本田、長友、東京五輪の”オーバーエイジ”は誰を呼ぶべき!? 見えてきた弱点

日本代表の酒井宏樹 photo/Getty Images

U-20、トゥーロン、コパ・アメリカで見える穴

5月23日から6月15日まで行われたU-20ワールドカップ、6月1日から15日まで行われたトゥーロン国際大会、そして現在行われているコパ・アメリカと、この初夏は日本代表の戦いが目白押しだった。来年には東京五輪が控えているが、基本的にはこの3大会に挑んだチームから最終メンバーが選ばれることになる。

今夏の戦いを経て東京五輪世代の若手が貴重な経験を積んだのは間違いなく、最終メンバーを選ぶのはかなり難しい作業となるだろう。しかも五輪本番ではオーバーエイジ枠が存在する。五輪では24歳以上の選手をオーバーエイジ枠として3人加えることができ、優勝を狙うにはオーバーエイジ3人の選考が非常に重要だ。若手を引っ張り、なおかつチームの弱点を補える実力者であることが条件となる。では、東京五輪で誰をオーバーエイジに呼ぶべきなのか。

まず東京五輪世代の強みから見ていくと、最も人材が揃っているのは2列目だ。すでにA代表で存在感を放っているフローニンヘン所属の堂安律、コパ・アメリカでも注目を集めた18歳の久保建英は当確で、この2人が攻撃の中心となっていくのは間違いない。加えてコパ・アメリカのウルグアイ代表戦で2得点を挙げた三好康児、鹿島アントラーズの10番を背負う安部裕葵、海外でも通用する突破力を誇る伊藤達哉、トゥーロンでも準優勝に貢献した筑波大の三笘薫、コンサドーレ札幌の岩崎悠人など、個性豊かな実力者が揃う。ここは人材が溢れており、助っ人が必要なエリアとは言えない。
3バック、4バックのどちらで戦うかによっても人選は変わってくるが、センターバックもそれなりに人材は揃っている。A代表でも絶対的な存在となりつつある冨安健洋は当確で、コパ・アメリカのメンバーにも選ばれている長身の清水エスパルスDF立田悠悟も入ってくるだろう。コパ・アメリカではボランチを任されたが、板倉滉はセンターバックも担当できる。そこにU-20ワールドカップを戦ったヴィッセル神戸の小林友希、セレッソ大阪の瀬古歩夢、トゥーロン組からジュビロ磐田の大南拓磨、FC東京の岡崎慎らが挑んでいく形となる。ウイングバックからセンターバックまでこなせる浦和レッズの橋岡大樹も興味深いオプションだ。人材が溢れているとまでは言えないが、オーバーエイジに頼らずとも戦うことは可能だろう。

この2つのエリアを除くと、他のポジションには不安要素が存在する。最もオーバーエイジが求められるのはボランチだろう。U-20ワールドカップで高い評価を得た湘南ベルマーレの齊藤未月、コパ・アメリカでボランチを任された中山雄太、板倉、豊富な運動量を誇るサンフレッチェ広島の松本泰志、J2でプレイしながらコパ・アメリカのメンバーに選ばれた東京ヴェルディの渡辺皓太らは候補者だが、どちらかというと守備的な選手が多い。世界を相手にゲームメイクできるタイプのMFが少なく、中盤でボールを確実に落ち着かせることのできる実力者が欲しい。

筆頭候補は柴崎岳だろう。柴崎はコパ・アメリカでもフル稼働しており、森保監督からの信頼も厚い。板倉、中山ともボランチコンビを経験することができ、最もオーバーエイジ招集に近い存在とも言える。今のところ柴崎ほど巧みにゲームを作れる人材は見当たらず、A代表での経験が豊富な部分も大きい。

コパ・アメリカではサイドバックにも物足りなさが残った。左の杉岡大暉(湘南)、右サイドバックを担当した岩田智輝(大分)、チリ戦で右サイドバックに入ったユーティリティープレイヤーの原輝綺(鳥栖)らも奮闘はしていたが、攻撃部分では迫力が不足している。A代表の長友佑都、酒井宏樹に比べると存在感は薄く、やや人材不足な印象が否めない。酒井か長友のどちらかをオーバーエイジで招集できれば理想的だ。特に酒井が右サイドに入れば、堂安とのA代表コンビも完成する。連携がある程度できていることもプラスに働くだろう。また酒井は所属するマルセイユで左サイドバックを任されたり、3バックのストッパーも経験している。五輪本番でも緊急時には対応できるはずだ。

ここまで世代別代表で杉岡が左のスペシャリストとして重用されてきたこと、3バックならば左のウイングバックとしてコンサドーレ札幌の菅大輝、トゥーロンで驚異の突破力を披露した名古屋グランパスの相馬勇紀を起用するオプションがあることを考えると、酒井宏樹の方が理想的なオーバーエイジと言えよう。

最後のポイントは最前線のセンターフォワードだ。コパ・アメリカに大学生ながら招集された上田綺世(法政大)、スピード自慢の前田大然(松本)、トゥーロンで活躍した小川航基(磐田)、U-20ワールドカップの最前線を任されたサイズとスピードの両方を持つ田川亨介(FC東京)など興味深い逸材は揃っている。しかし、五輪で優勝を狙うならば最前線には世界との戦いを知る一線級の選手が欲しい。求められるタイプは2列目のタレントを活かすボールを確実に収められるテクニックと得点力を併せ持つ選手で、最も理想的なのは大迫勇也となる。

また、東京五輪への参戦意欲を口にした本田圭佑を起用するならば最前線しかないだろう。2列目にレフティーのタレントが揃っていることを考えると、わざわざ本田を2列目で起用する必要はない。経験をプラスする存在としてセンターフォワード候補で招集するのも面白い。スピード不足は否めないが、ワールドカップ3大会連続得点を記録したように大舞台での本田は異様な勝負強さを発揮してきた。コパ・アメリカでもFW陣の決定力は疑問視されており、五輪本番で決定力不足が足を引っ張る展開だけは避けたい。ゴール前での勝負強さを誇る本田に賭けてみるのも1つの手だろう。

GKも絶対的な存在がいるわけではないが、A代表でもロシアワールドカップ以降は守護神が定まっていない。ここは全体的に人材が不足しているポジションで、オーバーエイジに頼れる存在がいるかは微妙なところだ。コパ・アメリカを経験した大迫敬介(広島)、世代別代表でゴールを守ってきた小島亨介(大分)らに任せる形が無難だろう。

ボランチ、サイドバック、そして最前線。オーバーエイジ組の経験と実力が求められるのはこの3ポジションと言えるが、果たして誰を招集するのか。もちろんオーバーエイジを使わない手もあるが、この判断は慎重に下さなければならない。

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