また楽しみな選手がデビューした。FC東京の佐藤龍之介である。弱冠16歳と4ヵ月。過去の記録をひもといてみても大会史上3番目に若い(森本貴幸・当時東京V:15歳と10ヵ月、久保建英・当時FC東京:15歳と10ヵ月)。
FC東京U18の所属だが、春のキャンプからトップチームに抜擢され、この試合がプロデビューとなった。[4-3-3]の右インサイドハーフとして60分間プレイ。168cmと決して大きな体ではないが、抜群のボールコントロールで対するC大阪に脅威を与え続けた。年代別代表の中心選手としても期待のかかる佐藤に、試合直後に話を聞いた。
「デビューできたことはすごくうれしいですが、勝ちを求めていたので結果がついてこず悔しいの一言です。緊張はそこまでしてなくて、観客もすごくいてワクワクの方が大きくて、こういう環境でサッカーできている自分に自信をもって臨むことができました」
「キャンプからルヴァンカップの初戦で出たいと意識していました。けが人が出てチャンスが巡ってきたので自分がここを求めていたので出れてうれしいです。お母さんも弟と観にきていて、色んなコーチから思い切ってやってこいと前向きな言葉しかかけられていないです」
「この60分はサッカー人生で一番濃いと思います。次につなげていかないと、ユースに帰ってもトップで継続してやるにしても、できなかったことをできるように取り組みたい。もっと決定的なパスを出せたらと、悔しいです」
また、佐藤にとってこの試合が特別である理由がもうひとつあったようだ。マッチアップしたのは、C大阪の香川真司だ。
「(C大阪の香川選手は)ずっとテレビで見て憧れの存在、これ以上ない幸せ。マッチアップして楽しかったです。監督も僕のボール扱いを評価してくれているので、ボールを失ってはいけない。監督が僕に求めていることをピッチで表現したい」
「(声出し応援は)最高に気持ちよかったです。声出しはたまにありましたが最高でも4000人。今日は1万人。これ以上ない。(龍之介コールに)感動しました」
16歳の少年らしい初々しいコメントが並んだが、自身にはしっかりと課題も見えているようだ。
「キャンプからフィジカル強化をはじめて、これでは全然戦えない(と思った)。一回トップを経験するとそこに絶対自分もいなくちゃいけないと思い、プレイだけでなくフィジカルなどの強度を今すぐ変えようと思って取り組んでいます」
16歳にして掴んだ華々しいデビュー。しかし、これからは継続して試合に出ることが求められる。本人の努力ももちろん必要だが、伸び盛りの若き才能に、いかに出場機会を与えていくか。それは大人たちが考えなければいけないことだ。
取材・文/吉村 憲文