いよいよ開幕したEURO2020で、同国史上初の大会制覇を狙うイングランド代表。今回は各ポジションに実力者が揃うハイレベルなスカッドで臨むということもあり、同代表は優勝候補の一角として期待がかかっている。
しかし、そんななかでガレス・サウスゲイト監督が初戦のクロアチア代表戦で採用したスタメンには、現地でも少し注目が集まっている。この試合、指揮官は本来右サイドを得意とするキーラン・トリッピアーを逆サイドのSBとして起用。最終的に1-0で勝利を収めたものの、ベンチには本職のルーク・ショーもいたのに、なぜわざわざトリッピアーを左サイドで起用したのかという声は少なくない。
たしかに、今季マンチェスター・ユナイテッドでMVP級のパフォーマンスを披露したショーを控えに回してまで、わざわざトリッピアーを左サイドで使う必要があったのかと言われれば疑問だ。トリッピアーも素晴らしい選手であるのだが、本職のプレイヤーを差し置いて起用するほどではないか。
とはいえ、サウスゲイト監督もロシアW杯ではイングランド代表を3位にまで導いた指揮官だ。何も狙いがなかったとは考えづらい。では、スリーライオンズがトリッピアーの左サイド起用で得たものはなんだったのだろうか。
ひとつ考えられるのは、ビルドアップの円滑化だ。この試合におけるイングランド代表は負傷中のハリー・マグワイアに代わって、センターバックにタイロン・ミングスが起用された。ミングスはビルドアップに不安定を抱えていることもあって、サウスゲイト監督はそのサポート役として足元の技術に優れたトリッピアーを起用したのではないだろうか。また、トリッピアーがピッチにいれば、セットプレイ時のキッカーとしても役に立つ。
「クロアチア戦のトリッピアーは本当に良かったよ。彼は派手なプレイをするわけじゃないけれど、とても良い働きで僕を助けてくれたんだ。一緒にプレイしていて、とても気分が良い選手だよ。経験もあるし、今季はスペインで大きな成功を収めている。このまえの試合では、本当に様々な部分で助けられたね。僕以外にもそう思っている選手は多いと思うよ。彼とプレイするのは大好きだ」(英『Daily Mail』より)
ミングス自身も、トリッピアーが入ったことで自身のプレイが楽になったとこのように話している。驚きの選択であったことは間違いないものの、ミングスの起用に合わせた采配だっということなのだろう。
サプライズ的なスタメンを組んだものの、最終的には見事にクロアチア代表を1-0で退けることに成功したイングランド代表。次節スコットランド代表との“ライバル対決”では、どのような11人が送り出されることとなるのだろうか。今大会のスリーライオンズは試合内容だけでなく、スタメン予想でもファンを楽しませてくれそうだ。