J2首位独走の町田ゼルビア 「コミュニケーションの多さ」が今季の圧倒的堅守を支える

堅守を武器に、J2で圧倒的な強さを見せる町田 photo/Getty Images

“天空の城・野津田”が要塞と化す?

まもなく折り返し地点を迎える明治安田生命J2リーグの2023シーズン。2位以下が大混戦となっている中、首位を独走するのがFC町田ゼルビアだ。

町田は20試合消化して14勝3分3敗と、勝ち点を45ポイントまで伸ばしている。2位につける大分トリニータとの勝ち点はすでに8ポイントで、首位ターンが確定。2位から14位ブラウブリッツ秋田までの勝ち点差が10ポイントであることを考えても、1位と2位の差は想像以上に大きいかもしれない。

そんな今季の町田の特長といえば、ここまでリーグ最少失点(11失点)を誇る堅守。今季からチームの指揮官に就任した黒田剛監督は「毎試合無失点」にこだわり、昨季15位に終わったチームを守備から再生してみせたのだ。
前線からの激しいプレスや相手にスペースを与えないコンパクトな陣形、最後のところでしっかり足を出す粘り強さなど……。堅守を支えている要素はいくつもあるだろう。そして、選手間の「コニュニケーションの多さ」もその要素の一つかもしれない。

今季の町田は、ピッチ内で選手たちがよく話し合いを行っているのが見てとれる。特にボランチを含めた守備陣はそれが顕著で、11日に行われたV・ファーレン長崎戦(第20節)でもそれを象徴するシーンがあった。

58分にミッチェル・デュークが3点目のゴールを決めた直後のシーン。勝利を大きく手繰り寄せたことで、攻撃陣は喜びを爆発させていたのだが、このタイミングで対戦相手の長崎が思い切って3枚替えに出ることが見てとれると、守備陣は冷静に自陣へ戻る。そして、タッチラインのそばで交代を待つ相手選手の方を指差しながら、話し合いをおこなっていた。おそらく守備の確認や微調整をしていたのだろう。3点ものリードを奪っても、無失点へのこだわりはしっかり持ち、一切油断しない。この試合では最終的にPKから1点を奪われてしまったが、黒田イズムがあらわれた非常に印象的なシーンだった。

実際、ここ最近CBとしてレギュラーに定着し、存在感を発揮しているDF藤原優大からも、長崎戦後に「結構こまめにコミュニケーションを取っていて、1プレイ1プレイ、お互いに思っていることを擦り合わせながらやってきています。僕らが要望をのんだり、ボランチも攻守両面で忙しい中で要望をのんでくれたり……。一方的に言うだけではなく、みんな聞く耳も持ってくれているので、うまくいっている要因だと思います」といった声が聞けた。話し合いのおかげで「イメージの共有」もしっかりできているという。

こまめにコミュニケーションを取ることで、選手間のイメージや意識のズレをその都度修正。さらに、状況把握も常にチーム内でしっかり行うことができている。そのため、今季の町田の守備陣は本当に大崩れしない。複数失点を喫したのも1試合(第18節の徳島ヴォルティス戦)だけだ。まずは18日の栃木SC戦に勝って前半戦を気持ちよく終えたいところだが、この調子で町田は後半戦も走り抜けることができるのか。“天空の城・野津田”が要塞と化す日も近いか。

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