ラウタロは替えがきかない GKゾマーは大好きな選手
インテルの前線にはL・マルティネスがいる。誰と組んでも力を発揮できる Photo/Getty Images
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インテルがCL決勝に進出しました。バルサとの準決勝は2試合とも打ち合いになり、「これは終わった」という瞬間もありました。第1戦がリードしながら3-3で終わり、第2戦も先制しながら2-2、2-3という展開に。それでもサン・シーロの雰囲気は変わらず、インテリスタが力強く選手を後押ししていました。バルサを相手に劇的な展開を制して4-3と引っ繰り返して勝ち上がったのは、大きな意味があります。
セリエAでも首位ナポリと勝ち点1差で、インテルはスクデットとビッグイヤーの2冠を達成する可能性があります。残りは2節で、37節ラツィオ(18日)、38節コモ(25日)という曲者との連戦になります。その後、CL決勝(31日)をパリ・サンジェルマンと戦います。ケガ人を抱えるなか、この3試合をターンオーバーがうまいシモーネ・インザーギ監督がどう戦うか注目しています。
個人的なことを言えば、私はイタリアの復権を期待しています。インテルは一昨年も決勝に進出し、マンチェスター・シティに0-1で競り負けています。CLでイタリアのクラブが優勝したのは、2009-10のインテルまで遡らなければなりません。久しぶりにイタリア勢の優勝を見たいのですが、PSGもミランから移籍したジャンルイジ・ドンナルンマ、ナポリから移籍したクヴィチャ・クワラツヘリアなどがいる力のあるチームです。
インテルのカギを握るのは……、やはりラウタロ・マルティネスです。替えがきかない選手で、いろいろなことができてマルクス・テュラム、メフディ・タレミなど誰とでもコンビを組める。シーズン当初は点を取れない時期がありましたが、いまはコンスタントに取れています。
GKヤン・ゾマーは私が大好きな選手です。セリエAがもう少し日本で人気があったなら、間違いなくもっと名前を知られていたはずです。スイス代表というのもネームバリューの低さに影響しているのかもしれません。身長183㎝でGKとしては小柄ですが、補って余りあるバネがあります。バルサ戦でもスーパーセーブ連発でした。
このゾマーもそうですが、フランチェスコ・アチェルビ、ステファン・デ・フライなどインテルの最終ラインは経験豊富な選手が多いです。PSGは攻撃力のあるチームですが、インテルには百戦錬磨の守備陣がいます。また、相手の攻撃に対してそんなに受けにまわるチームでもありません。中盤両サイドのデンゼル・ダンフリース、フェデリコ・ディ・マルコは「個」の力で突破できます。彼らがからんでいかに攻撃のバリエーションを出せるかもポイントになるでしょう。
インテルがウノゼロで勝つ 小杉はステップアップが楽しみ
決勝はインテルが1-0で勝つ。得点者はM・テュラムか!? Photo/Getty Images
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インテルに勝ってほしいですが、正直なところCL決勝はどちらに転ぶかわからないです。会場となるアリアンツ・アレナでは準々決勝でバイエルンと戦い、2-1で勝っています。良いイメージで臨めるかもしれませんが、決勝は別物でまた違う雰囲気になるでしょう。そうしたなか、コレアが今季で退団となります。他にもインテルでのラストゲームという選手がいると思います。そうした選手たちのためにも勝ってほしいです。
せっかくなので、スコアを予想しておきます。インテルが美学であるウノゼロ(1-0)で勝利します。決勝点をマークするのは、M・テュラムです。厳しいことで知られるお父さん、L・テュラムさんも観戦に来ると思います。ユヴェントス時代に4度スクデットを獲得していますが、お父さんはCL優勝がありません。欧州制覇を成し遂げたM・テュラムが、厳格な父の前でビッグイヤーを掲げる──。そんなシーンが見られると予想します。
ここからは、ECLで準決勝に進出したユールゴーデン(スウェーデン)でプレイする小杉啓太について紹介させてください。湘南のアカデミー育ちで、U-17W杯に出場したときのそのプレイを見ました。左SBを任され、リーダーシップ、闘争心があるタイプでした。対人プレイに強く、推進力があるなとも感じました。
進路はどうなるのだろうと思っていましたが、トップ昇格の声は聞こえてきませんでした。その矢先、ユールゴーデンへの完全移籍が決まったと知りました。驚きましたが、順応性、コミュニケーション能力が高く、すぐにチームの“輪”に溶け込んだようです。左SBのポジションをつかみ、ECLでは11試合に先発して2得点しています。
ユールゴーデンは準決勝でチェルシーと戦いましたが(合計1-5で敗退)、小杉啓太は第1戦に左SBで出場し、第2戦では右SBを務めています。サラッと言いましたが、敗れたとはいえECL準決勝でチェルシーと対戦しています。こうした経験は、間違いなく大きな財産になったと思います。
現地での評価も高いと聞いています。欧州でのキャリアはスタートしたばかりで、まだまだこれからです。近い将来、ユールゴーデンから次のクラブに行くでしょう。今後のステップアップをとても楽しみにしています。
構成/飯塚健司
※電子マガジンtheWORLD305号、5月15日配信の記事より転載