若い選手たちが躍動しているチェルシーだが、ランパードは彼らに自由を与え、ノビノビとした環境のなかで育てているわけではない。むしろ逆で、チーム内に厳格なルールを設け、一緒に戦う協調性を大事にしている。“和”を乱したときの罰則が明確に決められていて、現地メディアの『Telegraph』紙が詳細を具体的に伝えている。
いくつか紹介すると、まずは遅刻について。練習開始に遅れたときは2万ポンド(約280万円)の罰金。やむを得ない事情、ケガや病気で参加できないときは、遅くとも開始1時間半前に連絡しなければならない。これを怠ると1万ポンド(約140万円)の罰金となる。
他にも、移動時の設定時間や服装規定を守れなかったとき。クラブから依頼されたミッションを拒んだときなど、さまざまなケースに具体的な罰金額が設定されている。細かいものでは、チームでの食事中やミーティング中に携帯電話が鳴ったときは1000ポンド(約14万円)の罰金となっている。
ランパードにとってこれらの約束事は、チーム内で選手たちが自分の仕事をまっとうするために必要なことで、日々の生活をしっかりできなければピッチでもしっかりとしたプレイはできないという判断なのだろう。一理ある考え方で、現役時代のランパードがどういう姿勢でサッカーに取り組んできたかがわかるエピソードだといえる。
無論、ただ厳しいだけではない。選手たちが責任を果たしてくれると信じており、寛大な判断をすることもある。シーズン前の日本遠征中にケガをしたエンゴロ・カンテには、チームからの離脱と母国への帰国をすぐに許可している。そして、「自身でリハビリを行い、開幕には間に合わせてくれると思う」と信頼感のあるコメントを残していた。
また、コパ・アメリカ参加のため合流が遅れていたウィリアンに関しても、「休暇をリハビリに当てているはず。合流したならチーム力が上がっていくと思う」と個人の責任感に任せる発言をしていた。
厳しい罰則を設けている裏には、各選手が自覚と責任感を持ってチェルシーのためにプレイしてほしいという願いが込められている。そして、ジェイムズのMFへのコンバートを考えているように、しっかりと個々の選手を見てチーム作りを進めている。人望があり、統率力があるランパードのもと、チェルシーは“一枚岩”になりつつある。これがどこまで結果に繋がるか未知数だが、チーム内に不協和音や軋轢を抱えたまま戦うよりははるかにいい状態で、むしろ健全だ。今後、ランパードはどんな監督になっていくのか? 現状から判断すると、いまは期待しかない。
ちなみに、罰金によって貯まったお金はクラブの活動費やチャリティにまわされるという。果たして、1シーズンでどれだけの罰金が貯まるものなのか……。できれば、その金額を知りたいところだ。
theWORLD239号、11月15日配信の記事より転載
文/飯塚 健司
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