[ロシアW杯#63]世界トップレベルの攻撃が炸裂 ベルギー史上初のW杯3位

開始早々の先制点で無理のないゲームプラン

開始早々の先制点で無理のないゲームプラン

W杯3位を手繰り寄せる2点目のゴールを決めたE・アザール。この試合のMOMも獲得した photo/Getty Images

日本を沈め、ブラジルを撃破したベルギーの高速アタックが、3位決定戦でも炸裂した。

4分、シャドリとムニエの両アウトサイドで攻撃を完結する。82分にはGKクルトワまで戻して創りなおし、イングランドDFがラインを上げた背後を、E・アザールが難なく突破した。

ベルギーは開始早々の先行で主導権を握れたため、無理のないゲームプランで進行していった。自陣にブロックを築き、ボールを奪った後はデ・ブライネの知性とE・アザールの超絶技巧を生かすカウンターで、何度となくチャンスを演出する。ラストパスがほんの少しだけズレたり、イングランドGKピックフォードの好守に阻まれたり、最終盤まで決定的なリードこそ奪えなかったものの、テクニカルエリアで戦況を見守るマルティネス監督の表情は、終始穏やかだった。

1986~91年に生まれた、いわゆる〈黄金世代〉が揃ってワールドカップに挑むのは、おそらく今回が最後だ。優勝を狙っていただけに、ベルギー史上最高の3位でも100%満足とはいえないのかもしれない。ただ、彼らの織りなすフットボールが魅力的で、とくに攻撃力は世界のトップレベルであることも、今大会を通じて見事に証明してみせた。

若手主体の限界が…… 悔しさを糧に新たな歴史を

若手主体の限界が…… 悔しさを糧に新たな歴史を

この悔しさを糧に。試合後、選手ひとりひとりを慰めるサウスゲイト監督 photo/Getty Images

一方、イングランドは先行を許した時点で攻め手を失った。引いて守る相手を崩す術は持っていない。スターリングがバイタルエリアまで降りてきたにもかかわらず、まわりの選手が動いていない。アクセントをつけようとしていたのはロフタス・チークただひとり。ベルギーの堅陣を崩せるはずがなかった。

後半からラッシュフォードとリンガードを投入。攻撃にリズムが出てきた。とくにラッシュフォードはボールをもらう動きを繰り返し、スペースを創り、現状打開を試みる。ベルギー守備陣が下がりすぎていた時間帯には、いい形でのシュート、得意とするセットプレイも増えてきた。70分にはラッシュフォードのスルーから、ダイアーがベルギーGKクルトワと一対一になるチャンスも迎えている。

しかし、連動性が感じられる攻撃は少ない。頼みのセットプレイも、コンパニ、アルデルヴァイレルト、ヴェルトンゲン、ヴィツェルを擁するベルギーの空中部隊に封じ込められた。

やはり限界だった。若手主体のイングランドに、建て直す力は残っていなかった。延長の末に1-2の敗北を喫したクロアチア戦から中二日。失望感を克服する時間としてはあまりにも短い。しかも、たったの4分で先行を許して焦り、委縮し、普段の力を発揮できなくなる最悪のパターンだ。まさに、今回のチームの弱点だ。イングランドはクロアチア戦に続き、経験不足を露呈したのである。

とはいえ、「ベスト8で御の字」とさえいわれた前評判を覆し、堂々の4位だ。サウスゲイト監督と選手、スタッフは胸を張って帰国できる。そして今回の悔しさを糧にして、新しい歴史を創ればいい。地元開催のワールドカップで優勝したのは1966年。スマートフォンもSNSもなかった大昔の話なのだから。

[スコア]
ベルギー 2–0 イングランド

[得点者]
ベルギー:4分 ムニエ、82分 E・アザール

文/粕谷 秀樹
サッカージャーナリスト。特にプレミアリーグ関連情報には精通している。試合中継やテレビ番組での解説者としてもお馴染みで、独特の視点で繰り出される選手、チームへの評価と切れ味鋭い意見は特筆ものである。

theWORLD222号 2018年7月15日配信の記事より転載

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