[MIXゾーン]FC東京の術中にハマった柏 大谷が「落ち着け」と声をかけるも痛恨の失点

先制点を手にしたFC東京が優位に試合を運んだ photo/Getty Images

バタバタしている間に先制を許す

延期されていたルヴァン杯決勝が4日に開催され、FC東京が2-1で柏に競り勝ち、リーグカップのタイトルを獲得した。試合前日に「先制点がかなり大事だと思います。お互いにカウンターが武器でもあるので、先制できればアドバンテージになると思います」と語っていたのは江坂任で、似た特徴を持つ両者の対戦は、その予想どおりに先制点が展開を左右し、勝敗を分けるポイントにもなった。

柏にとって痛恨だったのは、「立ち上がりからバタバタしてしまった」(大谷秀和)という試合の入りだ。森重真人をアンカーとするFC東京の[4-3-3]は中盤の真ん中が強固で、ダブルボランチの大谷秀和&ヒシャルジソンに自由がなく、トップ下を務める江坂任へのパスコースも潰されていた。必然、最終ラインでボールを持つ時間が長くなり、ここにプレッシャーをかけられることでミスも出ていた。そして、どこかバタバタすることにつながっていた。

16分にはレアンドロの個人技に守備陣が翻弄され、「ゲームに入りきれていないなか失点したのは大きかった」(大谷秀和)という失点を喫した。鋭いカウンターを武器とする両者である。1点をリードしたなら、その後は同点を目指して前に出てきた相手の裏を取る狙いが徹底される。この時点で、柏にとっては最悪の、FC東京にとっては最高の展開になった。
その後も柏は最終ラインでボールを持たされることが多く、なかなか前線によいボールを入れられなかった。前線のオルンガも当然のように厳しくマークされ、ボールに触ることさえままならない。それでも、40分にペナルティエリア内で縦パスを受けたオルンガが落とし、江坂任が右足でフィニッシュした。ゴールにはつながらなかったが、やはりこの両名がゴールに近い場所でボールを触るとチャンスになると思わせた瞬間だった。そして、45分には同点とした。CKから相手GKのミスをつき、瀬川祐輔がゴールを奪ってなんとか1-1で折り返した。

さらに、後半15分ぐらいまでは柏がボール保有率で上回り、何度かチャンスも作り出していた。しかし、落ち着きがあり、安定感のあるFC東京のゴールを割るには至らない。ポゼッションこそしていたが、なかなか決定機を作り出せていなかった。「やっぱり、先制点を取れたのが大きかったです。追いつかれましたけど、落ち着いてできていました」と語ったのは渡辺剛(FC東京)である。

74分、相手の縦パスをDFがクリアしたが、これが中途半端になり、永井謙佑→アダイウトンとつながれて勝ち越しゴールを許した。「(2点目を)失点したのは、われわれがアタックしていたよい時間帯だった。守備のところで一瞬も集中を切らすことが許されなかったが、相手の前線にはタフで速い選手が揃っていて1-2にされてしまいました」と振り返ったのはネルシーニョ監督である。

またも1点のビハインドとなり、3人同時交代、システム変更などで同点を目指したが、FC東京の各選手は身体の寄せが早く、ボディコンタクトの激しさも時間の経過とともに増していった。「相手は2点目を奪ったことで、非常に安定したゲーム運びができるようになりました」(ネルシーニョ監督)との言葉どおり、堅守のFC東京を崩せず、試合はそのまま終了した。

決勝という大舞台で先にペースをつかむのは大事だ。一度バタバタしてしまうと、どうしても引きずってしまう。自分たちのサッカーを取り戻すには強い精神力、成熟したチーム力など相当なパワーが必要で、さらには相手のパフォーマンスも関係してくる。柏の主将を務めた大谷秀和は「前半の立ち上がりはとにかく落ち着けと伝えていた。失点後もまだ時間はあるから慌てないように声をかけていた」と言葉を残した。一方、「(GK)波多野豪の失点以外はぜんぶハマったと思います」と、FC東京の長谷川健太監督は振り返った。

文/飯塚 健司

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