鹿島は誰が出場してもチーム力が落ちないのが強みになっています。
 

アットホームな雰囲気もジーコスピリットのひとつ

アットホームな雰囲気もジーコスピリットのひとつ

植田は2016年のJI優勝を知るひとりだ Photo/Getty Images

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アットホームな雰囲気もジーコスピリットのひとつ

残り5試合で2位に勝ち点5差をつけていますが、鹿島はクラブ全体でここからが難しいとわかっています。2017年も終盤戦を迎えて首位に立っていましたが、ラスト2試合に引分けて最終的に同勝ち点で並んだ川崎に得失点差で優勝をさらわれています。このときの川崎は鬼木達監督であり、監督自身が優勝する難しさを一番わかっていると思います。

また、長く国内タイトルから遠ざかっている鹿島ですが、いまのチームには2016年のJ1優勝を知る選手が4人います。柴崎岳、植田直通、三竿健斗、鈴木優磨であり、彼らを中心により気持ちを引き締めてくると思います。アカデミーで育った生粋の“アントラーズっ子”である舩橋佑、佐藤海宏なども優勝へ向けた強い気持ちを持っているでしょう。

クラブのOBである私は、鹿島に優勝してほしいという気持ちがあります。実感しているのですが、鹿島はアットホームでOBが帰ってこられる雰囲気があるんです。いまは中田浩二フットボールダイレクターをはじめ、トップ、アカデミーを含めて選手時代から鹿島というクラブを良く知る方々が働いています。

アカデミーでは小笠原満男、本山雅志、本田拓也など。トップでは鬼木達監督、柳沢敦、中後雅喜、曽ケ端準など。さらには磐田で優勝経験が豊富な田中誠がいます。OBだけではなく、他クラブで経験を積んだ方もいる。とてもバランスが良いなと感じています。

アントラーズ・ファミリーという言葉がありますが、これはジーコさんがとても大事にしていることです。おそらく、シーズン終盤ころにまた満を持して来日するでしょう。ジーコさんは“神”なので、個人的には来日してくれれば(鹿島の優勝は)大丈夫だろうと思っています。

そのジーコさんと現役時代に一緒にプレイしていたのが鬼木達監督で、人を引き付ける力があり、選手交代のタイミングも早くて誰よりも勝利に対する執念があるなと感じています。しばらく優勝がない鹿島に、ジーコさんと一緒にプレイしていた鬼木達監督が戻ってきて優勝を争っている。こうしたつながりもあるのですね。

J2では水戸が首位をキープしていて、茨城県が熱い状況です。鹿島と水戸がダブル優勝し、来年のJ1で“茨城ダービー”をぜひみたいですね。間違いなく、そのチャンスが訪れています。とはいえ、最後の最後までホントになにが起こるかわかりません。目が離せない状況が続くと思っています。

構成/飯塚 健司

※電子マガジンtheWORLD310号、10月15日配信の記事より転載
 

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