[MIXゾーン]途切れぬ緊張感 堅実な勝ち方に名古屋の躍進を予感

名古屋はクラブタイ記録となる開幕4連勝(写真はイメージ) photo/Getty Images

「非常にもったいない試合になった」

 ホームの神戸はここまで公式戦負けなし。不振にあえいだ昨季の姿はなく、大黒柱のMFイニエスタの不在も感じさせることのない戦いを続けている。対するアウェイの名古屋もリーグ戦全勝と絶好調。3月3日に組み込まれていたG大阪との試合が中止になったことで、結果的にリーグ開幕直後の過密日程を避けられることにもなった。

 週2試合のペースで試合をこなしている神戸。否が応でも修正を迫られるのは仕方ない。この試合では前節からスタメンを5人入れ替えて挑んだ。ただその影響が肝心な場面で出た。19分、今季初先発のMF増山が自陣ゴール前の繋ぎのパスを、相手のMF稲垣にプレゼントパス。これを稲垣は右足で豪快に叩き込んだ。シュートそのものはゴラッソと呼ぶにふさわしいものだった。

「得点シーンはいい形でボールがこぼれてきた。ミドルシュートは得意なので、思い切って打った結果いいコースにいって良かった」(稲垣)
 ただここに至るまで増山のミスパスだけでなく、13分にはGK前川がボランチの山口につなごうとしたパスを、やはり稲垣にさらわれ、あわやという場面を迎えた。ここは事なきを得たが「特に前半は失点したシーン含めて、自ら不用意なミスパスからピンチを招いた。しっかりと基本的なものを修正していく必要があると思う」(三浦監督)。

 まったくその通り。ただ監督は評論家ではない。次の試合までにいかにこういうミスをなくすのか。その手腕が問われる。

 名古屋は神戸よりも試合日程が『まし』なだけで、ここ1週間で3試合をこなしている。リーグ戦で82戦連続フル出場を続けてきたCB中谷を休ませ、同じポジションに移籍加入の木本を起用。前節からスタメンを5人入れ替えた。

「代表ウィークまでの連戦でどんどん疲れがたまっている。今日も何人かメンバー変更をしたが、チーム全体としての疲れが抜け切れていない中でどう戦うか」(フィッカデンティ監督)

 今後の過密日程を考えても、選手に無理をさせないという指揮官の方針がハッキリと分かる起用だった。「(他の)CBの選手が安定したプレイを見せ、チームが3連勝していた中でチャンスをもらった。僕自身、勝手に緊張していたというか、『負けたら自分の責任だ』という重圧を感じていた」と当の木本。

 緊張は木本に限らなかっただろうが、いい意味で名古屋には『緊張感』が感じられた。稲垣のゴールで先制したことも大きかったが、ノエビアスタジアムのハイブリッドの芝に多くの選手が足を取られるなど、特別なプレイ環境が決して無理をしないという戦いを徹底させた。特に後半はゴール前にガッチリとブロックを作り、完全に守備に軸足を置いた戦いに徹していた。

「前半にリードを奪って後半に入ったので、そこで点の取り合いになる展開に持ち込んではいけない。我々がゲームを支配することをしっかりとやり切れたと思う。やるべきゲームをちゃんとやり、チームとしての成長を感じた」

 まさに名古屋がウノゼロ(1‐0)の戦い方を実践し、その術中に神戸がはまったといえる試合だった。神戸としてはみすみす落としてしまった勝ち点3ともいえる。華はないが堅実な名古屋のサッカーが、今後も勝ち点を重ねていくことを予感させる試合だった。

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