Jリーグ開幕戦でもVARによる判定がありました。2月21日の湘南×浦和では浦和の鈴木大輔がハンドを取られ、湘南にPKが与えられました。このプレイでは、当該シーンが会場の大型ビジョンに映し出され、観客とともに主審の判定を待つことになりました。今年からJリーグはこの方針でやっていくようですが、私はVAR対象のシーンは会場で流さなくてもいいと思います。
どれだけプレイを確認しても、最終的に判断するのは主審です。ハンドやオフサイドは本当に微妙で、自分と違った判断が下されるときがあります。そうしたときに、スタジアムがどんな雰囲気になるか容易に想像できます。激しいブーイングが巻き起こり、モノがピッチに投げ込まれ、試合が中断するという最悪の事態も想定されます。そう考えると、VARの確認映像は会場で流さなくてもいいのではないでしょうか。
また、プレミアリーグではオン・フィールド・レビュー(OFR)をせず、主審がピッチ内でVARと通信して判定を下すシーンが多いです。その結果、誤審になっているケースがあります。そういった事態を防ぐためのVARなので、主審にはもっとOFRを使ってほしいです。助言を受けて誤審したのでは、主審としても不本意でしょう。 オフサイドディレイに関しても、改善の余地があります。際どいケースではプレイを続行させ、アウトプレイになったときに判断するものですが、GKと1対1になったり、追いかけてきたDFと競り合うことが想定され、そうなるとケガにつながるおそれがあります。オフサイドディレイがあることで旗を上げる決断ができず、致命的な結果を招いてしまう。そういうことがないように、副審には自信があるときはビシッと旗を上げ、オフサイドを取ってほしいです。
判定に対する有耶無耶がなくなるのが理想ですが、いまは導入直後で、世界各国のリーグでいろいろな問題点が出てきています。うまく機能すればすんなりと判定を受け入れられると思いますが、現状のVARに関して、私はまだ否定的な目でみています。
ただ、2月22日の川崎×鳥栖では、レアンドロ・ダミアンのゴールがオフサイドで無効となり、誤審によって勝敗が決まることを防ぐことができました。間違いなく、ポジティブな一面もあります。過去には多くのチームが誤審によって涙を流してきましたが、そうしたケースが減るのはよいことです。
いまは人数をかけられず、VAR、AVAR(アシスタント・ビデオ・アシスタント・レフェリー)、リプレイ・オペレータの3人で一試合を担当しています。2018年のロシアW杯では一試合8人だったので、その違いは明白です。
そもそも、はじめからうまくいくはずがありません。難しい状況のなかスタートしており、いろいろな苦労があるので今後も絶対に問題点が出てきます。サッカーをより魅力的なスポーツにするために、どうしたら効果的なのか。それぞれの立場で考え、コミュニケーションを取りながら進めていけばいいのではないかと思っています。
構成/飯塚 健司
※電子マガジンtheWORLD243号、3月15日配信号の記事より転載
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