プレミアリーグ第11節を終えて、8勝2分1敗で20得点5失点。勝ち点26で首位に立つアーセナルは、2位シティに勝ち点4差をつけている。3位チェルシーとは6差、昨季王者のリヴァプールは勝ち点18で8位となっており、ここまでのアーセナルは高かった下馬評通りの強さをみせている。
顕著なのは守備の堅さで、11試合中7試合でクリーンシートを達成している。アーセナルの堅守は今季に限ったことではなく、過去2シーズン連続でリーグ最少失点を記録しており、さらに精度を高めている。プレミアリーグのシーズン最少失点は2004-05にチェルシーが記録した15失点で、このときは11試合を終えて3失点(クリーンシート8試合)だった。11試合5失点(クリーンシート7試合)はこの記録に迫ることが可能な数字となっている。
ミケル・アルテタ監督は就任7年目を迎えており、時間をかけて堅守を作り上げてきた。チーム全体が連係、連動して行うプレスは強度が高く、最終ラインから前線まで統率が取れている。積極的な補強を行ったことで今季はバックアップも充実しており、11節サンダーランド戦で2失点したが、いまのところ大崩れした試合はない。
GKダビド・ラヤは一昨年の第30節シティ戦から59試合連続フル出場を続けていて、文字通り守護神として君臨している。身長183センチでGKとしては小柄だが、自分たちが攻撃しているときにも集中力を高めて的確なポジションを取っていて、カウンターへの対処、ロングボールの処理、マイボールにしたあとのフィードなど、足技も含めていずれも精度が高い。俊敏な反応でビッグセーブも多く、アクシデントがない限り連続フル出場が途絶えることはないだろう。
CBもガブリエウ・マガリャンイス、ウィリアム・サリバという連係の取れた2人がいる。今季はここに21歳のクリスティアン・モスケラ(←バレンシア)、23歳のピエロ・インカピエ(←レヴァークーゼン)という若く活きの良い選手が加わっていて、9月24日のカラバオ杯3回戦ポート・ヴェイル戦はサリバ&モスケラ、10月29日の4回戦ブライトン戦はモスケラ&インカピエというCBコンビで戦っている。このカラバオ杯の2試合でGKを務めたのはケパ・アリサバラガで、今後もこうしてターンオーバーして戦っていくことになる。
中盤に加わったマルティン・スビメンディ(←レアル・ソシエダ)、エベレチ・エゼ(←クリスタル・パレス)、クリスティアン・ノアゴー(←ブレントフォード)はいずれも実績、経験ともに十分な即戦力で、実際にスビメンディ、エゼはすでにチームの中心となっている。ノアゴーはいまのところカラバオ杯、CLが中心になっているが、今後はプレミアリーグでの出場も増えていくだろう。
前線にはアーセナル入りを熱望していたヴィクトル・ギェケレシュ(←スポルティングCP)が加わり、高いポジションからボールを追いかける役割を遂行している。カイ・ハフェルツ、ガブリエウ・ジェズス、マルティン・ウーデゴー、ガブリエウ・マルティネッリなど攻撃陣にはケガ人が出ており、序盤はブカヨ・サカも離脱していたが、左右のウィングをこなせるノニ・マドゥエケ(←チェルシー)を獲得しており、開幕から戦力ダウンを感じさせない戦いができていた。
そうしたなか、11節サンダーランド戦はひとつの試金石となる一戦だった。前述の負傷者に加えて、ギェケレシュも負傷によりメンバー外となった。通常は[4-3-3]で戦うが、この日のアルテタ監督は前線にミケル・メリーノを起用し、2列目に左からレアンドロ・トロサール、エゼ、サカ。3列目(ボランチ)にデクラン・ライス、スビメンディという[4-2-3-1]を選択した。しかし、結果は今季初の2失点しての2-2のドローだった。
大崩れすることはなかったが、勝ち切ることができなかった。優勝するためにはこうした複数のメンバーが揃わない一戦、システム変更を行った一戦にも勝ち切る力が必要だ。勝ち点1を得たのではなく、勝ち点2を取り損ねたことでシティにジワリと詰め寄られている。例年より間違いなく選手層は厚いが、ライバルたちも強力なのがプレミアリーグだ。昨季も負け数(4試合)は優勝したリヴァプールと同じだったが、引分けが多かったことで2位に甘んじている。リヴァプールが9試合の引分けに対して、アーセナルは14試合も引分けがあった。このあたりが1つ目の壁となりそうだ。