[ロシアW杯#17]ロシア、“サラー封殺”! コンパクトな布陣で決勝T進出をほぼ手中に

サラーが負傷から復帰も 見えなかった“攻撃プラン”

サラーが負傷から復帰も 見えなかった“攻撃プラン”

62分にジュバがボックス内で右足を振り抜き、3点目を挙げた photo/Getty Images

サラーがピッチに戻ってきた。チャンピオンズリーグ決勝で痛めた右肩の負傷も癒え、ラインナップに名を連ねた。絶対的エースの復活により、エジプトは自信をみなぎらせている──。だれもがそう考えていたはずだ。
 
ところが、ロシアの前に手も足も出ない。1対1で後れをとり、マークの受け渡しが曖昧で、ボールサイドへの寄せも甘い。また、モフセンは前線に張り付いているだけで、右サイドバックのファティもプレイエリアが低すぎる。サラーのスピードを活かせる仕組みではない。彼が右サイドで孤立していたのは当然だ。

流れの中で崩せないのなら、ロングボールという手段が考えられる。しかし、ロシア守備陣が高い位置をとっても裏を狙う意図は感じられず、攻撃の仕組みが不明瞭なまま前半を終えた。とはいえ、好材料がないにも関わらずスコアレスだ。エジプトにすれば御の字である。
 
ただ、後半開始早々に思わぬミスから失点する。ファティがシュート対応を誤ってオウンゴール。スコアレスの時間を長く続け、終盤にカウンターから1点をもぎ取るのが理想だったエジプトのゲームプランに狂いが生じた。さらに59分には左サイドの対応が緩く、なおかつゴール前でチェリシェフをフリーにする失態を演じ、リードを広げられる。

サラーを前線に上げ、1トップから2トップにしても状況は一向に改善しない。攻撃の仕組みは相変わらず場当たり的で、時おり放たれるシュートも偶発的なものが多かった。しかも、2点のリードを奪ったロシアがより冷静に対処したためサラーのスペースはなく、前を向くことさえ許されない。そして62分、エジプトは決定的な3点目を奪われた。

最終ラインからのロングボールを、ロシアのFWジュバが胸で巧みにコントロール。寄せてきたエジプトDFガブルを力づくでかわし、丁寧なインサイドでとどめを刺す。73分、エジプトはサラーが自ら得たPKを決めたものの、大勢に影響を及ぼすはずがなかった。

攻守とも連携に乏しかった。頼みのサラーはほぼ消されていた。エジプトは、1-3の完敗も受け入れざるをえない。初戦に続く敗北で、得失点差もマイナス3。決勝トーナメント進出はもはや絶望的だ。クーペル監督も無策が過ぎる。

さて、ロシアである。2017年以降の強化試合は3勝5分7敗。今年3月のブラジル戦は0-3、フランス戦でも1-3と完敗し、開催国の面目を保てるのかと、各方面で不安視されていたが、ふたを開けてみると2連勝。グループリーグ突破を決定的なものにした。絶妙の距離感に基づいた攻守のバランスは美しく、チーム全員がハードワークを怠らない。ジュバのポストワーク、ゴロビンのビジョンなども好材料だ。

最終ラインがスピード不足のため、上位進出は難しいだろう。しかし、ホームの圧倒的な大声援を味方につけ、ホストカントリーとしての責務だけは全うした。お疲れ様。この先は、四年に一度の大舞台をエンジョイすれば、それでいい。


文/粕谷秀樹

サッカージャーナリスト。特にプレミアリーグ関連情報には精通している。試合中継やテレビ番組での解説者としてもお馴染みで、独特の視点で繰り出される選手、チームへの評価と切れ味鋭い意見は特筆ものである。

theWORLD204号 2018年6月20日配信の記事より転載

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