EUROでの悔しい経験は“未来への糧” ムバッペは苦難を乗り越え成長せよ

今大会では苦しい時間を過ごすこととなってしまったムバッペ photo/Getty Images

若きエースを責めるわけにはいかない

2018年ロシアW杯王者が、今回のEUROではベスト16で姿を消すこととなった。日本時間28日深夜に行われた決勝トーナメント1回戦にて、フランス代表はPK戦の末にスイス代表に敗れることとなっている。

今大会の優勝候補筆頭とも言われたなか、まさかの早期敗退を喫することとなってしまったレ・ブルー。一時はGKウーゴ・ロリスのPKストップを契機として逆転に成功するも、終了間際に追いつかれるとそのままPK戦で伏兵スイスに屈することとなってしまった。スイスの奮闘を称えるべき試合内容だったと言えるが、それでもフランス国内では今後レ・ブルーに対して厳しい意見がぶつけられることだろう。

そんなフランス代表のなかでも、特に心配なのはFWキリアン・ムバッペ(22)だ。チームのエース格として獅子奮迅の活躍を期待されていた同選手だが、今大会においては最後までゴールを決めることができなかった。大会を通して本調子といかなかった印象は否めず、加えて大会中には彼の“エゴ”が問題視されたことも。チームにはFWアントワーヌ・グリーズマンやMFポール・ポグバといった優秀なプレイスキッカーがいたにもかかわらず、彼がキッカーを志願していたことに対する不満は各方面から漏れ出ていた。そんな事情もあるだけに、これからムバッペ個人に非難の言葉が浴びせられる可能性は高いだろう。

だが、ムバッペばかりを責めてはいけない。あまりにも早くスターダムを駆け上がっただけに忘れがちだが、彼はまだ22歳の若者なのだ。たしかに、パフォーマンス自体は決して良いものではなかったが、まだ20歳そこそこの選手が優勝を義務付けられたフランス代表の中心を担うにあたっては大きなプレッシャーがあったことだろう。それでいて、なかなか結果が出ないとなると、プレイに焦りが生まれるのは当然といえるかもしれない。

そして、フランス代表にはムバッペを外す余裕もなかった。たとえこのスイス戦に勝利していようとも、EURO優勝を狙うにあたってはどこかでムバッペの復調が必要になっていたはず。紛れもない中心選手なだけに、ディディエ・デシャン監督も彼と心中するという覚悟を持ってスイス戦には臨んでいたことだろう。結果的にはベスト16敗退の大きな要因となってしまったものの、ムバッペが優勝を狙うにあたって重要なピースだったことは間違いない。

前述した“キッカー問題”も、彼なりに復調の道筋を探してのものだったのかもしれない。「ゴールはケチャップのようなもの」と言われるように、どんな形でも1点奪ってしまえばストライカーというのは波に乗るものだ。グループステージ第2節のハンガリー戦でグリーズマンがムバッペにキッカーを譲ったのも、エースに一刻でも早くゴールを決めてほしいという仲間の思いがあったか。

最後のPKをストップされてしまったことも相まって、さらにその印象を悪くしてしまった感もあるムバッペだが、彼は苦しみながらも前に進もうとしていた。まだ未来がある選手だけに、この悔しい経験は将来への糧になるはず。今後数カ月は各方面から厳しい意見が降りかかるかもしれないが、稀代のスーパースターがそういった声で自身のリズムを崩さないことを願うばかりだ。

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