[独占取材:荒木遼太郎]名良橋氏も天才と評す男の現在地 荒木よ逆境を跳ね返せ 復活期す鹿島の10番

 Jリーグには、早くから頭角を現し、サポーターの期待を一身に背負う若手選手もいる。鹿島アントラーズの10番・現在21歳の荒木遼太郎もそんなひとりだ。2021シーズンには城彰二以来となる10代選手の二桁得点という快挙をやってのけ、ベストヤングプレーヤー賞を受賞。しかし昨季は5月にヘルニア手術を受け、約3カ月の離脱を強いられる苦しいシーズンとなっていた。迎えた今季も、スタメン確保には至っていない。

 今回取材を行うにあたり、本誌で連載を持っている元鹿島の名良橋晃氏にインタビュアーとして立っていただいた。名良橋氏は荒木を「天才」と評する。あんなにサッカーがうまかったら、さぞ楽しいだろうと思うのだそうだ。元日本代表にそこまで言わせる荒木は、サポーターも復活を待ち望む存在。川崎戦ではレッドカードを受け退場するなど、今季も厳しいシーズンになるかと思われた矢先、ルヴァン杯第3節の福岡戦で今季初ゴールが飛び出した。狭いエリアでの繊細なボールタッチ、冷静な状況判断、豪快なシュート。荒木のすべてが詰まったような一発だった(2023年4月7日取材)。

苦しさを乗り越えて復活を期す今季

苦しさを乗り越えて復活を期す今季

鹿島の10番・荒木遼太郎 photo/Getty Images

名良橋「まずはナイスゴール! おめでとうございます」

荒木「ありがとうございます!」

名良橋「荒木選手らしいゴールだったと思うんですけど、まずはご本人から振り返ってもらってもいいですか」
荒木「(溝口)修平からいいボールが来て、受けたときにカキ(垣田裕暉)が自分の前を斜めに走ってくれて相手がいなくなって、そこも冷静に見れていました。空いているスペースに思いっきり振り抜きました」

名良橋「師岡(柊生)選手など、まわりとの関係性がとてもいいなと思いました」

荒木「バランスがとれているなと思います。全体的にサイドのモロとマツ(松村優太)がうまく背後に抜けてくれて、そうすることで自分のスペースも空くし、そこがやっぱり自分はプレイしやすいところなんで。カキもポストプレイで入ってくれたりするので、本当にやりやすいバランスのとれたメンバーだと思いました」

名良橋「この一発で、吹っ切れてほしいなと思います。岩政監督からの期待も大きいなかで、今季はまだリーグでは出場2試合。スタメンもまだないと思うんですけど、どんな心境でシーズンに臨んでいますか」

荒木「去年は本当にきついケガもあって身体も戻らなくて、苦しいシーズンでチームに貢献できなかったんで。まずは自分で結果を出しつつも、どんどんチームを勝たせるようなシーズンにしたいと思って臨んでいます」

名良橋「昨シーズンはヘルニアの手術もしたけど、コンディションはどうなの? もう影響ないの?」

荒木「影響はまったくないですね。コンディションもすごくいいと感じています」

名良橋「特に今シーズン、岩政監督に求められているのは?」

荒木「やっぱり攻撃的なところだと思いますね。自分のところで攻撃の違いを出したり、引かれた相手に対してどう崩すか」

名良橋「いまの鹿島はトップ下がないですよね。[4-4-2]のサイドとか、[4-3-3]の中盤インサイドとかになると思うんですけど、そのポジションに入ってどんな風にプレイしようとかイメージはあるんですか」

荒木「システムによってどうするっていうのはイメージはするんですけど、自分はやっぱり試合になったら感覚で動くタイプなんですよ。あんまり制限されちゃうと、自分の良さはなくなると思います。[4-3-3]のインサイドハーフでも、あまり動きすぎないように、できる範囲で自由にっていうのをやろうとしてるんですけど、やっぱり難しいですね」

名良橋「結果を出せる選手だと思うので、監督をぎゃふんと言わせて下さいね。僕は荒木選手は天才肌で、さぞかしサッカーが楽しいだろうなと感じるんですけど、どんなところがチームに貢献できると思いますか」

荒木「やっぱり自分のところでリズムを変えたり、いい意味で違いを出したりっていうのはチームにプラスになると思っています」

名良橋「逆に足りないところは、どう認識している?」

荒木「守備のところですかね。本当に危険な位置に帰るとか、そういった危機察知能力というのが、自分にはまだ足りていないと思います。新潟戦も自分がマークしていた選手が点をとったし。ついていかなきゃいけなかったなっていう風に思っていますね」

名良橋「具体的に、練習で守備の強度は気にしてやっていますか」

荒木「危機察知能力については、常に周りを見ながら本当に危険な位置はどこかっていうのを探りながら戻るなど、普段の練習でしか身につけられないと思うので、そこはやっぱり意識してやっています」

背番号10は「自分から欲しいって言いました」

背番号10は「自分から欲しいって言いました」

2021年には36試合出場・10ゴール7アシストの活躍で、ベストヤングプレーヤー賞を受賞 photo/Getty Images

名良橋「背番号のこともちょっと聞きたいと思います。本山雅志という大先輩が引退しましたけど、10番という番号の重みは感じていますか」

荒木「いやもう、自分はもともとそういうのを感じないタイプで、13番のときもわりとそうだったんですけど。10番をつけたときは、なんかちょっと違うなと。だんだんと意識するようになりましたね」

名良橋「10番も13番もアントラーズとしては重いと思うんですが、10番をつけたときの率直な感想は?」

荒木「僕、自分から言ったんですよ。10番は昔から好きで、性格的にもちょっと目立ちたいとか、そういうのもあるので。やっぱりサッカーやっていて、自分のプレイスタイルなら10番つけたいと思うので、自分から欲しいって言いました」

名良橋「そうなると、結果が欲しいですね。今シーズンどのくらいいきたいと思っていますか」

荒木「やっぱり二桁はいきたいですね。得点やアシストを求められる選手だと思ってるんで、しっかり結果を出したいなと思っています」

名良橋「10番といえば、たまにジーコさん来るじゃない? 荒木選手にとって、ジーコさんはどんな存在?」

荒木「(自分が入って)1~2年目は、ずっと鹿島にいらっしゃったんですよ。負けが続くとジーコさんがビシッと言ってくれました。ミーティングの場で喝を入れてくださったことがあって、そこから8連勝くらいできたんです。一言でチームを変えられるのは、本当にすごいなと思いますね。現役時代のプレイは、ハイライト動画でしか見たことがないんですけど。自分はフリーキックも持ち味なので、ジーコさんくらい決めたいなと思います」

名良橋「ほかにも荒木選手は狭い局面でも打開できますし、ライン間でただ受けるだけじゃなく、そこで仕掛けられる。そんなところが良さだと思います。本当に10番らしい選手。サイドバックだったら、走り甲斐があるだろうなと思いますよ」

荒木「それこそ松村が右サイドで、自分がシャドーに入るカタチっていうのはよくやってるんですけど、自分は人を走らせるのも好きなんで。マツのこと信頼してるってのもあるけど、Sなところが出ちゃうんですよ(笑)。裏にバーンって蹴ったときにマツが準備してなくて、びっくりして走っていく姿も結構見ますね。でも、絶対走り勝ってくれるんで。自分からしたら、走ってくれる選手ってありがたいですね」

名良橋「それでスペースができたら、より荒木選手の良さが引き出されますね」

荒木「スペースを見つけるのは得意なんで。そこで自分の仕事をどんどんやれたらって思いますね」

A代表で鎌田選手と組んでみたい

A代表で鎌田選手と組んでみたい

横浜FM戦では途中出場。出場機会をしだいに増やしていきたい photo/Getty Images

-名良橋さん、鹿島の先輩として荒木選手になにか伝えたいことは?

名良橋「いや、僕はもうおっさんなんで(笑)。荒木選手も自分で言っていたように、チームを勝たせられる選手になってほしいと思いますし、ゆくゆくは代表の青いユニフォームを絶対に着てほしい。それくらいです」

荒木「ありがとうございます。やっぱりパリ五輪も出たいですし、今はA代表のほうに行きたいなと思います。海外のトップオブトップで活躍してる選手もいますし、そういう選手たちとプレイして、肌で感じてみたいです」

名良橋「一緒にプレイしてみたい選手は?」

荒木「鎌田大地選手と2シャドーを組んでみたいと思っています。少し似た感じがあるかなと思うので。全然鎌田さんの方がすごいですけど、考え方が重なる部分はあるかなと思うし、プレイもやりやすそうだなって思います。あとは(上田)綺世くん」

名良橋「荒木選手と組めば上田選手も代表でバシバシ点取れそうだもんね! 荒木選手、行こう代表に!」

荒木「(笑)。やっぱり綺世くんとはやりやすいですね。あれほどのFWはいないなって思っちゃいます」

名良橋「まずはJでしっかり結果を残して」

荒木「そうですね。川崎戦なんか交代で出てから失点してしまったんで、もっとしっかりゲームをまとめる力をつけないとなと感じています。まずは自分でしっかりリズムを作って。途中から出ることになっても、チームをいい方向に持っていくことを心がけてやっていきます」

 名良橋氏の激励にも力強く応えてくれた荒木。コンディションに問題はないと語っていたが、ルヴァン杯ではゴールに向かって巻いていく美しいコントロールショットも見せており、そのパフォーマンスは復活を予感させるものだった。前半戦は苦戦が続く鹿島だが、地力あるチームのこと、すぐに上位を狙う位置まで立て直してくるに違いない。そのときチームの中心には、きっとこの男がいる。

インタビュー/名良橋 晃

電子マガジンtheWORLD(ザ・ワールド)280号、4月15日配信の記事より転載

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