[水沼貴史の欧蹴爛漫012]相手よりも先に動くな! 酒井宏樹がEL決勝で実践すべき守備とは?

自分の間合いに引き込みたいところです

自分の間合いに引き込みたいところです

マルセイユの全体練習に復帰した酒井宏樹 photo/Getty Images

水沼貴史です。DF酒井宏樹(マルセイユ/日本代表)の負傷が癒え、クラブの全体練習に合流しましたね。マルセイユを率いるリュディ・ガルシア監督は今季、酒井を様々なポジションで起用してきました。監督が彼の能力を高く評価していることは明らかですし、彼の代役として右サイドバックを務めたブナ・サールと比べても、彼の守備の局面での落ち着きぶりは際立っています。16日に行われるUEFAヨーロッパリーグの決勝戦(アトレティコ・マドリード戦)で起用される可能性は高いでしょう。今回は酒井が決勝戦に出場することを前提に、彼がアトレティコ戦で実践すべき守備についてご説明します。

この試合で酒井が心がけるべきなのは、1対1の局面で相手よりも先に動かないことです。シュートブロックに行くタイミングやボールに対して足を出すタイミングが早すぎると、相手に逆をとられてしまいます。特にアトレティコの2トップ(ジエゴ・コスタ、アントワーヌ・グリーズマン)は、相手DFが自分よりも早く動くのを待っているふしがあります。相手の体の重心が傾いた隙を突く、またはドリブルの際に緩急を自在に操るのもお手のものです。リーグ・アンの猛者たちとの対戦を通じ、対人守備に磨きをかけている酒井ですが、今ご説明した原則を守り、自分の間合いに相手を引き込むことができるか。彼の真価が問われていると言えるでしょう。

また、酒井としては味方選手へのコーチングをマメに行いたいところです。自身の背後のスペースを消すことは勿論のこと、中盤の選手と連係して相手のアタッカー陣を挟み撃ちにし、ボールを奪いたいところです。先月に行われたヨーロッパリーグの準々決勝(RBライプツィヒ戦/1stレグ)では3バックの一角に入った酒井ですが、的確なコーチングで自陣ゴール前のスペースを消し、FWティモ・ヴェルナー(ドイツ代表)とほぼ互角の勝負を繰り広げました。この試合での経験が決勝戦で活きることを願っています。
2015年8月に、アトレティコ・マドリードがサガン鳥栖と親善試合を行ったことは皆さんもご存じでしょう(於:ベストアメニティスタジアム)。私は幸運にもピッチレベルで試合を見ることができましたが、ディエゴ・シメオネ監督が施すポジション修正に素早く反応し、コンパクトな布陣を敷く彼らの対応力の高さに度肝を抜かれました。日本人選手が欧州屈指の組織力を誇る彼らと対戦できることを誇りに思いますし、酒井には最後まで粘り強く闘ってほしいですね。この試合をご覧になる皆さんには酒井の奮闘ぶりを見守って頂くとともに、アトレティコ・マドリードの統制のとれた守備もご堪能頂きたいですね。

ではでは、また来週お会いしましょう!

※UEFAヨーロッパリーグの決勝、マルセイユ対アトレティコ・マドリードは日本時間17日の早朝3時45分にキックオフ!


水沼貴史(みずぬまたかし):サッカー解説者/元日本代表。Jリーグ開幕(1993年)以降、横浜マリノスのベテランとしてチームを牽引し、1995年に現役引退。引退後は解説者やコメンテーターとして活躍する一方、青少年へのサッカーの普及にも携わる。近年はサッカーやスポーツを通じてのコミュニケーションや、親子や家族の絆をテーマにしたイベントや教室に積極的に参加。幅広い年代層の人々にサッカーの魅力を伝えている。


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