[粕谷秀樹]カバーニは来シーズンもユナイテッドの一員だ! チームの成長を促す意味でも必要不可欠な人材

粕谷秀樹のメッタ斬り 059

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ローマとのEL・準決勝では2試合で4ゴール。カバーニは圧巻のパフォーマンスを披露した photo/Getty Images

アタッカーにとって最高のお手本

「私の気持ちは変わらない。残留を強く強く希望している」

マンチェスター・ユナイテッドのオーレ・グンナー・スールシャール監督は、エディンソン・カバーニの慰留に努めている。

「今シーズン限りでユナイテッドを離れ、来シーズンはボカ・ジュニアーズと契約か!?」
この噂の発信源は、カバーニの父親だった。エージェントも兼ねていることから、契約交渉でマウントポジションをとるための情報操作、とも考えられている。3月初旬、ボカのファン・ロマン・リケルメ副会長がカバーニ側との接触を認めた、といわれていた。その後、情報はアップデートされていない。

少なくとも、いまカバーニは気分よくプレイしている。センターフォワードとしてはファーストチョイスであり、ピッチに立った直近6試合で7ゴール。ヨーロッパリーグの決勝進出にも貢献した。

「彼のパフォーマンスは、われわれアタッカーにとって最高のお手本だ」(マーカス・ラッシュフォード)
「試合中はもちろん、練習でもロッカールームの立ち居振る舞いでも、チームリーダーのひとりだ」(ルーク・ショー)

同僚の評判も上々だ。

激しいボディコンタクトを厭わず、マーカーから離れる術にも長けている。点で合わせる技術、フリーランニングなど、「まさしく9番」(スールシャール監督)だ。強化担当のエドワード・ウッドワードが、移籍市場では類稀なスットコドッコイだとしても、カバーニの存在価値は分かっていると信じたい。

移籍も噂されたが、最終的にユナイテッドとの契約延長を決断したカバーニ photo/Getty Images

探しつづけていた9番を見つけた

この夏、ユナイテッドは前線の強化が最重要ミッションとされている。ターゲットはドルトムントのアーリング・ハーランド、もしくはジェイドン・サンチョだ。しかし、前者の移籍金は1億3000万ユーロ(約169億円)、後者は8700万ユーロ(113億円)。コロナ禍で冷え込んだ市場に、巨額を投入できるクラブはない。売りたくても買い手が見つからず、買いたくてもカネがない。

したがってユナイテッドに限らず、多くのクラブが現有勢力の確保を第一に考え、今夏の補強は自重を余儀なくされる。いや、カネを持っていたとしてもカバーニは全力で慰留すべきだ。ラッシュフォードやショーのコメントは信頼感を証明し、チームの成長を促す意味でも必要不可欠な人材だからだ。カバーニがいるだけで、メイソン・グリーンウッドやデイヴィッド・ジェームズはアタッカーとしてランクアップするに違いない。

チーム内の雰囲気を察知したのか、カバーニの気持ちは残留に傾いているという。そして現地時間5月11日、ウルグアイの “エル・マタドール”(日本語で闘牛士の意)は、ユナイテッドとの契約を1年更新した。

長らく探しつづけていた屈強のアタッカーは、来シーズンも赤いユニフォームに袖を通す。カバーニを慰留できたのだから、ユナイテッドの補強プランは上々のスタートである。ハーランドもサンチョも必要ない。

文/粕谷秀樹

スポーツジャーナリスト。特にプレミアリーグ関連情報には精通している。試合中継やテレビ番組での解説者としてもお馴染みで、独特の視点で繰り出される選手、チームへの評価と切れ味鋭い意見は特筆ものである。

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