[ロシアW杯#23] クロアチア強し! メッシ沈黙のアルゼンチン、3失点で窮地に立たされる

カバジェロよもやの凡ミス アルゼンチンが先制点を献上

カバジェロよもやの凡ミス アルゼンチンが先制点を献上

組織的な守備と中盤の連動性が噛み合い、アルゼンチンを寄せ付けなかったクロアチア photo/Getty Images

中盤の潰し合いに終始した前半も、クロアチアはビビっていなかった。アルゼンチンがボールサイドに激しく寄せてきても及び腰にはならず、むしろ「肉弾戦、上等!」といった風情で渡り合っていた。マンジュキッチとレビッチは足を止めずにフォアチェックを続け、モドリッチとラキティッチは絶妙のポジショニングで攻守のバランスを整える。さらに、アルゼンチンを相手に必要以上のビルドアップはリスクが大きいと判断したのか、無理をせずにGKスバシッチにボールを預け、ロングフィードで陣地回復を図る時間帯もあった。前線に向けた高いボールにはマンジュキッチがいる。そのたびに上下動を強いられ、屈強のストライカーとの空中戦まで余儀なくされるアルゼンチンDF陣にすれば、不愉快この上ないプランだった。スコアレスで前半を終えたものの、主導権を握っていたのはクロアチアだ。

後半、クロアチアに幸運が訪れた。53分、アルゼンチンGKカバジェロがなんでもないバックパスをキックミス。寄せていたレビッチが、 ボレーで右隅に叩き込んだ。正GKロメロの負傷離脱によって定位置をつかんだカバジェロだが、足もとの処理はそれほどうまくない。前半もしっかりミートできず、ビルドアップの妨げにもなっていた。初戦のアイスランド戦もしかり、である。 カバジェロに対しクロアチアが終始プレスをかけていたのは、弱点を見抜いていたからだろう。

先行されたアルゼンチンは一気にペースを上げた。ボールタッチ数が極端に少なかったアグエロに代え、イグアインを投入する。しかし、サンパオリ監督にどのようなプランを授かってきたのか、存在感が非常に薄い。また、肝心要のメッシはパスコースを封じられ、なおかつスペースも消されたため、チャンスに絡んだとしても散発に終わった。先行を許すと3勝5分19 敗。ワールドカップのデータもアルゼンチンの焦りを誘う。

モドリッチの超絶ミドルが試合を決定づける

モドリッチの超絶ミドルが試合を決定づける

80分、モドリッチがDFをかわして決定的なスーパーミドルを突き刺した photo/Getty Images

56分、サルビオに代えてパボンを投入した。68分にはペレスを下げ、ディバラをピッチに送り込んだ。それでもリズムに変化はない。いたずらに前に急ぐだけで、クロアチア守備網のなかでもがき続ける。 そして……。80分、モドリッチにスーパーミドルを決められた。後半追加タイムには、ラキティッチにとどめを刺された。0-3、アルゼンチン完敗である。〈戦術メッシ〉はもはや限界なのか。彼とアグエロ、イグアイン、ディバラの共存は、解決策を見いだせないままワールドカップが始まり、1分1敗と追い込まれてしまった。 第3戦の相手は過去4戦4勝と相性のいいナイジェリアだが、今大会は波乱が続いている。何が起きても不思議ではない。  

最後にオタメンディには苦言を呈す必要がある。倒れたラキティッチの顔面にボールをぶつけた一件はあまりに悪質。頭部へのダメージがどのような影響を及ぼすか、 分かっていないのだろうか。イルマトフ主審はイエローにとどめたものの、一発レッドに相当する。


文/粕谷 秀樹

サッカージャーナリスト。特にプレミアリーグ関連情報には精通している。試合中継やテレビ番組での解説者としてもお馴染みで、独特の視点で繰り出される選手、チームへの評価と切れ味鋭い意見は特筆ものである。

theWORLD206号 2018年6月22日配信の記事より転載

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