6月のオーストラリア戦、インドネシア戦には日本代表でのプレイ経験が少ない選手、あるいははじめてとなる選手が数多く招集されていた。「再招集の選手たちは経験を積んだことでいかにレベルアップしているか。初招集の選手たちは、ベースのところと自分の武器というところを見させてもらいました」とは森保一監督の言葉で、2試合で各選手がピッチに立ち、それぞれが力を出すことに努めた。
状況としてはオーストラリアがW杯出場権獲得に向けてしたたかに勝ち点を取りに来たのに対して、インドネシアはすでにプレイオフ進出が決まっていた。また、オーストラリア戦の日本代表は移動疲れや練習日数も短く、コンディションが良いわけでもなかった。こうした事前情報を考慮して話を進めていきたい。
GKは谷晃生がオーストラリア戦、大迫敬介がインドネシア戦でゴールマウスを守った。どちらも日本代表に招集される常連だが、鈴木彩艶というファーストチョイスがいるため国際Aマッチ出場は少ない。
日本代表のチームスタイルからGKには足元のうまさ、正確にフィードできることが求められるが、この部分において大迫敬介は冷静なプレイをみせた。CBへのパスだけではなく、ボールを受けに下がってきた遠藤航、佐野海舟の動きがしっかり確認できていて、サイドに逃げるのではなく、狭い相手の間を通して真ん中にパスを出すこともあった。
大迫の動きでひとつ気になったのは、前半に3バックの裏に出されたボールへの反応が少し遅れ、ギリギリでのクリアになった場面があったこと。足の速いストライカーが相手だったら、入れ違いでボールをロストしていたかもしれない。結果的には難を逃れたが、強者との試合ではひとつの判断ミスが失点につながるだけに良い教訓にしたい場面だった。
これは谷も同じで、こちらはパスの精度に問題があり、ゴールに近い場所で2度相手にボールを渡してしまった。どちらも失点にはならなかったが、谷はJリーグでも足元のボールコントロールに不安を感じさせるときがある。2人目、3人目のGKの座は、他選手にもまだチャンスがありそうだ。
CBはケガ人が多いなか、6月のシリーズでは高井幸大、鈴木淳之介が安定したパフォーマンスを発揮した。高井は3月のサウジアラビア戦ですでにW杯予選を経験済みで、臆することなく普段どおりに対人プレイに強いところをみせた。高さがあるのはもちろん、相手を振り向かせない距離感で勝負できるタイプで、自由なボールコントロールを許さずに奪い取ることができる。
日本代表はボールロストの瞬間に攻守を切り替え、即時奪回することを狙っている。高井はポジショニングがいいし、ボールが出てくる場所を読む力にも優れている。その後のパス出しも正確なので、カウンターを狙う相手を高いポジションで潰し、逆にカウンターへと繋げることができる。今夏ではないにしろ、近い将来に欧州へと渡ることになるだろう。
鈴木淳之介の安定感も際立っていた。テクニックに定評がある帝京大可児高校の出身とあって、インドネシアがプレスをかけてきても慌てることがなく、冷静にかわしていた。スピードがあって身体も強く、対人の競り合いでほぼ勝利していた。
もともとボランチなので、鈴木淳は足元の技術力も高く、パスセンスもある。最終ラインからのビルドアップを任せられるし、効果的なくさびのボールも期待できる。W杯予選中は伊藤洋輝、冨安健洋、谷口彰悟、町田浩樹などにケガが相次ぎ、CBはなかなか固定できていなかった。今後の強化試合では鈴木淳がプレイする時間が増えることが予想される。