【特集/UCLラウンド16プレビュー 7】イタリア最後の砦ユヴェントス UCLベスト8進出は至上命題 ポルト×ユヴェントス

ユヴェントスにとってベスト8へ勝ち上がることは義務

ユヴェントスにとってベスト8へ勝ち上がることは義務

欧州制覇を目指すユヴェントスメンバー photo/Getty Images

「スクデット(セリエA優勝)獲得と同じように、UCLベスト8は当たり前のこととして期待されるようになった。実際は、そんなに簡単なことではないけれどね」。ユヴェントスのレジェンドで、現在副会長を務めるパベル・ネドベド氏は、抽選会のあとでこう話していた。ユヴェントスにとって、チャンピオンズリーグのベスト8は最低限の目標だ。

昨季同様、今季もUCL決勝トーナメントに進んだイタリア勢は2チームだ。しかし、ナポリの相手は昨季の覇者であるレアル・マドリードで、常識で考えれば分が悪い。ポルトガルリーグで2位につけるポルトと対戦するユヴェントスは、イタリア最後の砦として、勝ち上がることが義務である。

油断大敵! 注意喚起は指揮官と主将の仕事

油断大敵! 注意喚起は指揮官と主将の仕事

イタリアの絶対王者をまとめあげる指揮官アッレグリ photo/Getty Images

ただ、落とし穴はこういったところに用意されるもの。その罠を察知して回避を促すのは、マッシミリアーノ・アッレグリ監督と主将である大黒柱のジャンルイジ・ブッフォンの仕事だ。「勝って当然」というのは単なる思い違いだろう。UEFAのデータによると、ユヴェントスとポルトガル勢の過去の対戦成績は5勝2分4敗とほぼ互角である。さらに、ポルトは今季のUCL予選プレイオフでローマを下して本大会進出を決めており、油断できる相手でないことは明らかだ。

それでも、やはり楽観ムードが強い。日本で主に放送される海外リーグがイングランドやスペインであるように、イタリアでも自国リーグ以外は同じようなものだ。よほどのことがなければ、ポルトガルリーグの情報など、あったとしても紙面の隅っこである。チームはいつもどおりだったとしても、ユヴェントススタジアムの雰囲気はまさに“大船に乗ったつもり”。サポーターが相手にかける圧力は、そこまでのものではない。そんな中でもチームを本来あるべき姿勢にすることがベスト8に進むための最初の関門だ。その準備は指揮官と経験豊富な主将の仕事である。

堅守を誇るポルト戦のキーマンは若きエース・ディバラ

堅守を誇るポルト戦のキーマンは若きエース・ディバラ

前評判を覆せるか!? ユヴェントス撃破を目論むポルトメンバー photo/Getty Images

ポルトについて詳しい情報は多くないが、守備力が特長の一つであることは確かだろう。国内リーグで17試合を消化して7失点という数字は際立っている。となれば、当然カギを握るのは攻撃陣だ。ゴンサロ・イグアインの名前が真っ先に思いつくが、それでは面白みに欠ける。そこでパウロ・ディバラを挙げてみたい。

昨年夏ナポリから獲得したイグアインは、加入当初に疑惑の目を向けられていたが、そのことはすでにほとんどの人の記憶から消えている。大エース加入で割を食ったのが若きエースのディバラだ。イグアインが今季全大会合わせて16ゴールを決めているのに対し、ディバラは6ゴールにとどまっている。

ポルトの守備陣は、イグアインの止め方を最優先に研究するだろう。ここまでのデータが示すとおりの守備力であれば、そこを抑えることができるかもしれない。イグアインに相手の守備陣が集中。1人外して裏に出ても、すぐにカバーがやってくる。エースはなかなかフィニッシュにいけない。そんな流れになれば、「パウロ、君の出番だ」、なんてアッレグリの声がかかりそうだ。イグアインもやられるだけではない。彼がつくる深さで、バイタルエリアに多少のスペースが生まれるはずだ。そこにディバラが顔を出せば、ポルトにとっては脅威でしかない。そのままミドルシュートを放つこともできるし、自ら突破することも可能。仕掛けておいて相手を誘い出し、エースにフィニッシュを託すという選択肢もある。

消化不良のシーズンを過ごすディバラはモチベーション十分。今後に向けてチーム力をさらに高めるためにも、イグアインをダシにゴールを奪うディバラを見たい。

いつもどおりの準備が勝利を呼び込む

いつもどおりの準備が勝利を呼び込む

右足から繰り出される正確無比なキックは一級品、FKの名手ピャニッチ photo/Getty Images

今シーズン前半戦、ユヴェントスのパフォーマンスはイマイチだと言われ続けた。実際、「強い」とうなってしまうような内容のゲームは多くなかった印象だ。だが、それはマンネリというよりも負傷者の続出が主な原因だった。ポール・ポグバというスターを昨年夏に失った中盤が迫力に欠けるのは仕方ないことである。それでも、負傷で出遅れていたクラウディオ・マルキージオが10月末に復帰し、最近は本来のプレイを取り戻しつつある。これからチームとしてのパフォーマンスはさらに良くなっていくだろう。

そんな中、中盤で決定的な仕事をしそうなのが、ミラレム・ピャニッチだ。昨年夏にローマからやってきた新戦力は、プレイメーカーとして優秀なことはもちろんだが、圧倒的な精度のあるプレイスキックという武器がある。彼がいることで、相手のファウルは減るだろうし、実際にチャンスがあれば、一振りで試合の流れを変えられる選手だ。

「勝って当然」という当たり前ではない圧力にさらされながら国内で勝ち続けるユヴェントスにとって、この状況は特殊ではない。アッレグリにはいつもどおりの準備でベスト8進出を決めてもらいたい。

文/伊藤 敬佑

イタリア・セリエAの熱に吸いよせられ、2007年、大学卒業と同時にイタリアへ渡る。以後、現地在住のフットボールライターとして、イタリアサッカーを追い続ける。ミラノを拠点に、インテルやミランを中心に取材活動を展開し、現地からの情報を提供している。Twitterアカウント: keito110

theWORLD182号 2017年1月22日配信の記事より転載

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