まるでハリルジャパン!? ナントでハリルが展開するデュエル&速攻サッカー

現在ナントを指揮するハリルホジッチ photo/Getty Images

哲学に変化はなし

ヴァイッド・ハリルホジッチは名将なのか、それとも単なる頑固者なのか。日本のサッカーファンの評価は分かれるだろう。日本サッカー界にデュエルと速攻の重要性を浸透させたことは大きな功績だが、ハリルジャパンは親善試合でなかなか結果を出すことができなかった。結果的に西野ジャパンに変更してロシアワールドカップ・ベスト16の結果を掴んだだけに、ハリルホジッチの哲学は間違っていたと考えている人も多いはずだ。

しかし、今ハリルホジッチはフランスのナントで評価を取り戻そうとしている。10月よりハリルホジッチはリーグ・アンで残留争いに巻き込まれていたナントの指揮を執っており、リーグ戦8試合を戦って4勝2分2敗の好成績を残しているのだ。順位も第16節終了時点で13位まで浮上し、残留へ光が見えてきている。

では、ハリルホジッチはナントでどのようなサッカーを展開しているのだろうか。これが非常に興味深いことに、日本代表と同じくデュエルと速攻が軸になっているのだ。まるでハリルジャパンの戦いを見ているようでもあり、ナントの選手たちは必死に体を張って戦っている。

日本代表を指揮していた時と同じく最終ラインでボールをじっくり回すようなことはせず、ボールを奪えば縦へ素早く展開するのがナントの基本ルールだ。ターゲットになるのは最前線に構えるエミリアーノ・サラで、役割としてはハリルジャパンでいう大迫勇也と同じだ。サラは大迫ほど足下が器用なわけではないが、187cmとサイズがある。クリアボールを強引に収めることができ、空中戦にも強い。サイドからのクロスに合わせることも得意で、第16節終了時点で12得点と大爆発している選手だ。

サラにボールを預けられない場合は、相手の最終ラインの裏に走るウイングの選手に長いボールを送るケースが多い。ハリルジャパンでは快速の浅野拓磨が同様の役割をこなしており、縦を強く意識しているところは同じだ。

そして最大の特徴は守備だ。ハリルホジッチはナントでも基本システムを[4-3-3]としているが、マンマークとゾーンを併用している。特に人への意識が強く、中盤のバレンティン・ロンジェ、アブドゥラエ・トゥレ、アンドレイ・ジロットはマンマークで相手の中盤を捕まえに行く。相手のサイドバックが上がってきた場合もウイングの選手がそのままついていくことが多く、この守り方もハリルジャパンでよく見られた光景だ。ナントはハリルホジッチ就任以降デュエルの勝率が上がっているが、マンマークで守るならば1対1の勝負で負けることは絶対に許されない。この守り方を機能させるにはデュエルの勝率を上げることが必須条件となる。

また、マンマークで相手の中盤を抑える場合は相手の動きにこちらが合わせることになるため、相手の動きに引っ張られて中盤ががら空きになってしまうことも少なくない。これはハリルジャパンでも見られていた光景だ。第16節・マルセイユ戦の1失点目の場面は特徴的で、がら空きになった中盤に相手のセンターバックがドリブルでボールを持ち運んできたことによってマークが混乱して失点している。現状ナントは守備時に最前線のサラが1人で相手のセンターバック2枚を見ることになるため、どちらかがボールを持ちあがってきた場合にトラブルが起きがちだ。センターバックからビルドアップされる問題はハリルジャパンも欧州遠征のウクライナ戦などで味わっている。

このスタイルは好き嫌いが分かれるところで、日本の選手たちには合っていないとの意見も多く出ていた。実際、ナントと日本代表では選手の身体能力に違いがある。ナントにはサイドバックのエノック・クワテング、MFアブドゥラエ・トゥレらアフリカにルーツを持つフランス人選手を筆頭に身体能力の高い選手がいる。センターバックのディエゴ・カルロス、ニコラ・パロワといった選手も人に強く、ここは日本人選手との違いと言えよう。デュエルの部分で見るなら、ナントの方がハリルホジッチのサッカーに向いている。

まだナントが残留できると決まったわけではないため、ハリルホジッチの手腕を手放しで称賛するのは難しい。ただ、弱者のチームを指揮して結果を出すことにハリルホジッチは長けているのだろう。ナントは残留を第一目標としたクラブであり、日本代表もFIFAランクで見ればロシアワールドカップ出場国の中で下から数えた方が早いチームだった。ハリルホジッチはナントと同じく日本代表を弱者と捉え、ハードワークを軸とした戦い方で強者に立ち向かおうとしていたのだろう。

それに対して日本は格上相手にも自分たちのストロングポイントを出すことを貫き、あくまで攻撃的なサッカーで結果を出そうとした。日本のサポーターも攻撃的なスタイルを好んでおり、この部分でハリルホジッチとの間に溝があったのは間違いない。ハリルホジッチ体制のままロシアワールドカップを戦っていれば結果がどうなったのかは分からないが、ナントで結果を出していることを見ると実力のある指揮官と考えるべきなのだろう。

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