サッカーのピッチでは、時に信じられない事件が起こる。サポーターを蹴り飛ばしたエリック・カントナ、対戦相手に頭突きをかましたジネディーヌ・ジダン……。2014年のブラジルW杯で起こった、ルイス・スアレスの「噛みつき事件」も、そんなビックリ事件の一つとして記憶されているだろう。
2014年のブラジルW杯、D組一次リーグの最終戦。決勝トーナメント進出をかけて激突したウルグアイとイタリアのゲームで事件は起こった。0-0のまま迎えた後半、スアレスはイタリアのDFジョルジョ・キエッリーニともつれあって転倒。試合中にファウルは取られなかったものの、この際、スアレスがキエッリーニの肩に歯を立てていたことがのちに明らかになり、スアレスは4カ月間のサッカー活動の禁止をFIFAから言い渡される結果となる。試合は、この事件の直後にDFディエゴ・ゴディンが得点しウルグアイの勝利。イタリアにとっては苦い記憶だ。
この事件を、ウルグアイ代表のキャプテンを務めたディエゴ・ルガーノが振り返っている。英『Daily Mirror』がコメントを伝えた。
「彼は我々が敗退しないよう、賭けに出たのさ。彼は(キエッリーニを)噛んだ。大義に忠実だったんだ。スアレスに関するこの話は、ウルグアイサッカーの最高の歴史の中で語るに値するよ」
スアレスの行為は非難されて当然のようにも思えるが、実は当時もウルグアイの人々はスアレスに賞賛を送っている。ルール上は間違っているかもしれないが、全身全霊をかけて勝利を追い求める姿勢は素晴らしいという考え方は、世界のサッカー観を知る上で非常に興味深い。ルガーノは続ける。
「大義に忠実で、ある時点で間違いを犯してしまったチームメイトを責めるべきではない。キエッリーニはゲームを通してずっとルイスを追いかけていたけど、あの直後にキエッリーニはゴディンのマークにつくことに失敗し、我々は得点したんだ。ルイスはキエッリーニに心理的な痕跡を残したんだと思う」
さらにルガーノは、この事件の影響で、スアレスのバルセロナへの移籍が白紙になったかもしれないと語った。当時スアレスは、バルセロナだけでなくレアル・マドリードからも関心を持たれているとされていた。
「ルイスはリヴァプールで戦っていた。W杯で起こったことは、彼をマドリードかバルセロナへ売るという可能性を失わせたかもしれないね」
のちにスアレスは、キエッリーニに謝罪。両者の関係は修復されている。
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