チェルシー次期監督はトゥヘル氏でいいのか 不安視される名物オーナーとの関係

チェルシーの次期監督候補とされるトゥヘル氏 photo/Getty Images

過去にも首脳陣との確執が

チェルシーは25日、チームの指揮官を務めていたフランク・ランパード監督を解任したことを発表。苦戦を強いられていたここ数試合の結果で、オーナーを務めるロマン・アブラモビッチ氏の忍耐が臨界に達し、長期政権も期待されたクラブレジェンドによる体制はわずか1年半で終止符が打たれることとなった。

次期監督はパリ・サンジェルマンの前指揮官であるトーマス・トゥヘル氏が有力視され、早ければ28日に行われるウォルヴァーハンプトン戦前にも就任するのではないかと報じられている。トゥヘル氏はドルトムント時代(ウスマン・デンベレやユリアン・ヴァイグル、クリスティアン・プリシッチなど)やPSG時代(ティロ・ケーラーやコラン・ダグバ、ミチェル・バッカーなど)に若手を積極的に起用しており、若き逸材が豊富なチェルシーの指揮官としても適任。さらに、鋭い観察眼に加えて戦術の幅も広く、プレミアリーグの個性豊かな名将たちにも引けを取らない。実績としても、昨季のチャンピオンズリーグではPSGを決勝の舞台へ導いている。

マンチェスター・ユナイテッドの黄金期を知り、イングランドサッカー界のレジェンドでもあるリオ・ファーディナンド氏も、トゥヘル氏について「彼は私が会った中で、最も印象的な監督の一人だ。とても洞察力に富んでいて、細部までこだわった人物。彼が(PSG時代に)まとめていた選手たち(D・アウベスやブッフォンなど)に話を聞くと、彼についてこれ以上ないほど熱く語るんだよ。クラブの雰囲気も史上最高だったんじゃないかな。彼はドイツ人だし、まだ火がついていない(同郷の)ハフェルツやヴェルナーをどうするのか、この点は興味深いね」と述べていた(英『Daily Mail』より)。
ただ、トゥヘル氏がもしチェルシーの指揮官に就任することとなれば、大きな懸念材料もある。トゥヘル氏はドルトムント時代、DFBポカール優勝(2016-17シーズン)を成し遂げ、クラブに5年ぶりのタイトルをもたらした。しかし、ハンス・ヨアヒム・ヴァツケCEOやクラブ上層部との間に亀裂が入り、このタイトルを置き土産に事実上の解任に追い込まれている。PSGでもそうだ。スポーツディレクターを務めるレオナルド氏との確執が浮き彫りとなり、昨年末に電撃解任されるハメに。レオナルド氏がトゥヘル氏に解任を宣告した際、部屋には1時間近く怒鳴り声が響いていたとの噂もある。クラブ上層部との関係をうまく築けていないのだ。

そして、今度はチェルシー……。オーナーを務めるロマン・アブラモビッチ氏は、トゥヘルのキャリアにおいて、これまでにないほど強烈なキャラクターを持つ人物と言っていい。実際に、多くの歴代監督たちも振り回されてきた。物事を物おじせずにハッキリと言うトゥヘル氏とアブラモビッチ・オーナーが衝突する可能性は極めて高いのではないか。さらに、アブラモビッチ・オーナーは我慢が苦手なため、もし結果を残せていたとしても、ちょっとしたことをキッカケにトゥヘル氏を解任に追い込む可能性もある。

先のファーディナンド氏同様に、イングランドサッカー界のレジェンドであるガリー・ネビル氏も「トゥヘルはフランクと全く同じルールを敷かれ、1年半、もしくは2年後、彼に関して同じことを言っているだろう」とコメント。トゥヘル体制が実現したとしても、短命になるのではないかと予想している。まだトゥヘル氏の就任が決まったわけではないが、名物オーナーとの関係が不安視される。

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