現在はFIFAのグローバルサッカー開発部門のチーフを務めているヴェンゲル氏
近年スローインに代わって導入が検討されているキックイン。リヴァプールのスローイン専門家はこの意見に大反対しているようだ。
キックインは1863年に廃止された制度だが、元アーセナル指揮官のアーセン・ヴェンゲル氏はキックインの復活を主張。ヴェンゲル氏はこの意図について「ゲームをよりスペクタクルかつスピーディーにすることです」と昨年に話していた。
英『Sky Sports』によれば、今週始めにドーハで開催されたIFAB(国際サッカー評議会)の会議で、キックインの導入について議論が行われたという。これに対し、リヴァプールのスローイン専門スタッフ、トーマス・グレンマーク氏が異議を唱えたようだ。
グレンマーク氏は2010年に世界最長となる51.33メートルのスローインを記録した人物で、デンマークのミッティランなどで指導を行った後、2018年からリヴァプールに参加。その功績が認められ、昨年にはリヴァプールとの契約を更新している。
彼はキックインの導入案に対して「最大の間違いだ」と同メディアで語っている。グレンマーク氏は敵のプレッシャーをどうかいくぐるかがサッカーの醍醐味だと考えており、そういった場面が減ってしまうことが問題だと主張している。
「キックインが導入されれば、(対応する)選手たちは後方に下がらなければならないので(キッカーへの)プレッシャーは減ります。私たちはプレッシャーがかかる状況を望んでいるのです。そのプレッシャーから逃れるための戦略をコーチとして考えたいのです。その策が上手くいった時、とてもわくわくするのです」
スローイン専門スタッフとして働くグレンマーク氏だが、自らの仕事がなくなってしまうがゆえにキックインの導入を批判しているわけではない。「私はゴールキーパーにゴールキックを指導してきました」と本人が話しており、スローインがなくなったとしても彼はまだ選手たちに教えることがある。あくまでサッカーのためを思ってこういった批判を展開しているのだろう。
過去にはプレミアリーグのストーク・シティなどで活躍したロリー・デラップが、ロングスローの名手として名を馳せた。日本では高校サッカーの強豪・青森山田がロングスローを得点パターンの一つとして組み込んでいることが有名で、こういった名物がなくなってしまうことの寂しさもある。
IFABがどうしてもキックインを取り入れるというのであれば、グレンマーク氏のようなスローインに対して深い見識を持っている人物も交えて議論を交わし、サッカーの魅力を損なわないルールを作ることが求められるだろう。