今冬移籍市場にて、ひとりの男がアーセナルから武者修行へと旅立った。イングランド代表MFエインズリー・メイトランド・ナイルズ(23)だ。
昨季まではそれなりの出場機会を得ていたものの、今季に入ってから出番が減少傾向にあった同選手。そんな状況に加え、アーセナルではウイングバックやサイドバックといったポジションを担当することも多く、本人の希望する中盤での起用が見込めないためにレンタル移籍という決断を下した格好だ。便利屋的に使われる現状を打破しようと本人なりに考えたのだろう。
しかし、実際問題としてメイトランド・ナイルズにこの先チャンスはあるのだろうか。現時点における彼のスキルを鑑みるに、近い将来アーセナルの中盤で定位置を奪い取ることは難しいかもしれない。
その大きな理由は、彼のプレイスタイルにある。抜群のスピードと豊富なスタミナに加え、身体の強さも併せ持つメイトランド・ナイルズだが、チーム全体としてボール保持を大切にするアーセナルで中盤を任せるには足元の技術が少々心許ない。特にパス出しの精度に関しては多分に改善の余地が残されていると言っていいだろう。
そんなメイトランド・ナイルズの未熟な部分は、レンタル先のウェストブロムにおいても早々に表れている。現地時間14日に行われたプレミアリーグ第24節のマンチェスター・ユナイテッド戦にて念願の中盤セントラルを任された同選手だが、正直に言ってしまえばそのパフォーマンスは低調なものだった。データを見てみると、この試合でメイトランド・ナイルズはGKサム・ジョンストンに次ぐ32本のパスを試みるも、味方に通すことができたのはわずか22本。成功率は先発したウェストブロムの選手中ワースト2位となる68.8%にとどまった。ビルドアップの段階で相手守備者にパスを引っ掛ける場面は散見され、データサイト『WhoScored.com』による採点も両軍最低の「5.9」を記録。満足にパスを捌けなかった印象は強かったと言わざるを得ない。
この調子が続くようであれば、将来的にアーセナルへ戻っても本人が希望しているとされる中盤での起用は難しいだろう。もちろん、そういった状況を打開するためにウェストブロムへと向かったこともあって、長い目でみる必要はあるかもしれない。しかし、もう23歳の彼の成長を気長に待てるほど、現在のアーセナルに余裕はない。ボックス・トゥ・ボックス型の選手としてもガナーズは今季MFトーマス・パルティをチームに加えており、メイトランド・ナイルズのレギュラー奪取はますます厳しいものとなっているのは間違いない。
随所にポテンシャルの高さは垣間見えるものの、自身のプレイしたいポジションをアーセナルで掴むのは現状難しいと言わざるを得ないメイトランド・ナイルズ。中盤の選手として逆境に立たされている同選手だが、はたして彼のアーセナルにおける未来はどのようなものになるのだろうか。近年便利屋として次第に評価を高めていたイングランド代表MFだが、本職での未来には暗雲が立ち込めている。