[特集/史上最高のCLラウンド16 01]難敵を迎えるリヴァプール 先制点が勝負の分かれ目

決して相性は悪くない アトレティコは耐え続けられるか

決して相性は悪くない アトレティコは耐え続けられるか

現王者を率いるクロップ監督は難敵アトレティコをどう攻略するか photo/Getty Images

 昨季王者のリヴァプールは現在世界最強といっていいチームだが、アトレティコ・マドリードにとって相性は悪くない。

 快足のサラー、マネを擁するリヴァプールはスペースがあるうちに素早く敵陣にボールをフィードして攻め込み、たとえ奪われてもハイプレスで相手の組み立てを封じ込み、波状攻撃を仕掛ける戦い方を得意としている。この展開になったときの個々のスピード、強度、チームとしての連動性は目を見張るものがある。

 一方、アトレティコは堅守速攻が看板だ。リヴァプールのスピードを消すために、引いて守備を固めるだろう。そうなるとリヴァプールは持ち前のダイナミズムを発揮しにくくなる。戦術的な相性でいえば、アトレティコが自分たちのスタイルであるのに対して、リヴァプールは最大の武器を使いにくい。これが基本的な対決の構図になる。
 リヴァプールにとってのポイントは、アトレティコの堅守をいかに崩すか。引いた相手の攻略はあまり得意とはいえないが、すでにその課題には取り組んできていて成果も出ている。変幻自在のフィルミーノとキープ力のあるワイナルドゥムが中心になってボールを動かし、サラーやマネを生かせるスペースをそれなりに作り出せるようになっている。

 アトレティコに守備力が問われることは当然として、ボールを奪った後が焦点だ。押し込んでいるリヴァプールは猛然とハイプレスをかけてくる。しかし、それをかわせば自然とアトレティコは得意のカウンターアタックができる。だが、引っかかってしまうとリヴァプールの波状攻撃を受け続ける。ボールを奪った直後に奪い返されると、守備組織が崩れているので失点の危険は増大する。アトレティコはボールを奪った直後のパス、その次のパスを成功させられるかどうかが生命線になりそうだ。

先制点を奪ってオープンな展開に持ち込みたい

先制点を奪ってオープンな展開に持ち込みたい

トリッピアーの正確無比なクロスは得点源となりうる photo/Getty Images

 アトレティコはホームの第1戦をできれば無失点で終えたい。アトレティコもリヴァプールと同様に、ボールを保持して得点を奪うという課題に挑戦してきたが、その成果はあまり出ていない。攻撃用の[4-3-1-2]のフォーメーションを試してきたものの、得点力は依然として上がっていないのだ。アトレティコがボールを保持して攻めれば、リヴァプール最大の武器であるカウンターを許すことになり、カウンターの打ち合いではまず勝ち目がない。試合のリズムを活性化させず、膠着する流れに持っていったほうが有利である。

 アトレティコの攻め手はセットプレイ、フェリックスとモラタによるカウンター、そして両サイドバックのトリッピアー、ロディのクロスボールだ。とくにトリッピアーのクロスは得点源といっていい。ただ、2トップのフェリックスとモラタは地上戦向きで、さほど空中戦が強力ではない。少なくともリヴァプールのセンターバックに対しての優位性はない。有効な攻め手がカウンターに限られている以上、むしろリヴァプールに攻め込んでもらったほうがいいわけだ。

 リヴァプールは試合をオープンにしてしまえば一気に有利になる。閉じようとするアトレティコ守備陣をこじ開けて先制すること。リードしてしまえば、アトレティコの反撃を抑えるのはさほど難しくない。[4-3-3]の攻撃型ではあるが、そこから守備を増員してのブロック守備も強いからだ。

 通常はマネがMFに加わって[4-4-2]となり、さらにフィルミーノが引いて[4-5-1]に変化する。凄まじい強度でプレイしているが、さすがに最後までそのままということはないので、逃げ切り策も用意してあるのだ。

 新加入の南野はフィルミーノの控えという位置づけになる。出場機会があるとすれば、プレイ強度が落ちてくる終盤の時間帯と予想される。そのため、フィルミーノのスタートポジションであるCFでプレイするともかぎらない。[4-5-1]ならば、トップに残るのはサラーなので、南野はサイドハーフとして起用されるだろう。ザルツブルクではサイドハーフでもプレイしていて適性もある。リヴァプールはもちろんそれを知っていて南野を獲得している。その意味で即戦力としての補強といえる。単純なフィルミーノの代役ではなく、時間帯とタスクの変化も考慮してのバックアップなのだと思う。

文/西部 謙司

※theWORLD241号、1月15日発売の記事より転載

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