昨夏の東京五輪では3位決定戦にて日本代表も手痛くやられたが、メキシコ代表は強い。ワールドカップではなかなかベスト16の壁が破れずにいるが、現在は7大会連続でグループステージを突破している。その実力はかなりのものだ。
しかし、今のチームには危機感が漂っている。カナダ代表、アメリカ代表の成長により、北中米カリブ海の序列が崩れつつあるのだ。
すでにカナダは北中米カリブ海予選突破を確定させ、今年のカタール大会出場を決めた。それに次ぐ2位がアメリカで、メキシコは3位だ。
メキシコと両国の差になっているのが得点力である。グループ首位のカナダが23得点、2位のアメリカが21得点奪っているのに対し、メキシコは15得点。これはグループ5位のパナマ代表よりも少ない(16得点)。
以前はマンチェスター・ユナイテッドなどで活躍したチチャリートことハビエル・エルナンデス、アーセナルでもプレイしたカルロス・ベラなど質の高いアタッカーが揃っていたが、2人とも現在は代表チームに入っていない。今のメキシコは絶対的な点取り屋を欠いているのだ。
佳境を迎えている北中米カリブ海予選の最終ラウンドでも、カナダ代表ではFWサイル・ラリンがトップとなる6得点、同じくカナダよりジョナサン・デイビッド、アメリカ代表よりクリスティアン・プリシッチが5得点ずつ、カナダではFWタジョン・ブキャナン、アメリカのFWリカルド・ペピも3得点ずつ奪っている。
一方でメキシコの最多得点者はウォルバーハンプトンでプレイするFWラウール・ヒメネス、クラブ・アメリカFWエンリ・マルティン、グアダラハラFWアレクシス・ベガの2得点となっており、チームを引っ張るゴールゲッターが見当たらない。
前線では他にもナポリFWイルビング・ロサノ、セビージャFWヘスス・コロナ、東京五輪にも参戦していたレアル・ベティスMFディエゴ・ライネスなど実力者はいる。しかしロサノとヘスス・コロナはカリブ海予選で1得点、ライネスは得点がない。
現在チームを指揮するのは、バルセロナでも指揮官を務めたヘラルド・マルティーノだが、今予選でもカナダとアメリカにリードを許すなど評価はそこまで高くない。特に攻撃面にはサポーターも納得していないだろう。
今や北中米カリブ海で注目を集めているのはカナダとアメリカの方で、メキシコは3番手になりつつある。チチャリートを思わせる若き点取り屋の登場に期待したいところで、より一段上の人材育成が求められそうだ。