[粕谷秀樹のメッタ斬り]モウリーニョの解任劇 責任は彼だけにあらず!

ユナイテッドの指揮官を解任されたモウリーニョ photo/Getty Images

首脳陣にも問題が……

成績不振の場合、現場の責任者が責任を取る……。洋の東西を問わず、一般的な手法だ。第17節終了時点で7勝5分5敗、失点29。マンチェスター・シティ戦とリヴァプール戦では終始《守らされた》。戦略・戦術がアップデートされていないし、一部選手との接し方も高圧的すぎた。マンチェスター・ユナイテッドの上層部が下した決断──ジョゼ・モウリーニョ解雇はやむなしって感じかな。

でも、全責任が彼にあるってわけでもない。莫大な借金でクラブを買収した後も、高額の役員報酬を受け取りつづけたグレイザー・ファミリー、大企業とのスポンサー契約では敏腕だけど、移籍市場では《くそド素人》以下のエドワード・ウッドワードCEOも反省しなくっちゃ。

そもそもグレイザーとウッドワードに、ユナイテッドを任せておいていいものなのかねぇ。サー・アレックス・ファーガソン退任後、人事の実権を握ったウッドワードは、デイビッド・モイーズ→ルイ・ファン・ハール→モウリーニョと、監督の起用に一貫性がない。ノープランの次が夢想家で、その後任が超現実主義者。ゲームプランがコロッコロ変わるから、選手たちはたまったもんじゃない。
しかもウッドワードは移籍市場で顔が利かないため、エージェントに足もとをみられるケースが少なくない。フレッジやヴィクトル・リンデロフ、アントニー・マルシャルの補強費は、市場価格をはるかに上まわっていた。ポール・ポグバを獲得したときも、エージェントのミーノ・ライオラにコントロールされた感が強いでしょ。それでもグレイザー・ファミリーは、大企業をスポンサーにつけるウッドワードを高く評価している。もはやビジネス最優先。現地のサポーターがグレイザーやウッドワードを快く思わないのは当然だ。あたしも好かん!

ユナイテッドのCEOを務めるウッドワード氏 photo/Getty Images

専任のディレクターを招聘するべし!

この際、ウッドワードは大企業の接待に専念し、そっちの方でカネを持ってきてくれ。そして業界に精通している人間をフットボールディレクターとして招き、強化を委ねる。要するに「餅は餅屋」ってことね。人間、向き・不向きがあるので、ウッドワードは自分の世界だけに留まっていておくんなさいまし。

さて、ユナイテッドは第18節からオーレ・グンナー・スールシャール新体制がスタートし、アシスタントコーチにマイク・フィーランが就任した。《ユナイテッドらしさ》を取り戻そうっていう人事なんだろうね。ピーター・シュマイケルがフットボールディレクターに立候補したって噂が飛び交い、デイビッド・ベッカムも「スールシャール新監督には協力を惜しまない」と、全面サポートを確約したらしい。OB連も「ウッドワードには任せておけない」って気づいたんじゃない。あとは件のCEOが周りの意見に耳を貸すのか、貸さないのか……。

顔だけは偉そうなんだけどね。

文/粕谷秀樹

サッカージャーナリスト。特にプレミアリーグ関連情報には精通している。試合中継やテレビ番組での解説者としてもお馴染みで、独特の視点で繰り出される選手、チームへの評価と切れ味鋭い意見は特筆ものである。

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