なぜフランクフルトはこんなに強い!? コバチとは違う3バックの活かし方

攻撃陣が好調のフランクフルト photo/Getty Images

今季は攻撃陣大爆発

長谷部誠が3バックの中央に入る戦い方は、今やフランクフルトにとってお馴染みのスタイルだ。昨季までフランクフルトを率いていた現バイエルン指揮官ニコ・コバチが愛用した3バックシステムはアディ・ヒュッター政権に代わった今季も継続されているのだが、昨季までのチームとは特徴が大きく異なっている。

一番の違いは攻撃性だ。得点数を見れば明らかだが、フランクフルトはリーグ戦13試合を消化した段階で30得点を奪っている。これはバイエルンをも上回るブンデスリーガで2番目に多い数字だ。2日のヴォルフスブルク戦は1-2で落としてしまったが、この試合を除けば11月に入ってからのフランクフルトはヨーロッパリーグの戦いも含め全試合で3得点以上を記録する爆発ぶりを見せている。では、なぜフランクフルトは昨季までと同じ3バックなのに攻撃が爆発しているのか。

ポイントは、前線3トップの動きだ。相手に押し込まれた際に両ウイングバックが下がって5バックに変化するパターンはこれまで通りだが、ヒュッターのチームは守備時にアンテ・レビッチ、ルカ・ヨビッチ、セバスティアン・ハラーの3トップがあまり戻ってこない。前線からプレスはかけるものの、自陣深くまで戻るケースが少ないのだ。彼ら3人は前線に待機し、味方がボールを奪った際のカウンターアタックに備えている。得点を量産できているのは3人の個の能力が高いことも関係しているが、ヒュッターが彼らの守備負担を軽減するやり方を機能させているのが大きい。
そしてこのシステムを使用するうえで欠かせないのが、ダブルボランチの働きだ。前線に3人が残るケースが目立つ今のフランクフルトは、守備時に[5-2-3]の形になることも多い。その時1番負担がかかるのはボランチの「2」の部分で、ピッチを広範囲にカバーする能力が求められる。ヒュッターはここにオランダ人MFジョナサン・デ・グズマン、長谷部と同じくロシアワールドカップを最後に代表引退を表明した元スイス代表MFジェルソン・フェルナンデスを入れているが、この2人がとにかくよく走る。

例えば3‐0で勝利した11月11日のシャルケ戦では、デ・グズマンがチーム最長となる11.42km、相棒フェルナンデスが2番目となる11.28kmの走行距離を記録。さらに3-1でアウグスブルクを撃破した11月23日のゲームでは、デ・グズマンが11.94kmでチーム2位、フェルナンデスが12.93kmでチーム1位の数字を残している。彼らが中央からサイドまで休みなく走り続け、ボールを回収することがフランクフルトの超強力なショートカウンターへと繋がっている。最終ラインはニコ・コバチ体制時と同じ3バックだが、勝利を目指す方法は大きく異なる。ヒュッターはフランクフルトを超攻撃的な集団へと変化させたのだ。

そんなカウンターアタックが威力を発揮する一方で、遅攻のクオリティはあまり高くない。相手がブロックを組んでいる場合は190㎝の大型FWハラー目がけて縦パスを放り込むシンプルな攻めを選択する機会が多いが、後方から質の高いパスが入るケースは少ない。ビルドアップでミスが出ることもあり、フランクフルトの1試合平均パス成功率は72.9%と現在ブンデスリーガ最下位となっている。ポゼッション率でも相手を下回る機会が多く、ボールを支配したところからチャンスメイクしていくチームではないことが分かってくる。どこでボールを奪い、シンプルに前線3トップを活かしていくのか。ここがフランクフルトの注目すべきポイントなのだ。

レビッチ、ヨビッチ、ハラーの3人に頼っている部分も多いため、この勢いがどこまで続くかは分からない。しかし、フランクフルトがリーグ首位を走るドルトムントにも劣らぬ攻撃力を備えているのは間違いない。昨季はリーグ戦でのチーム総得点が45点だったため、13節終了時点で30得点は驚くほどのハイペースだ。長谷部の3バックでただ守りを固めるだけでなく、リーグトップクラスの速攻で相手をねじ伏せる力まで手に入れたフランクフルトは非常に興味深いチームに仕上がっている。昨季は強いと言われながらも攻撃力が物足りず8位で終わってしまったが、今季こそはチャンピオンズリーグ出場権確保を狙えるだろう。

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