[特集/新生レアル徹底解剖 03]新たな戦力がアロンソ体制で台頭! レアルに新風を吹き込む若手5人

ハイペースで得点しているキリアン・ムバッペ。複数のポジションで稼働するフェデリコ・バルベルデ。稀代のドリブラー、ヴィニシウス・ジュニオール。世界屈指のメガクラブであるレアル・マドリードは、常に高品質なタレントを揃えている。ジュード・ベリンガム、エドゥアルド・カマヴィンガといった若くしてすでにポジションを掴んでいる選手もいる。

そうしたなか、今季はまた新たな若手が活躍をみせている。いよいよ覚醒した感があるアルダ・ギュレル。今夏に加入した3人、ディーン・ハイセン、アルバロ・カレーラス、フランコ・マスタントゥオーノ。さらには、レアルBで経験を積んで今季トップで出場時間を増やしているゴンサロ・ガルシア。シャビ・アロンソ新監督のもと、復権を目指すレアルに新風を吹き込んでいる若手たちを紹介する。

トルコとアルゼンチンの至宝 ギュレル&マスタントゥオーノ

トルコとアルゼンチンの至宝 ギュレル&マスタントゥオーノ

アルダ・ギュレル(左)とディーン・ハイセン。今季のレアルは若き力が躍動する Photo/Getty Images

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左足を利き足とするアルダ・ギュレルは、トルコのメッシ、トルコのエジルなどと呼ばれる20歳で、2023-24の開幕前にレアルへ加入。ケガもあってデビューは遅れたが、コンディションが整うと右サイドのウインガーやトップ下で起用され、初年度から10試合6得点という数字を残した。

しかも、すべてが先発ではなく、6試合が途中出場であり、先発4得点、途中出場2得点というスタッツで、合計プレイ時間373分で6得点だった。単純計算で約62分に1得点という驚異的な結果を残し、強烈なインパクトを残した。

加入2年目の昨季は28試合に出場して3得点4アシスト。稼働するポジションを増やし、33節ヘタフェ戦ではボランチを務めて決勝点となった1点を決めている。しなやかな身のこなし、巧みなボールコントロール、精度の高いパス、豊富な運動量。メッシやエジルだけではなく、ときにはルカ・モドリッチを思い浮かべるパフォーマンスをみせ、複数のポジションで機能するポリバレントな力があることを示した。
今季からレアルの指揮官となったシャビ・アロンソ監督は[4-2-3-1]をベースに、中盤の形を変えて[4-3-3][4-4-2]で戦うことがあれば、最終ラインを3枚にして[3-4-2-1]で戦った試合もあった。ギュレルが務めるのはトップ下、インサイドハーフなどで、右サイドで先発したのは2-5で敗れた7節アトレティコ戦のみ。

チーム内に右サイドで生きるフランコ・マスタントゥオーノやブラヒム・ディアスがいることを考えると、今後も中央でプレイする試合が多くなるだろう。なぜなら、そのほうがフィニッシュにつながるパスを出せて、自分でも得点できるギュレルの能力を最大限に生かすことができるからだ。

動けばボールが出てくる──。いまのレアルはギュレルに対してそうした信頼感があり、ボールが入ったときのまわりの動き出しが早い。とくにキリアン・ムバッペとの相性がよく、ここまで3得点3アシストとなっているが、アシスト3つはすべてムバッペに供給したものだ。レアルの“新ホットライン”であり、両名によって今後多くのゴールが生まれることになるだろう。

フランコ・マスタントゥオーノはブエノスアイレス出身で、2023年に16歳でリーベル・プレートとプロ契約を締結したアルゼンチンが生んだ逸材だ。18歳となる今年8月に欧州へ移籍することが確実視されていて、多くのクラブが獲得を狙っていた。そうしたなか、クラブW杯直前にレアルへの加入が発表された。

そのクラブW杯ではグループステージ3試合に先発し、右サイドのワイドなポジションを基本にピッチを幅広く動いて攻撃をリードしていた。当時まだ17歳だったが、リーベル・プレートの攻撃はマスタントゥオーノを経由することが多く、「ピッチのなかに何人のマスタントゥオーノがいるんだ」という印象を受けるほど存在感があった。

南米で早くから頭角を現わした神童でも、欧州では苦戦する。そうしたケースもあるが、マスタントゥオーノはこれに当てはまらず、シーズン序盤から自分の力を発揮している。開幕戦は途中出場だったが、2節オビエド戦の先発を皮切りにスタメンを確保し、CL2試合を含めると公式戦10試合中7試合に先発している。

ボールの受け方、運び方、フィニッシュなどプレイスタイルがすでに仕上がっていて、右のマスタントゥオーノ、左のヴィニシウス・ジュニオールというのがいまのレアルでは基本となっている。タッチライン近くにいるだけではなく、ボールがある場所、持っている選手によって的確なポジションを取り、パスの受け手となっている。

6節レバンテ戦で初ゴールをマークしたが、この試合では随所に特長が発揮された。左サイドでヴィニシウスがボール持つと自身はスルスルと中央へ動き、ゴールに近いポジションへ。得点にはならなかったが、利き足である左足でファーサイドを狙った技巧的なシュートがあれば(枠外)、ヴィニシウスのシュートをGKが弾いたところに突っ込み、右足で押し込もうとした惜しいシーンもあった(クロスバー直撃)。

ゴールシーンはこうしたプレイとはまた違った。自陣でボールを持ったヴィニシウスがボールを運び、カウンターのチャンスに。逆サイドを駆け上がったマスタントゥオーノに正確なパスが出され、縦にドリブルを仕掛けて利き足ではない右足でニアサイドをぶち抜いた。切り返して左足でフィニッシュだけではなく、縦に抜けて右足もあると示したプレイで、今後対戦するチームは対策に苦労するのは間違いない。

モダンなスタイルを体現するカレーラス&ハイセン

モダンなスタイルを体現するカレーラス&ハイセン

197cmの長身で、エアバトルも抜群に強いハイセン。リュディガー離脱の穴を感じさせないプレイを見せている Photo/Getty Images

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アルバロ・カレーラスはカンテラ出身だが、2020-21に18歳でマンチェスター・ユナイテッドに移籍し、その後はローンでプレストン、グラナダ、ベンフィカなどを渡り歩いた。左利きでサイズのある左サイドバックで、昨季はベンフィカでポジションをつかみ、CLやクラブW杯でもプレイして経験を積んだ。そして、レアルに5年ぶりの復帰となった。

22歳となったA・カレーラスは、すぐにシャビ・アロンソ監督の信頼を勝ち取った。ラ・リーガでは全8試合に先発し、7試合で左サイドバックとしてフル出場している。残りの一試合は6節レバンテ戦で、レアルはこの一戦を3バックで戦い、A・カレーラスは左センターバックを務めている。

守備の強度が高く、ハードワークできる。また、攻守両面で縦にアグレッシブにいけるタイプで、前方を向いてインターセプトすることを常に狙っていて、とくに高いポジションではかわされることを恐れることなく突っ込み、マイボールにしてみせる。攻撃から守備の切り替えが早く、ハイプレスで相手にできるだけ攻撃の時間を与えないことを追求するシャビ・アロンソ監督にスタイルにマッチしている。

運動量も多く、顔を出してボールに触れるエリアが広い。斜めに動いてボランチのポジションでボールをさばくことがあれば、攻撃参加して相手PAの近くでボールタッチすることも。CLマルセイユ戦では相手陣内の深くまで侵入し、得点にはつながらなかったがクロスを折り返すシーンが何度もあった。この試合では終盤になって退場者を出して数的不利になったが、決勝点につながったPKを得たシーンでもA・カレーラスは相手PAの近くまで攻撃参加していた。

一方で、強度が高すぎるあまりファウルになり、イエローをもらうことも多い。ラ・リーガではすでに2枚、CLでも1試合出場で1枚のイエローをもらっている。ベンフィカ時代も昨季のポルトガルリーグで合計9枚のイエローを受けているし(2試合出場停止)、クラブW杯でも2試合続けてイエローを受けてグループステージ3戦目には出られなかった。

また、高いポジションを取るため、一度かわされると大きなピンチになることも。大敗(2-5)した7節アトレティコ戦では裏を取られることも多く、何度も自陣ゴールへ向かって走らなければならなかった。しかし、チームとしてハイラインを志向する以上、シャビ・アロンソ監督のなかでこうしたウィークポイントは織り込み済みなはず。今後も臆することなく前方へアグレッシブに仕掛けるA・カレーラスの姿がみられるはずだ。

ボーンマスから加入したディーン・ハイセンは身長197センチを誇るアムステルダム出身のCBで、開幕戦からセンターバックのポジションをつかんでいる。アントニオ・リュディガーが負傷離脱したことで、ここまでのレアルはハイセン、エデル・ミリトンのセンターバックコンビで戦う試合が多くなっている。

ハイセンは両足を遜色なく使える“両利き”で、足元の技術力が抜群に高い。身体が大きく一歩一歩の幅が広く、それでいて俊敏に動ける。ハイライン、ハイプレスに対応するテクニック&スピードを持つ現代サッカーを象徴するモダンなセンターバックで、背後を取られることを怖がらずに高いポジションで勝負する。

4節レアル・ソシエダ戦ではオープンスペースにロングボールを蹴られ、動きが重なったミケル・オヤルサバルを倒して一発退場になっている。しかし、A・カレーラスと同じくこうしたリスクを承知でシャビ・アロンソ監督は起用しており、ハイラインで戦う今季のレアルに欠かせない選手だと言える。

センターバック=最終ラインで守る人。幼少のころにアムステルダムからスペインに移住し、マラガ、さらにはユヴェントスの下部組織でプレイした経験があるハイセンにはこうした固定観念はなく、ビルドアップの起点になるのはもちろん、自分でボールを前方に持ち運ぶことができる。パスを出して良し、ドリブルをして良しのセンターバックだ。

得点にからむ仕事もできる。レアルではまだノーゴールだが、昨季はボーンマスで3得点している。CKから2得点、ロングスローから1得点でいずれもヘディングで決めており、セットプレイではハイセンの高さが武器になる。実際、3節マジョルカ戦ではショートコーナーからの展開でファーサイドに来たボールをヘディングで折り返し、ギュレルのゴールにつなげている。

今季の最終ラインをみると、20歳のハイセン、22歳のA・カレーラスに加えて、22歳のラウール・アセンシオもいる。6節レバンテ戦は左からA・カレーラス、ハイセン、アセンシオという3バックで戦い、4-1の勝利を収めている。リュディガー(負傷離脱中)、ダニエル・カルバハル、ダビド・アラバといった30代の選手たちも健在だが、若手の台頭により、レアルのサッカーはモダンなスタイルに変化している。

まわりを生かす力がある クラブW杯得点王G・ガルシア

まわりを生かす力がある クラブW杯得点王G・ガルシア

CWCドルトムント戦でボレーシュートを決めるG・ガルシア。誰も予想しなかった大会得点王として注目を浴びた Photo/Getty Images

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攻撃陣にもうひとり、ブレイクが期待される21歳がいる。カンテラ育ちのゴンサロ・ガルシアで、レアルBで通算30得点という決定力を持っている。ただ、トップの攻撃陣はポジション争いが激しく、昨季は3試合の出場に留まっていた。いずれも途中出場であり、得点もなかった。

そうしたなか、シーズン前に開催されたクラブW杯で全6試合に出場し、4得点1アシストという数字を残して大会得点王となった。これだけが理由ではないだろうが、その後にトップ登録となり、2030年6月までの長期契約が結ばれている。

今季ここまでは途中出場が多く、5試合に出場するなか4試合が途中出場となっている。先発したのは5節エスパニョール戦でムバッペとの2トップだったが、61分という早い時間に交代で退いている。合計プレイ時間91分という結果を残すのが難しい状況だが、強者であるレアルは年間の試合数が多く、今後もコンスタントに出場機会があると考えられる。

G・ガルシアは視野が広く、ポジショニングが良い。ボールを受けるときにまわりがみえていて、走り込んできた味方にフリックして正確なボールを落とす。プレスをかけてきた相手をワンタッチでかわすといった瞬間的な動きに特長があり、素早く効果的なパスをつないでみせる。

CLカイラト・アルマトイ戦では80分にムバッペに代わってピッチに入り、短い時間でブラヒム・ディアスの得点につながるラストパスを出して1アシストしている。攻撃的なポジションを複数こなせて、自分が生きるとともに、まわりを生かすこともできる。クラブW杯で活躍したように、大舞台に強い一面もある。シーズンが終わるころ、G・ガルシアの評価はもっと高まっているかもしれない。

文/飯塚 健司

※電子マガジンtheWORLD310号、10月15日配信の記事より転載

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