[名良橋晃]若手だけじゃない 名良橋晃が厳選するJで輝くオーバー30

小屋松は戦術にマッチ 藤田はチームのエンジン

小屋松は戦術にマッチ 藤田はチームのエンジン

小屋松は上位をキープする好調な柏の攻撃を引っ張っている Photo/Getty Images

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 これからのサッカー界を作っていくのは間違いなく若い選手たちですが、彼らの成長に欠かせないものがあります。年齢を重ねた選手たちの“経験”であり、いろいろなことを吸収して選手としての幅を広げてほしいです。ベテランが蓄積してきた経験を発揮し、若い選手がこれを吸収することでチーム力のアップにつながるからです。

 小屋松知哉(柏)は今年30歳になりましたが、上位で戦う柏のなかで攻撃の武器になっています。縦にいけるし、中央にもいける。狭いスペースも打開できて、得点にからむこともできます。今季ここまで3得点に加えて、4試合連続アシストもありました。右サイドの久保藤次郎がE-1選手権を戦う日本代表に入りましたが、いまもなお成長を続ける小屋松知哉も可能性があったと考えています。

 名古屋、京都、鳥栖を渡り歩いていまは柏でプレイしていますが、今季から指揮官を務めるリカルド・ロドリゲス監督が志向するボールを保持するスタイルにフィットしています。小屋松知哉は年齢を重ねても色褪せないプレイをみせてくれています。
 藤田息吹(岡山)はまさに縁の下の力持ちとして、黒子に徹してJ1初挑戦の岡山を支えています。攻守の潤滑油として欠かせない選手で、田部井涼、神谷優太などダブルボランチを組む相棒の良さを引き出す力があります。木山隆之監督と山形時代に一緒にやっており、気心が知れています。間違いなく、ここ数年の岡山の躍進に力を貸しています。

 ポジショニングが良く、チーム全体のバランスを取ることができます。気配りができるうえに、前に出て得点チャンスにからむこともあります。34歳となった藤田息吹ですが、私はチームのエンジンだと思っています。

 J2では同じく34歳の久富良輔(藤枝)が3バックの右センターバックを務め、神出鬼没な動きで攻撃でも貢献しています。群馬や栃木でもプレイした選手で、4バックの右サイドバックというイメージでした。走力があってウィングバックもできるタイプで、アグレッシブな藤枝にマッチしています。

 状況判断がよく、攻め上がって得点にからむこともできます。昨年が2得点、今年はすでに3得点です。藤枝は選手の入れ替わりが多いです。久富良輔は2016年、2017年、その後に移籍はありましたが、2020年から再び藤枝でプレイしています。これからもチームの主軸として活躍を続けてほしいです。

乾&長友は衰え知らず 香川は若手の教科書

乾&長友は衰え知らず 香川は若手の教科書

観客を楽しませる乾は稀代のファンタジスタだ Photo/Getty Images

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乾&長友は衰え知らず 香川は若手の教科書

 ここからは誰からもリスペクトされている選手で、こうした内容で取り上げるときに“外せない”3名です。まず、乾貴士(清水)は楽しくサッカーをやっていますね。ファンタジスタでみている者をワクワクさせてくれます。永遠のサッカー小僧という印象です。

 パスセンスがあるという一言では片づけられない能力、ひらめきがあり、パス一本一本にメッセージを感じます。もはや、蹴られたボールさえ気持ち良いと思っているかもしれません。創造性があり、キックの種類が豊富で走ったところにボールが出てきます。私が現役で乾貴士と一緒にプレイできたなら、きっと走りがいがあるでしょうね。

 長友佑都(FC東京)は衰え知らずの鉄人で、E-1選手権では日本代表の左センターバックを務めて自分より高身長の相手にヘディングで競り勝っていました。右サイドバックを務めたJリーグ24節の浦和戦では2つのアシストがありました。38歳を迎えて走力、スピードともに衰えておらず、複数のポジションを高いレベルでこなすことができます。来年のW杯に出場する可能性も十分にあると思います。

 いったいどこからこのパワーが来るのか……。いまは以前よりも食事面や医療面などが進化し、チームスタッフも充実しています。いろいろなデータをもとに24時間プロとしてどうあるべきかを考えてストイックに過ごしているのだと思います。長友佑都にはまだまだ伸びしろがありそうです。いつまでもFC東京の太陽でいてほしいです。

 香川真司(C大阪)はいまのC大阪を引っ張っていますね。天皇杯ラウンド16のFC東京戦ではうまさのあるテクニカルなゴールを決めてくれました。Jリーグ20節の同じFC東京戦ではロングスルーパスでアシストもしています。36歳になりましたが、一度身体に染み付いた技術は錆びないですね。

 過酷な気候で守備を考えると本当にきついと思いますが、効果的なポジショニングを取ってクレバーにプレイしています。また、風格についてもダンディになってきたなと感じています。良い大人になってきましたね。香川真司になにか言われたら説得力があります。一言一言に重みがあります。C大阪からは今夏に北野颯太がザルツブルクに移籍しましたが、香川真司は若い選手にとって教科書、お手本であり、一緒にプレイした彼は良い経験ができたなと思います。

構成/飯塚 健司

※電子マガジンtheWORLD308号、8月15日配信の記事より転載

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