アジアカップの戦い方は、ロシアワールドカップを踏襲したものになる。日本人が集まって普通にプレイしたらこうなる、という感じの無理のないサッカーだ。これまで外国人監督の下で少し背伸びしながらプレイしてきた日本代表がおそらくはじめてつかんだ等身大のサッカーといえるだろう。それが何なのか、それでいいのか、という問いはまた別にあるとして、短期間にまとまりやすい、コンセンサスのとりやすいスタイルは代表向きだ。森保一監督はロシア大会のコーチングスタッフの1人であり、監督就任後も明確にロシアの継承を基本としている。
フォーメーションは[4-2-3-1]。守備はミドルゾーンでのプレスを基調に、チャンスがあればハイプレスに移行して押し上げる。攻撃はミドルゾーンで奪ってのショートカウンターと、自陣でのビルドアップからコンビネーションを使った攻め込み。ただ、ワールドカップとアジアカップでは少し戦い方は変わる。アジアでは、日本に対してはっきり引いて守備を固める相手があるからだ。必然的に日本のディフェンスラインは高くなり、守備も前線でのハイプレスがメインになる。
ここで第一のポイントになるのがMFの守備力だ。ハイプレスを外されると、そのまま相手のカウンターアタックになってしまう。そこで、相手のカウンターの芽を摘むボール奪取のスペシャリストが必要になる。ハイプレスの主力になる前線は大迫、中島、南野、堂安。そして二の矢がボランチの2人。前線4人の攻撃力は素晴らしいが守備でボールを奪いきれるだけのフィジカルの強さはない。ボランチも1人は攻撃の組み立てに優れた柴崎、青山を起用するだろうから、MFのボール奪取スペシャリストの枠は1人だけになる。守田英正か遠藤航だ。このポジションにかかる負担は大きく、ここでカウンターを止められるかどうかは日本のプレイに大きな影響を与えるだろう。
第二のポイントはロングボール対策。ワールドカップではベルギーの空中戦にやられたが、アジアカップで日本に対して空中戦で優位性を持てそうなのはオーストラリア、イラン、韓国ぐらいだろう。そこまでボールを支配され、押し込まれる状況もあまりないと思う。むしろ危険なのはディフェンスラインの裏へ落とされるロングボールだ。日本が押し込んでいれば必然的にラインは高くなる。ところが、守備の中心になる吉田の弱点はスピードなのだ。逆にアジアのライバルにはスピードのあるFWがいる。例えば、韓国のソン・フンミンのスピードはプレミアリーグでも無双レベルだ。長い時間、ハイラインを維持してのプレイはワールドカップではなかった。アジアカップで違う状況になったときに、これまで目立たなかった弱点を露呈する危険はある。
第三は決定力。引いて構えている相手を攻略するのは容易ではないが、中島、南野、堂安、大迫のアタックラインは強力なので得点力そのものに関してさほど心配はない。ただ、彼らの破壊力は対戦相手も十分承知しているので、ファウル覚悟で潰しにくることは覚悟しておかなくてはならない。中島、堂安はサイドからカットインするドリブルが武器だけに、ドリブルを潰されると攻撃が止まってしまう。また、4人の素早いコンビネーションは大きな長所であるとともに、ボールを奪われたときに4人が置き去りにされるリスクも内包している。