実は数字の上では、モイーズ・ユナイテッドの戦績は“最悪”ではない。例えば今季のオーレ・グンナー・スールシャールのチームと比べてみると、モイーズのチームが残した数字の方が上であることがわかる。ユナイテッドの今季のこれまでの獲得勝ち点は45。1ゲームあたり1.55ポイントとなる。モイーズが指揮をとった13-14シーズンの34試合では、1ゲームあたり1.68ポイント。さらに得点を見ると、今季は1ゲームあたり1.5ゴール、通算で44得点。モイーズのチームは34試合で56得点し、その平均は1.65ゴールとなる。また、ジョゼ・モウリーニョが指揮をとった18-19シーズンには、開幕からの7試合の戦績がプレミア設立後ワーストであることも話題となった。
それでも、解任記念日(?)には英紙の多くがモイーズを揶揄する記事を出すほどに、彼の印象は悪い。原因の一つは、数々のワースト記録を打ち立ててしまったことにもあるだろう。先述のウェストブロム戦は、1978年以来のホームでの敗戦。ホームでの敗戦記録はその後も更新され、エヴァートンに1992年以来の、ニューカッスルにも1972年以来の敗戦を喫する。2014年2月には、1984年以来負けていなかったストークに、プレミア創立以来の勝利をプレゼント。FAカップでは3回戦で敗退し、これは1984年以来。また、CLではオリンピアコスに敗戦し、ギリシャのクラブがユナイテッドに勝った初めての例を作った。
チームマネジメントにも穴があった。リオ・ファーディナンド、ライアン・ギグスといったベテランを重用せず、古巣エヴァートンから連れてきたマルアン・フェライニや、若手のアドナン・ヤヌザイの起用にこだわった。戦術はクロス一辺倒であり、ファーディナンドは自身の自伝の中で「アマチュアのようで、恥ずかしかった」と非難している。
「植え付けようとしたチーム構想がなんだったのか、最後まであやふやだった。ファーギーは積極的だったけど、モイーズは無意識に消極的な雰囲気を作っていたと思う。次第に選手たちの信頼を失っていったし、僕自身も彼のもとではプレイを楽しめなかったんだ」
結局のところ成績以上に、ファーガソン氏の作り上げたユナイテッド像をすっかり壊してしまったことが、モイーズ非難の一番の原因ではないかと思われる。負けるはずのないクラブに負け、魅力的な攻撃サッカーは嘘のようにどこかへ行ってしまった。モウリーニョやスールシャールが、モイーズ以下の成績しか挙げられなかったとしても、すべての原因を作ったのはモイーズだったというわけだ。ユナイテッドファンが抱いた恨みと失望は、6年くらいの歳月では解消されないということなのかもしれない。
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