2004年に開催されたサッカー欧州選手権(EURO)のポルトガル大会。“16年前の今日”に同大会屈指の激闘が繰り広げられたことを、あなたは覚えているだろうか。
スペイン、ギリシャ、ロシア代表と同居したグループAを首位で突破したポルトガル代表は、同年6月24日の準々決勝でイングランド代表と対戦。キックオフからマイケル・オーウェンとウェイン・ルーニーの快足2トップにボールを集め、縦に速い攻撃を繰り出そうとしていたイングランド代表に、ポルトガル代表は苦しめられた。
前半3分、イングランド代表のGKデイビッド・ジェイムズが放ったロングパスにポルトガル代表MFコスティーニャが反応したものの、同選手のクリアボールが後方に逸れる。このクリアミスを見逃さなかったオーウェンが巧みなトラップでボールを収めると、軽快なターンから右足でシュートを放ち、先制ゴールを挙げた。
イングランド代表にとって不運だったのは、この大会のグループリーグで4ゴールを挙げていたルーニーが、負傷により前半27分に交代を余儀なくされたこと。キックオフから縦横無尽に敵陣を駆け回り、ポルトガル代表の守備陣形を崩していたこの韋駄天FWが抜けたことで、イングランド代表の攻撃力が低下。カウンターを発動しづらくなったイングランド代表が自陣に釘付けとなり、ポルトガル代表がボールを支配するという構図へと変わっていった。
後半に入り、ポルトガル代表のルイス・フェリペ・スコラーリ監督は同18分にMFシモン・サブローザ、同30分には空中戦に強いFWエルデル・ポスティガを投入。更に同34分には類稀なパスセンスを誇るMFマヌエル・ルイ・コスタをピッチに送り込み、同点ゴールへの足掛かりを築いた。
この采配が実を結んだのは同38分。シモンが敵陣左サイドからクロスを送ると、ペナルティエリア内でフリーとなったポスティガがヘディングシュートを放つ。ボールはゴール右隅へ吸い込まれ、ポルトガル代表が同点に追いついた。
このゴールで勢いづいたポルトガル代表は、エスタディオ・ダ・ルスに駆け付けた自国サポーターの大声援を受け、延長戦に入ってからも攻撃の手を緩めず。迎えた延長後半5分、センターサークル付近でボールを受けたルイ・コスタが敵陣ペナルティエリア付近までドリブルし、右足を振り抜く。この強烈なミドルシュートがゴールネットに突き刺さり、ポルトガル代表が逆転に成功した。
長きにわたりポルトガル代表の攻撃を牽引してきたルイ・コスタのスーパーゴールで幕引きと思われたが、イングランド代表が意地を見せる。延長後半10分にコーナーキックを得ると、MFデイビッド・ベッカムのクロスにDFジョン・テリーがヘディングで反応。テリーのパスを受けたMFフランク・ランパードが右足でシュートを放ち、同点ゴールを挙げた。2-2のタイスコアのまま延長後半が終了。この大会屈指の好カードの決着は、PK戦に持ち越された。
迎えたPK戦。先攻のイングランド代表は1番手のベッカム、後攻のポルトガル代表は3番手のルイ・コスタと、両チームが誇る名キッカーのシュートがゴールの枠外に逸れるという異様な展開に。この激闘に終止符を打ったのは、これまで数々の好セーブでポルトガル代表を救ってきたGKリカルドだった。イングランド代表の7番手ダリウス・ヴァッセルのキックを前にキーパーグローブを外して気合いを入れたリカルドが、シュートコースを読み切り素手でセーブ。直後に自軍の7番手キッカーとして登場し、ゴール左隅にシュートを突き刺した。
PK戦の末にイングランド代表を退けたポルトガル代表は、準決勝でオランダ代表をも撃破(2-1)。決勝でギリシャ代表に敗れたものの(0-1)、ルイ・コスタとルイス・フィーゴの両レジェンドMFに全盛期のデコ、さらに当時若手だったクリスティアーノ・ロナウドらを中心に華麗なパスワークを披露する好チームだった。錚々たるメンバーによって繰り広げられた“16年前の今日”の死闘を、ぜひ映像とともに振り返って頂きたい。