[EURO&COPA全40ヵ国の通信簿 2]王国の敗退、主役の復活 予想外の結末を生むコパ・アメリカ

退屈なブラジルが早期敗退 エース不在も言い訳にならず

退屈なブラジルが早期敗退 エース不在も言い訳にならず

ブラジルに引導を渡したのは“神の手”だった photo/Getty Images

センテナリオの宴は、南米サッカー界のみならず、世界をも大きく動かそうとしているのか。大会100周年を記念して6月4日よりアメリカで開幕したコパ・アメリカ・センテナリオでは、グループステージから波乱が起こった。

負の主役となったのはブラジルだった。自国開催だった2014年のW杯準決勝ではドイツに1−7で惨敗。続くロシアW杯南米予選でも6位に低迷するなど、ここ最近の悪夢を払拭すべく臨んだカナリア軍団だったが、第3戦でペルーに0−1で敗れると、29年ぶりとなるコパ・アメリカでのグループステージ敗退が決まった。

カナリアの翼をもいだ失点は、75分に右クロスをFWラウル・ルイディアスが押し込んだものだったが、これが神の手(ハンド)によるゴールだったと、物議を醸している。危なげなく3連勝した永遠のライバル、アルゼンチンの有力紙『Ole』は、「LA MANO DE ADIOS」(さよならの手)と、「神の手」を皮肉った見出しをつけ、大々的にブラジルの早期敗退を報じた。

セレソンを率いていたドゥンガ監督は、「スタジアムにいた全員が、あの瞬間、何があったかを目撃したはずだ」と訴え、誤審を冒した審判団に「何のためにヘッドセットをつけていたんだ」と、怒りを露わにした。

ただ、敗退の焦点はそこにはない。ブラジルは90分間を通してペルーから1点ももぎ取ることができなかったし、引き分けに終わったエクアドルとの初戦でも、ゴールは奪えなかった。第2戦こそコウチーニョのハットトリックを含む大量7得点で快勝したが、相手はFIFAランク74位のハイチ。すなわちブラジルは、骨のある相手との試合では、一度もゴールを割ることができず、状況としては1点を目標にしていたハイチと、なんら変わらぬ結果に終わった。

自国開催となるリオ五輪に出場するため、ネイマールが不参加だったことも、ドゥンガ監督にとっては不幸の始まりだった。だが、エースの不在以上に標榜するサッカーが、何ともつまらなかった。採用した4−2−3−1システムの重心は常に後ろにあり、選手たちの自由や流動的な動きは皆無。ハードワークと、運動量が全盛の時代において、ポジションチェンジや追い越す動きは見られず、ボール回しにおいても単調で、カナリアの神髄とも言える創造や発想といったものがピッチで表現されることはなかった。

ネイマールがいたならば……とファンも、それこそ指揮官も頭を過ぎっただろうが、彼がいたところで根本的な解決にはつながらず、W杯でドイツに大敗した原因を抜本的に改革できなかったことこそが、歴史的な幕引きとなった。それだけにドゥンガ監督の解任も致し方ない結末と言える。

美しさ=勝者ではない 狡猾でタフな戦いが勝者への道

美しさ=勝者ではない 狡猾でタフな戦いが勝者への道

前々回王者のウルグアイもGLであっけなく敗退 photo/Getty Images

波乱と言えば、ウルグアイもグループステージで姿を消した。こちらもケガでFWルイス・スアレスを欠くと、初戦はメキシコの運動量に圧倒され1−3で敗れ、続く第2戦でもベネズエラの前に0−1で散った。

エースは欠場を余儀なくされたが、チームにはエディンソン・カバーニという、もう1枚の看板がいた。にもかかわらず、攻撃は機能せず、チームは停滞した。もちろん決定機を外したカバーニに責任の一端はある。ただ、それ以上にミスが多く、特にベネズエラ戦では、攻撃に転じようとした矢先にパスミスして勢いが減退した。ケガで登録されず、出場資格のないスアレスが躍起になってウォーミングアップしたところで、ウルグアイにもスアレスにも、未来はなかったのである。

日本ではインテンシティやデュエルといった言葉で表現されるようになった、いわゆる球際の激しさや強度は、やはりグループステージから感じられた。また、ルイディアスの「神の手」に象徴されるように、マリーシアと呼ばれる狡賢さも健在だ。何より、その激しさはカードの数に比例してもいる。グループステージ全24試合で提示された警告は103回。1試合平均に換算すれば4.29回にも及ぶ。退場者は8人。これだけで、この大会が激しくもあり、汚くもあることは想像できる。

その数字にも表れているように、必ずしも強者であり、美しいサッカーをするチームが勝つわけではないということを教えてくれるのも、この大会の醍醐味である。準々決勝へと駒を進めたベネズエラやペルー、さらにエクアドルは、ボールを保持するパスワークを身上とするチームではない。準々決勝の注目カードとなったメキシコとチリも同様だ。彼らの強みはハードワークであり、組織的な守備をベースに大会を勝ち上がってきた。その戦いぶりは、華麗なるパスサッカーだけが正解ではないことを示している。

ただし、トーナメントに突入していく大会は、アルゼンチンやコロンビアに、前回王者のチリやメキシコ、開催国のアメリカといったハードワークを主体とするチームが、どこまで食い下がれるかがポイントとなる。

圧倒的な攻撃力を見せたアルゼンチン。優勝は堅いと思われたが…… photo/Getty Images

中でもアルゼンチンは頭ひとつ抜けている。体調万全ではないリオネル・メッシを一度も先発で起用することなく、グループステージ突破を決めた。そのアルゼンチンにしても、魅力はショートカウンターにある。勝ち進めば準決勝で対戦するアメリカやベネズエラは止められるか。逆の櫓では、準々決勝でコロンビアが無事に勝てば、チリ対メキシコの勝者と顔を合わせるだけに、一気に大会は盛り上がりを迎えそうだ。ただ、予想どおりの結末が描かれないのもコパ・アメリカである。

グループステージを終えて思うのは、バルセロナの攻撃を形成する「MSN」のうち、唯一プレイできたメッシのアルゼンチンだけが勝ち進んでいるという事実だ。ブラジルの早期敗退という歴史を刻んだセンテナリオは、もしかしたらメッシの大会として、新たなページを書き加えることになるのかもしれない。

文/原田 大輔

theWORLD175号 2016年6月23日配信の記事より転載

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