ピルロがまだ起用法の“最適解”を見つけられていない!? ユーヴェが苦戦する理由

今季、ユヴェントスをリーグ優勝へ導くことができなかったピルロ監督 photo/Getty Images

リーグ戦全試合で異なる起用法

ユヴェントスの指揮官を務めるアンドレア・ピルロ監督は、チームの起用法の「最適解」を見つけることができないでいるのかもしれない。同監督にとって、指導者キャリアのスタートは華々しいものではなく、想像以上に難しいものとなってしまっている。

ユヴェントスは今季、選手としてプレイ経験もあるOBのピルロを新指揮官に招聘。指導者キャリアはゼロであるものの、指導者ライセンスの講習を修了する際に素晴らしいサッカー哲学を披露していたこともあり、彼のその未知数な部分と現役時代から持ち合わせる戦術眼に懸けた。そして、ピルロ新体制のもとで前人未到のセリエA10連覇を目指した。

しかし、やはりというべきか、ユヴェントスは序盤戦から大苦戦。ただ、イタリアの絶対王者のこれほどまでの苦戦は予想できなかったのではないか。もちろん、2シーズン連続となる監督交代で、チームのスタイルが立て続けに変わらざるを得なかった影響も大きいだろう。格下相手に勝ち点を取りこぼしたり、1点差ゲームで逃げきれなかったりと、今季はユヴェントスらしさを欠く試合が多い。その結果、4試合残してインテルに王座を明け渡すこととなり、ついに一強体制の終焉を迎えた。それどころか、現在2位から6位までの勝ち点差が実質「2」となっている中での3位と、来季のチャンピオンズリーグ出場権の獲得すらわからない状況となっている。
では、なぜユヴェントスは今季、ここまで苦戦することとなってしまったのか。昨季のマウリツィオ・サッリ体制でもそうだったが、ピルロ体制での苦戦の要因のひとつとして、チームの起用法の「最適解」を見つけられないことが挙げられる。

ピルロ監督は今季、ポゼッションとトランジションをテーマに、可変システムを用いる3バックでスタート。状況に応じてシステムの変化が必要なため、サイドバックのダニーロを3バックの一角で起用したり、インサイドハーフを主戦場とする選手をあえてサイドハーフに配置したり、他のチームではなかなか見られないような起用法にチャレンジした。しかし、ピルロ監督が当初目指したサッカーはなかなかチームに定着せず、結果にも繋がらない。こういった状況もあってか、指揮官はこのスタイルを早々に見切り、第8節以降は4バックへ変更している。

さらに、怪我や新型コロナウイルスの陽性反応によって、シーズン通して離脱者が相次いだ影響もあるだろうが、各ポジションにおいて自身の求めるサッカーに合った選手をなかなか見つけられていない、もしくはそういった選手に育て上げられていない印象も。ウェストン・マッケニーやフェデリコ・キエーザ、ダニーロなど、ピルロ・サッカーを体現し、光を放っている選手もいることにはいる。しかし、理想とする選手を見つけられないことで、選手を固定して起用することができず、チームとしての成熟度を高めることができていないまま終盤を迎えてしまっているように思う。

実際、それがデータにも現れている。伊『Gazzetta dello Sport』によると、ここまでリーグ戦34試合を消化しているが、ピルロはスタメン11名の起用方法がまったく同じだった試合は一度もない。フォーメーションや選手の配置など、どこかしらイジって毎回試合へ臨んでいるというのだ。見方を変えれば、指揮官が対戦相手に合わせて、こまめにチームを変化させているとも取れなくもない。ただ、結果に表れていない現状を考慮すると、様々なことを試行錯誤しながらシーズンを送るも、いまだにピルロの「最適解」は見つかっていない可能性が高いかもしれない。

はたして、ピルロ監督は残り4試合、少しでもチームにあったスタイルを見つけ、最低限の目標であるCL出場権をチームにもたらすことができるのか。同監督の去就も気になるところだが、まずは残りの4試合に注目だ。

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