[水沼貴史の欧蹴爛漫/ロシアW杯特別編02]粘りのクロアチア 悲願の初優勝へ求められるのは……

両ボランチの背後を突きたいところです

両ボランチの背後を突きたいところです

クロアチアの攻撃を司るモドリッチ。ロングパスで局面を打開できるか photo/Getty Images

水沼貴史です。6月15日(日本時間)に開幕したロシアW杯も、残すは決勝戦のみとなりました。“神童”キリアン・ムバッペ擁するフランス代表の躍進は勿論のこと、3試合連続の延長戦をものともせず勝ち上がってきたクロアチア代表の驚異的な粘りに、私自身驚かされています。決勝戦の見所はたくさんありますが、 今回は初優勝を目指すクロアチア代表が堅守を誇るフランス代表を相手に、どのような攻撃をするべきかについてお話ししましょう。

フランス代表の両ボランチ(エンゴロ・カンテ、ポール・ポグバ)が空け渡したスペースにパスを供給できるか。この点が勝敗の行方を左右すると、私は思います。堅固なゾーンディフェンスを敷いているフランス代表ですが、カンテやポグバはボールホルダーに寄る傾向が強く、特にポグバは準決勝(ベルギー代表戦)ではマルアン・フェライニをマンマーク気味で監視していました。彼らには自分が担当しているゾーンを離れる場面が時折見受けられますので、クロアチア代表としては、アンテ・レビッチやイヴァン・ペリシッチといったサイドの選手を起点にショートパスを繋ぎ、彼らを誘い出す。そして彼らが空けたスペースに人を飛び込ませたいところでしょう。パスの種類にも工夫が必要です。準決勝で敗れたベルギー代表はショートパスや足下へのパス一辺倒の攻撃が仇となり、フランス代表の守備ブロックを切り崩せませんでした。クロアチア代表の中盤にはルカ・モドリッチ、イヴァン・ラキティッチ、マルセロ・ブロゾビッチをはじめ、ロングパスで局面を打開できるプレイヤーが複数います。先ほどご説明した両ボランチを引き出す作業をしたうえで、ロングパスで一気に空いたスペースにボールを届ける、もしくはサイドチェンジで相手の陣形を横に揺さぶる。この一連の攻撃を繰り返すことで、フランス代表の堅守にも綻びが生じるはずです。この試合をご覧になる皆さんには、クロアチア代表の選手たちがロングボールを効果的に使えているかにご注目頂きたいですね。

フランスの速攻は要警戒 ボールの失い方にご用心

フランスの速攻は要警戒 ボールの失い方にご用心

クロアチアの最終ラインを牽引するロヴレン(右)とヴィダ(左)。ビルドアップの起点として機能できるか photo/Getty Images

フランス代表の攻守の切り替えの速さやムバッペの快足を活かした速攻の威力は、今大会の中でも群を抜いています。彼らの速攻に晒されないようにするためにも、クロアチア代表としては、やってはいけないボールの失い方についてチーム内で徹底を図るべきでしょう。一番危険なのは、中盤での横パスを奪われ、相手選手と入れ替わられてしまうことです。特にピッチ中央でボールを奪われると、フランス代表が得意とする縦に速い攻撃をもろに受けてしまいます。このような事態を防ぐうえでも、先ほど解説したサイドを起点としたパスワークを実践することが大切だと、私は思います。危険なエリアでの安易なパスを減らすことが、結果的にフランス代表の速攻の抑止に繋がるはずです。
 
また、フランス代表の最前線(オリヴィエ・ジルー、アントワーヌ・グリーズマン)が敵陣深くでボールを奪うべく、ハイプレスを仕掛けてくる可能性も考えられます。デヤン・ロヴレンとドマゴイ・ヴィダの両センターバックのビルドアップ能力は一定水準以上にありますが、彼らが落ち着いてボールを安全な所に逃がせるか、そのために中盤や最前線の選手(マリオ・マンジュキッチ)が絶え間ない動き直しでパスコースを多く作れるかが、一つこの試合のキーファクターとなるでしょう。
 
高いレベルの試合になるほど、僅かなミスや攻守の切り替えの遅れが勝敗を分けます。互いに中3~4日の連戦をこなすという過酷な状況の中で、どちらが最後まで集中力を保ち、相手の僅かな隙につけ込むのか。サッカーフリークの皆さんには両チームが繰り広げる高度な駆け引きは勿論のこと、様々な思いを秘めて決勝戦に挑む選手たちの気迫というものを感じ取ってほしいですね。4年に一度のサッカーの祭典のフィナーレを、どうかご堪能ください。





水沼貴史(みずぬまたかし):サッカー解説者/元日本代表。Jリーグ開幕(1993年)以降、横浜マリノスのベテランとしてチームを牽引し、1995年に現役引退。引退後は解説者やコメンテーターとして活躍する一方、青少年へのサッカーの普及にも携わる。近年はサッカーやスポーツを通じてのコミュニケーションや、親子や家族の絆をテーマにしたイベントや教室に積極的に参加。幅広い年代層の人々にサッカーの魅力を伝えている。


theWORLD222号 2018年7月15日配信の記事より転載

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