アヤックスはなぜこれほど強い? ヤングスターを支える”3人”の影の功労者

CLベスト4まで駒を進めたアヤックス photo/Getty Images

主役だけで成り立つわけではない

レアル・マドリードに続いてユヴェントスまで撃破したアヤックスは、誰も予想していなかったチャンピオンズリーグ・ベスト4の領域に到達した。彼らの特長は何と言っても若さで、今後のサッカー界を引っ張っていくであろうヤングスターが顔を揃えている。中でもDFマタイス・デ・リフト(19歳)、バルセロナ入りが内定しているMFフレンキー・デ・ヨング(21歳)の存在は別格で、若手とはいえ実力はワールドクラスだ。

デ・リフト、さらにはテクニシャンのMFハキム・ツィエク、ドリブル突破を武器とするFWダビド・ネレスらには移籍の話題も出ており、彼らはかなり有名な存在だ。しかし、アヤックスの強さは彼らだけで支えられているものではない。スポットライトを浴びる機会はあまり多くないが、チームに大きく貢献している実力者たちがいるのだ。

まず注目すべきは21歳のMFドニー・ファン・デ・ベークだ。ファン・デ・ベークはユヴェントスとの準々決勝2ndレグで貴重な同点弾を決めた選手だが、同じMFでもデ・ヨングやツィエクに比べれば少々影が薄い。しかし、アヤックスのサッカーを完成させるうえでファン・デ・ベークは絶対に欠かせない選手なのだ。

アヤックスは見る者を魅了するパスワークが大きな武器になっているが、攻撃の際に最前線に構えるドゥシャン・タディッチが中盤へ降りてくるケースが目立つ。タディッチは純粋なセンターフォワードではなく、偽9番のような役割に近い選手だ。中盤に顔を出してボールを引き出すこともタディッチの重要な役目なのだが、その際にファン・デ・ベークが気の利いたポジショニングを取ってくる。アヤックスの特長の1つだが、タディッチが中盤へ下がると同時にファン・デ・ベークが前線へ顔を出すパターンがある。この縦のポジションチェンジで相手の最終ラインを牽制し、タディッチやツィエクら2列目の選手がプレイするスペースを生み出すことができる。

象徴的だったのはベスト16のレアル戦2ndレグで生まれたネレスの得点シーンで、この場面ではタディッチがルーレットで相手選手をかわしてネレスにチャンスボールを提供した場面が注目を集めた。しかし、その前にファン・デ・ベークが最終ラインの裏へ走ってラファエル・ヴァランらレアルのDF陣を引っ張っていたことも見逃せない。この動きで最終ラインと中盤の間にスペースを生み出し、そこでタディッチが派手なルーレットを見せたのだ。ファン・デ・ベークは直接ボールに絡んだわけではないが、こうした気の利いた動きはアヤックスのパスサッカーに欠かせない。





またファン・デ・ベークは運動量も豊富で、守備時には相手のアンカーへのパスコースを潰すなど裏方的存在としてチームを支えている。ツィエクやネレスに比べると目を見張るテクニックがあるわけではないが、ファン・デ・ベークはチームのために走れる貴重な選手なのだ。

2人目は、若手が多く揃うアヤックスにおいて32歳とベテランのMFラセ・シェーネだ。ユヴェントス戦のスタメンでも最年長選手で、勢い任せなところもある若手選手たちを束ねる存在だ。主にボランチを担当しているが、このポジションで注目を集めるのは相方のデ・ヨングだ。すでにバルセロナ行きを決めているデ・ヨングはアヤックスのキーマンで、シェーネはデ・ヨングほどゲームメイクに優れているわけではない。

しかし、シェーネはチームでも1、2を争うキック精度の持ち主なのだ。デ・ヨングの隣で影が薄くなっているところもあるが、セットプレイのキッカーはシェーネが担当するケースが多い。レアル戦ではティボー・クルトワの頭上を抜くフリーキックを決めたが、あのキックは偶然ではない。国内リーグでもシェーネはエクセルシオール戦、フェイエノールト戦などで直接フリーキックを決めており、今回のユヴェントス戦ではコーナーキックからデ・リフトの決勝ゴールを見事にアシストしている。

セットプレイから違いを生み出す選手がいることもアヤックスの強みで、シェーネも欠かすことのできない存在だ。中盤の底で存在感を放っているのはデ・ヨングだけではない。

もう1人注目すべきは、センターバックのダレイ・ブリント。こちらも相棒のデ・リフトにどうしても話題が集中してしまうが、ブリントの存在も極めて大きい。32歳のシェーネの方が先輩だが、ブリントも29歳と若手軍団の中ではベテランの部類に入る選手だ。デ・ヨングやデ・リフト、ネレスら羽ばたいていこうとしている若手に対し、ブリントはマンチェスター・ユナイテッドやオランダ代表で大舞台を経験している。その経験値をプラスできることも大きく、まさに陰からチームを支えるとの表現がしっくりくる選手だ。

レフティーなのも特徴的で、アヤックスは後方から細かくパスを繋いでいくチームだ。サイドバックや中盤も担当できるレフティーのブリントはパスの精度も高く、長短織り交ぜてゲームを作ることができる。チャンピオンズリーグにおいてブリントはデ・ヨングに次いで多い1試合平均71.3本のパスを出しており、ビルドアップする際にも重要な存在だ。派手な選手ではないが、アヤックスの理想を叶えるために欠かせない万能DFと言える。

ビッグクラブから注目を集める若手選手はもちろんだが、今のアヤックスは主役と脇役が絶妙なバランスでブレンドされている。それこそが強さの証で、各ポジションに職人と言える選手が集まっているのだ。均衡したゲームでセットプレイから違いを生み出せるシェーネ、攻守両面でチームのために走れる献身性抜群のファン・デ・ベーク、貴重なレフティーのセンターバックであるブリントと、これほど質の高い11人がアヤックスに揃ったのは奇跡的と言えよう。

1994-95シーズン、アヤックスはパトリック・クライファートのゴールでミランを破ってチャンピオンズリーグ制覇を果たした。当時のチームもクラレンス・セードルフ、エドガー・ダービッツ、エドウィン・ファン・デル・サールら驚異の若手選手たちが揃っていたが、今季ベスト4まで駒を進めた今のアヤックスも当時に負けない完成度を誇っている。

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