[粕谷秀樹]この10年でCBに求められる能力が激変した! アーセナルは7名も揃えているが……

粕谷秀樹のメッタ斬り 028

粕谷秀樹のメッタ斬り 028

今季アーセナルのCBで最も出場機会が多いダビド・ルイス(右)photo/Getty Images

人に強けりゃそれでよかった

「世界一のセンターバックはだれだ!?」と問われると、フィルジル・ファン・ダイク(リヴァプール)、カリドゥ・クリバリ(ナポリ)、アイメリク・ラポルテ(マンチェスター・シティ)、マルキーニョス(パリ・サンジェルマン)あたりが思い浮かぶ。ユヴェントスのマタイス・デ・リフトもポテンシャルは高いけれど、今シーズンは環境適応にやや苦しみ、首脳陣とサポーター期待にはまだ応えていない。

この10年でCBに求められる能力も激変しているね。その昔は人に強けりゃそれでよかった。しかし、近代フットボールではスピード、状況判断、フィード能力も必要とされる。だから当然、各クラブは……いやいや、すぐれたCBはなかなか揃えられない。なかでもアーセナルは典型的な例だ。

ソクラティス・パパスタソプーロス、ロブ・ホールディング、シュコドラン・ムスタフィ、ダビド・ルイス、カラム・チェンバーズ、コンスタンティノス・マブロパノス、さらに冬の移籍市場でフラメンゴから獲得したパブロ・マリを含め、とりあえず7枚を確保した。ただ、近代フットボールのCBに求められる能力を装備した者はひとりもいないんだな。
まぁ、アーセナルはアーセン・ヴェンゲルの時代から、CBの補強には積極的ではなかった。近年でもガブリエウ・パウリスタ、ペア・メルテザッカー、ヨハン・ジュルーなど、なにかの要素が著しく欠けている者を獲得している。トーマス・ヴェルマーレンは頑丈ではなかったし、ウィリアム・ギャラスはピッチ内外でトラブルも多かった。ヴェンゲルのチーム創りが攻撃に偏っていた影響とはいえ、すぐれたCBの数が極端に少ないね。

今冬にアーセナルへ加入したパブロ・マリ photo/Getty Images

ローン、ローン、またローン

話を今シーズンに戻そう。ボールに食いつきすぎる欠点があるとはいえ、D・ルイスは一定の基準を満たしている。試合前の円陣ではいちばん声を出しているから、リーダーシップもあるみたいだ。じゃぁ、相棒は!? スピードが不足していたり、マッチフィットネスを整えるまでに時間がかかりすぎたり、フィードがイマイチな選手もいる。〈帯に短し襷に長し〉なんだよね。新戦力のマリも「左足のフィードは精度が高く、空中戦も強いが、スピードに欠ける」という前評判だ。

フラメンゴからやって来たってことは、ディレクターを務めるエドゥの人脈だろうね。ブラジル関連、非常に強い。でも、マリでよかったのかな。ミケル・アルテタ監督は納得しているのかな。就任後のプレミアリーグは1勝5分1敗。V字回復とはいかなかったものの、試合内容は確実に上向いている。より上昇するには一級品のCBが必要だったのに、マリは決定打に欠ける人選だった。

マジョルカなどでプレイした後、2016年夏にシティへ移籍。ジローナ、NACブレダ、デポルティボ・ラ・コルーニャをローンで転々とし、昨年夏にフラメンゴと正式契約。半年後、アーセナルにローン。マリのキャリアを踏まえても、アルテタ監督が満足する補強とは思えないんだよね。すっごく心配。

文/粕谷秀樹

スポーツジャーナリスト。特にプレミアリーグ関連情報には精通している。試合中継やテレビ番組での解説者としてもお馴染みで、独特の視点で繰り出される選手、チームへの評価と切れ味鋭い意見は特筆ものである。

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