[粕谷秀樹]気がつくとM・シウバ監督の首筋に冷たいものが…… エヴァートンはプラスアルファが少なすぎる

粕谷秀樹のメッタ斬り 016

粕谷秀樹のメッタ斬り 016

ユヴェントスからイタリアの若き逸材モイーズ・キーンを獲得したエヴァートン photo/Getty Images

自由の意味がわかっていない

昨シーズン29節のリヴァプール戦あたりから、エヴァートンは上向いた。相手のビルドアップを牽制し、サイドに追い込みながら2~3人でボール奪取を試みる。このプランが奏功し、マージ―サイド・ダービー以降は5勝3分2敗。チェルシーとアーセナルを破り、マンチェスター・ユナイテッドには4-0のKO勝ちだ。終盤戦のパフォーマンスは悪くなかった。

でも、物足りなくないか? ジェリー・ミナ、アンドレ・ゴメス、ベルナルジ、リシャルリソンなどを補強しながら、ずーっと中位をさまよっていた。シーズン前、多くのメディアがダークホースに挙げていたけれど、不気味さを醸し出せないまま終わったような印象が強いんだな。

だから新シーズンはさらなる補強が必要で、なんとしてでもセンターフォワードが欲しかった。昨シーズンのトップスコアラーは、リシャルリソンとギルフィ・シグルズソン(13得点)。両選手ともによくやったと思うよ。でも、リシャルリソンはサイド、シグルズソンは二列目中央が適性だ。CFではないな。
個人的には、ドミニク・カルバート・ルーウィンに期待しているよ。スピード豊かで、ヘディングが強く、マーカーとの泥臭いファイトも厭わない。エバトニアンも喜ぶんじゃないかなと……。

なんでモイーズ・キーンと契約したのかねぇ。ポテンシャルは高いものの、「マリオ・バロテッリがアイドル」と公言するほどだから、素行に問題がある。昨シーズンまで所属していたユヴェントスでも、不真面目な練習態度がヒンシュクを買い、イタリア・アンダー21代表では遅刻の常習者だ。自由の意味がわかっていない。そんな男に前線を託すって、危険すぎるでしょ。

エヴァートンの指揮を執るマルコ・シウバ監督。チームを飛躍させられるか photo/Getty Images

ゲイェが抜けたダメージは甚大

イドリッサ・ゲイェがパリ・サンジェルマンに去っていった。プレミアリーグ屈指のボールハンターであり、必要不可欠だった男がいなくなっちまった。マンチェスター・シティから獲得したファビアン・デルフはケガが多いから、ゲイェのようなフル稼働は期待できない。マインツから加入したジャン・フィリップ・グバミンはパトリック・ヴィエラを思わせる逸材とはいえ、プレミアリーグでは未知数だ。新シーズンのエヴァートンは、どうやって中盤を掃除するんだろうか。ゲイェが抜けたダメージは甚大だ。

また、キープ力に定評のあったアデモラ・ルックマンがライプツィヒに完全移籍し、DFラインの軸だったクルト・ズマもチェルシーにローンバックしたね。あれっ、昨シーズンとの戦力比が心配になってきたぞ。

エヴァートンのブランドイメージをふまえると、現地時間8日17時に迫った移籍市場終了までに、サポーターが納得する新戦力を獲得するのは難しい。点が取れず、ゲイェが抜けた穴が埋まらず、気がつくとマルコ・シウバ監督の首筋に冷たいものが……みたいな流れも考えられなくはない。いまのままではヤバいよ。プラスアルファが少なすぎる。

文/粕谷秀樹

スポーツジャーナリスト。特にプレミアリーグ関連情報には精通している。試合中継やテレビ番組での解説者としてもお馴染みで、独特の視点で繰り出される選手、チームへの評価と切れ味鋭い意見は特筆ものである。

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