左足を利き足とするアルダ・ギュレルは、トルコのメッシ、トルコのエジルなどと呼ばれる20歳で、2023-24の開幕前にレアルへ加入。ケガもあってデビューは遅れたが、コンディションが整うと右サイドのウインガーやトップ下で起用され、初年度から10試合6得点という数字を残した。
しかも、すべてが先発ではなく、6試合が途中出場であり、先発4得点、途中出場2得点というスタッツで、合計プレイ時間373分で6得点だった。単純計算で約62分に1得点という驚異的な結果を残し、強烈なインパクトを残した。
加入2年目の昨季は28試合に出場して3得点4アシスト。稼働するポジションを増やし、33節ヘタフェ戦ではボランチを務めて決勝点となった1点を決めている。しなやかな身のこなし、巧みなボールコントロール、精度の高いパス、豊富な運動量。メッシやエジルだけではなく、ときにはルカ・モドリッチを思い浮かべるパフォーマンスをみせ、複数のポジションで機能するポリバレントな力があることを示した。
今季からレアルの指揮官となったシャビ・アロンソ監督は[4-2-3-1]をベースに、中盤の形を変えて[4-3-3][4-4-2]で戦うことがあれば、最終ラインを3枚にして[3-4-2-1]で戦った試合もあった。ギュレルが務めるのはトップ下、インサイドハーフなどで、右サイドで先発したのは2-5で敗れた7節アトレティコ戦のみ。
チーム内に右サイドで生きるフランコ・マスタントゥオーノやブラヒム・ディアスがいることを考えると、今後も中央でプレイする試合が多くなるだろう。なぜなら、そのほうがフィニッシュにつながるパスを出せて、自分でも得点できるギュレルの能力を最大限に生かすことができるからだ。
動けばボールが出てくる──。いまのレアルはギュレルに対してそうした信頼感があり、ボールが入ったときのまわりの動き出しが早い。とくにキリアン・ムバッペとの相性がよく、ここまで3得点3アシストとなっているが、アシスト3つはすべてムバッペに供給したものだ。レアルの“新ホットライン”であり、両名によって今後多くのゴールが生まれることになるだろう。
フランコ・マスタントゥオーノはブエノスアイレス出身で、2023年に16歳でリーベル・プレートとプロ契約を締結したアルゼンチンが生んだ逸材だ。18歳となる今年8月に欧州へ移籍することが確実視されていて、多くのクラブが獲得を狙っていた。そうしたなか、クラブW杯直前にレアルへの加入が発表された。
そのクラブW杯ではグループステージ3試合に先発し、右サイドのワイドなポジションを基本にピッチを幅広く動いて攻撃をリードしていた。当時まだ17歳だったが、リーベル・プレートの攻撃はマスタントゥオーノを経由することが多く、「ピッチのなかに何人のマスタントゥオーノがいるんだ」という印象を受けるほど存在感があった。
南米で早くから頭角を現わした神童でも、欧州では苦戦する。そうしたケースもあるが、マスタントゥオーノはこれに当てはまらず、シーズン序盤から自分の力を発揮している。開幕戦は途中出場だったが、2節オビエド戦の先発を皮切りにスタメンを確保し、CL2試合を含めると公式戦10試合中7試合に先発している。
ボールの受け方、運び方、フィニッシュなどプレイスタイルがすでに仕上がっていて、右のマスタントゥオーノ、左のヴィニシウス・ジュニオールというのがいまのレアルでは基本となっている。タッチライン近くにいるだけではなく、ボールがある場所、持っている選手によって的確なポジションを取り、パスの受け手となっている。
6節レバンテ戦で初ゴールをマークしたが、この試合では随所に特長が発揮された。左サイドでヴィニシウスがボール持つと自身はスルスルと中央へ動き、ゴールに近いポジションへ。得点にはならなかったが、利き足である左足でファーサイドを狙った技巧的なシュートがあれば(枠外)、ヴィニシウスのシュートをGKが弾いたところに突っ込み、右足で押し込もうとした惜しいシーンもあった(クロスバー直撃)。
ゴールシーンはこうしたプレイとはまた違った。自陣でボールを持ったヴィニシウスがボールを運び、カウンターのチャンスに。逆サイドを駆け上がったマスタントゥオーノに正確なパスが出され、縦にドリブルを仕掛けて利き足ではない右足でニアサイドをぶち抜いた。切り返して左足でフィニッシュだけではなく、縦に抜けて右足もあると示したプレイで、今後対戦するチームは対策に苦労するのは間違いない。