悪夢のバルセロナ戦から変化なし PSGが陥ったまさかの”補強不足”

マンUに敗れたPSG photo/Getty Images

2年前からセンターバックの補強はケーラーのみ

いったい何点差をつけていれば安心できるのだろうか。フランス王者パリ・サンジェルマンがまたチャンピオンズリーグで不名誉な記録を作ってしまった。

マンチェスター・ユナイテッドとのチャンピオンズリーグ決勝トーナメント1回戦1stレグではキリアン・ムバッペの活躍もあって敵地で2-0と勝利を収め、マンUよりも1つ上のレベルにあるチームと証明したはずだった。ところが、ホームで迎えた2ndレグでは多くの負傷者を抱えたマンU相手に1-3で敗北。余裕のミッションに思われたベスト8行きを逃すこととなった。

何より屈辱的なのは、これまでチャンピオンズリーグの歴史において敵地での1stレグで2点差以上つけて勝利を収めたチームが本拠地での2ndレグでひっくり返された記録はなく、歴史に残る大逆転負けだったということだ。しかもベストメンバーを揃えられなかったマンU相手にだ。

パリ・サンジェルマンの敗因を一言で表すなら「自滅」だろう。前半2分にはDFティロ・ケーラーが不用意なバックパスを送り、これをFWロメル・ルカクに拾われて失点。30分に起きた2失点目は名手ジャンルイジ・ブッフォンがシュートを正面に弾いてしまい、これをルカクに押し込まれてしまった。集中不足によるミスとも言えるが、本当にそれだけが問題だろうか。単純にDFの個の能力を疑うべきではないのか。

歴史に残る大逆転負けを喫したのは2016-17シーズンの決勝トーナメント1回戦・バルセロナ戦も同じだ。あの時は本拠地での1stレグで4-0の勝利を収めたが、2ndレグでは1-6の完敗。2ndレグで4点差をひっくり返された前例はなく、こちらも歴史に残る大逆転負けとなってしまった。

今思えば、あの時からパリ・サンジェルマンの守備は十分に強化されていない。ここが1番の問題だ。あの屈辱的な大敗からネイマール、ムバッペと超がつくワールドクラスのアタッカー2枚は揃えた。ここにエディンソン・カバーニを加えた3トップは欧州最強と言ってもいい。さらにアンヘル・ディ・マリア、ユリアン・ドラクスラーもいる。攻撃陣をこれ以上強化するのは難しいだろう。

一方で守備にはほとんど手がつけられていない。当時のバルセロナ戦の2ndレグではGKが現在フランクフルトにレンタル移籍しているケビン・トラップ、センターバックにはチアゴ・シウバ、マルキーニョスのブラジル人コンビ、サイドバックにはトマ・ムニエ、ライビン・クルザワが入っている。未だにベテランのチアゴ・シウバが最終ラインをコントロールするやり方に変化はなく、あれからセンターバックの補強はシャルケから獲得した22歳のティロ・ケーラーだけだ。ケーラーもまだ完成していない選手で、ワールドクラスとは言い難い。何より今回のマンU戦では不用意なバックパスで失点に絡んでしまった。パリ・サンジェルマンには現世界トップクラスと言われるセンターバックがいないのだ。

今冬には指揮官トーマス・トゥヘルが即戦力となる守備的MFの獲得を希望していたが、エヴァートンの潰し屋イドリッサ・ゲイェの獲得には失敗。ゼニトからレアンドロ・パレデスを引き抜いたが、トゥヘルの第一希望でないのは明らかだ。結果的にマンU戦ではマルキーニョスが中盤に入っており、バルセロナに大敗した2年前から守備力が向上したようには見えない。

GKも経験豊富なブッフォン、アカデミー出身のアルフォンス・アレオラの2枚看板のようになっているが、どちらもワールドクラスとは言い難いだろう。ブッフォンは国内リーグでのパフォーマンスにも疑問があり、鉄人もさすがに41歳だ。以前ほど安定感があるわけではなく、マンUのダビド・デ・ヘアやリヴァプールのアリソン・ベッカー、マンチェスター・シティのエデルソン・モラレスと比較されると苦しい。

仮にマンU戦を突破していたとしても、この守備の面子で欧州の頂点に立つのは難しいだろう。それこそセンターバックで獲得した大物は2014年のダビド・ルイスが最後と言っていい。そのダビド・ルイスもすでに古巣チェルシーへ去っている。しかもパリ・サンジェルマンの場合はリーグ戦で問題点が浮き彫りとなりにくく、ワールドクラスの守備陣を抱えていなかったとしても圧倒的な攻撃力で相手をねじ伏せることができてしまう。

チャンピオンズリーグのグループステージも似たような勝ち抜き方となっており、今季6試合で挙げた得点数17は出場チームの中でトップの数字だ。しかし失点数は9点で、これは11失点のリヨン、10失点のトッテナムに次いで3番目に悪い。リヴァプール、ナポリと同居したことも影響しているが、さすがにグループステージでクリーンシートが1つもなかったのは問題だろう。

悲願のチャンピオンズリーグ制覇を実現するには最終ラインの補強が不可欠だ。チアゴ・シウバは34歳となり、世界最高のセンターバックと呼ばれた日は昔のことだ。若いプレスネル・キンペンベはロシアワールドカップを制したフランス代表にも選ばれていたが、まだ経験が不足している。代表でもレギュラーではなく、ワールドクラスとは言えないだろう。それはケーラーも同じだ。24歳のマルキーニョスは年齢的にも良い時期を迎えており、足下の技術も高い。マルキーニョスの相棒にワールドクラスと言えるセンターバックを1枚獲得するのが無難だろう。

これでチャンピオンズリーグは3シーズン続けてベスト16で姿を消すことになった。ネイマールとカバーニが負傷していたのは残念だったが、それだけで片付けられる大逆転負けでもないはず。1-0で勝てるようなチームを作ることができた時、初めてパリ・サンジェルマンが欧州の頂点を狙えるようになるのかもしれない。

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