[水沼貴史]川崎から世界へ! 田中碧と三笘薫の覚悟を持った海外挑戦

水沼貴史の欧蹴爛漫057

水沼貴史の欧蹴爛漫057

デュッセルドフルへの期限付き移籍が発表された田中碧 photo/Getty Images

目指すべきは“遠藤航ルート”

水沼貴史です。先日、日本代表でも活躍するFW古橋亨梧(ヴィッセル神戸→セルティック)とFWオナイウ阿道(横浜F・マリノス→トゥールーズ)の海外挑戦が発表されましたが、今夏もさまざまな日本人選手が新たな挑戦を行うためにヨーロッパへ羽ばたきそうです。これは非常に良いことだと思います。日本人のレベルやチームでの貢献などがヨーロッパで認められている証拠です。もちろん、全ての選手が「成功している」とは言い難いところもありますが、才能や可能性を秘めた選手たちがどんどんヨーロッパへ進出することは素晴らしいことだと思います。そんな中で、私は東京オリンピックでの活躍も期待され、川崎から世界へ羽ばたこうとしている2選手に注目しています。

まずは、すでにデュッセルドルフへの期限付き移籍が発表されているMF田中碧です。たまたまではありますが、彼がデビューを果たした2018年の北海道コンサドーレ札幌戦の解説を担当していました。この試合で彼は、ゴールも決めています。そういうのを見ていたので気になっていた選手でしたし、勝手にですが巡り合わせを感じているので応援したくなる選手のひとりでした。移籍の発表時期がACLや東京オリンピックの直前と、突然のことではありましたが、これはブンデスリーガ2部が一足先に開幕(7月23日)するため、準備を進めるデュッセルドルフのチーム事情もあったのでしょう。

碧の海外挑戦に関してですが、1部でプレイするかなと思っていたので、そこに行けるレベルの選手だと思っていたので、「2部への移籍なのか……」という思いは正直ありました。ただ、最初の挑戦としてヨーロッパで飛躍を遂げるための足掛かりとするのであれば、おそらくデュッセルドルフは良い選択かもしれません。デュッセルドルフは昔から日本人が多い街なので、日本人選手にはやりやすい環境が整っていますからね。チームメイトに年齢が近く、日本語とドイツ語を話せるMFアペルカンプ真大がいることも、環境になれていく上ではアドバンテージになるかもしれません。

目指すべきは、やはりシュツットガルトで活躍する“遠藤航ルート”ではないでしょうか。ドイツでの見られ方として、もしかしたら遠藤と比較される可能性があります。同じポジションで、スタートも同じ2部ですしね。チームとともに1部へ上がってデュエルNo.1に輝く……。プレイスタイルは少し違うため、デュエルNo.1とはいかないでしょうが、それくらいの活躍を期待をされているかもしれません。ただ、覚悟を持って海外へ行っていると思いますし、常に上を目指している選手でもあります。碧も2部でしっかり実績を残して、自分でも「できる」というような自信を掴んで、1部へ挑戦して欲しいです。

彼が持っている「ボールを奪ってから前に出ていく力」というのは、ドイツでも通用すると思います。しかし、「ボールを奪う力」というのは、おそらく日本とドイツではレベルが違います。デュエルのところで遠藤並とはいかなくとも、6~7割でボールを奪えるようになれば安定して活躍できるはずです。あと、彼は「出ていく力」もそうですが、「戻る力」も素晴らしいです。攻守が切り替わった瞬間の動きが特長なので、そこはもっと研ぎ澄ましていって欲しいなと思っています。加えて、パンチ力と精度の高いキックを持っているので、点も取れるようになってくれば、より良いのではないでしょうか。

ドイツでの戦いの前に、現在開催中の東京オリンピックでの戦いもまだまだ控えています。自分の信じた道を進んでいくための、高みを目指していくための最初のステップとして、まずはオリンピックで力を思い切り出して欲しいです。オリンピックで良いパフォーマンスを披露して、その後のドイツでの戦いにつなげて欲しいですね。

ブライトンへの移籍が噂される三笘薫 photo/Getty Images

プレミアへ戻るためにベルギーでは結果を

もうひとりは、今や日本屈指のドリブラーとなっているMF三笘薫です。彼の移籍に関しては、まだ正式な発表はありませんが、プレミアリーグ(ブライトン)への挑戦が噂されています。労働許可証の関係で、1年目はベルギーへレンタル移籍することになるようですが、きちんとプレミアリーグへ戻れるようにプレイして欲しいなと思っています。

そのためには、結果が必要です。2021-22シーズンにプレイすることが予想されるロイヤル・ユニオンは、1部に昇格したばかりチームということもあり、試合に出られる環境にはなっているかもしれません。ただ、プレミアリーグからやってきた助っ人ということに加えて、ベルギーでは近年、日本人選手たちが素晴らしい活躍を見せています。同じウイングのポジションには、昨季のリーグベストイレブンにも輝いたMF伊東純也もいます。そういったことを考えると、対戦相手に警戒され、三笘が得意とする1対1などでもマッチアップする相手がバチバチやってくる可能性が高そうです。もしかしたら、最初の数試合は自分の特長を出すのに苦労するかもしれません。そこを頑張って乗り越え、自分の特長を存分に出して行って欲しいです。碧と同じく、彼もまた常に高みでプレイする姿を思い描いてプレイしてきているでしょうからね。

もし懸念材料があるとすれば、ロイヤル・ユニオンのシステムでしょうか。ロイヤル・ユニオンは昨季、主に[3-5-2]や[5-3-2]を採用し、ウイングバックを配置することが多々ありました。そのため、攻撃を売りとする三笘も守備により時間を割かなければならなくなる可能性があります。ヨーロッパでの日本人選手に対するイメージは、攻撃の選手でも献身的に守備をするというようなものもあったりしますからね。それで苦労する選手もしばしばいます。

ただ、私は心配ないと思っています。移籍に際し、自身の使い方に関してチームともしっかり話し合っているでしょうし、そこも織り込み済みで移籍先を決断しているでしょう。もしそうではなかったとしたら、新しいものを取り入れるんだ、新しいことに取り組むんだという気持ちでしょう。そういったことが「ネガティブなことじゃない」と捉えられるかが大事です。あとは、守備に奮闘しないといけない時間はあるでしょうが、前に出て行ったときにしっかり結果が残せるかが重要だと思います。Jリーグで圧倒的な強さを披露するフロンターレとは違って、ロイヤル・ユニオンはベルギー1部に昇格したばかりのチームということもあり、ずっとボールを持つことができるわけではないでしょうからね。

フロンターレユースからトップチームに直接上がった碧とは違い、三笘は大学を一度経由していることもあり、すでに年齢は24歳です。この年齢は、海外では決して若い年齢ではありません。そのため、もしかしたら今回の海外挑戦がラストチャンスという想いも強いかもしれません。覚悟を持っての海外挑戦になるでしょう。オリンピックでは、コンディションの影響で出場時間が限られたものになるかもしれませんが、そのような中でもできるだけ結果を残し、今後へ弾みをつけて欲しいです。

それでは、また次回お会いしましょう!


水沼貴史(みずぬま たかし):サッカー解説者/元日本代表。Jリーグ開幕(1993年)以降、横浜マリノスのベテランとしてチームを牽引し、1995年に現役引退。引退後は解説者やコメンテーターとして活躍する一方、青少年へのサッカーの普及にも携わる。近年はサッカーやスポーツを通じてのコミュニケーションや、親子や家族の絆をテーマにしたイベントや教室に積極的に参加。YouTubeチャンネル『蹴球メガネーズ』などを通じ、幅広い年代層の人々にサッカーの魅力を伝えている。

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