[EURO&COPA全40ヵ国の通信簿 3]完成度の高さに世界が驚愕! 小国が巻き起こすサプライズ

開催国を苦しめたアルバニアは、単純に守るだけではなかった

開催国を苦しめたアルバニアは、単純に守るだけではなかった

アイスランドの強さは、世界中に驚きをもたらした photo/Getty Images

グループリーグ2戦目で開催国フランスと対戦し、90分と96分に失点して0-2で敗れたアルバニア。チームを率いるイタリア人監督のジョバンニ・ディ・ビアージは、「いいパフォーマンスを見せてフランスを封じ込めていた。(選手たちは)実力あるチームを相手によく戦ったことに胸を張るべき。フランスを十分に苦しめた」と試合後に語り、戦い終えた選手たちを存分に讃えた。

過去にW杯、ユーロといった国際大会に出場したことはない。今大会はアルバニアにとってはじめての大舞台だったが、ディ・ビアージに率いられたチームは初戦のスイス戦、続くフランス戦に敗れて2連敗するも、どちらも惜敗だった。フランス戦でもゴールするチャンスがなかったわけではない。もし決めるべきところを決めていたら、違った結果になっていたという展開だった。

豊富な運動量で開催国フランスを苦しめたアルバニアのクケリ photo/Getty Images

そんなアルバニアのストロングポイントは、やはり守備面にあった。基本フォーメーションは4-1-4-1で、アンカーを務めるブリム・クケリが幅広いエリアをカバーし、最終ラインと中盤の2つのラインが的確な距離感をキープし、相手に攻撃のスペースを与えない。重要なのは単純に組織的なだけでなく、各選手が1対1の攻防には絶対に負けないという強い意志を持ち、身体を張ったプレイを見せていたことだ。これにはフランスのディディエ・デシャン監督も、「チェックが厳しいチームと戦うのは、やはり難しい」と戦い終えて言葉を残している。

屈強な身体を持つ選手たちが、守備組織の構築に秀でたイタリア人監督に率いられ、自陣にバランスの取れた守備のブロックを作っている。これでは、フランスでなくともチャンスを作り出すのは難しい。また単純に守備を固めている状態からカウンターを仕掛けるリ・アクションのサッカーでは、本大会の出場権を勝ち取れなかっただろう。

アルバニアはただ引いて守るだけのチームではなかった。試合展開や相手の出方に応じて、守備のブロックを作ってしっかり対応する時間帯があれば、前方へ仕掛ける積極的な守備でボールを奪う時間帯もある。ベンチにいるディ・ビアージから細かい指示が出ているのか、ピッチ内で選手たちが自由に判断しているのかわからないが、臨機応変な戦いができるチームに仕上がっている。

完成度の高いアイスランド 高品質な選手が揃っている

完成度の高いアイスランド 高品質な選手が揃っている

アイスランドは決勝T進出のみならず、イングランドを破ってのベスト8へ photo/Getty Images

アイスランドもまた、W杯、ユーロといった国際大会に出場したことがなく、今大会がはじめての大舞台となっている。ただ、数年前からアンダー世代の活躍が目立ち、2011年U-21欧州選手権では予選を突破し、8か国しか出場できない本大会への参加を果たしている。いまの代表チームには、このときのU-21欧州選手権を経験している選手が多い。

とくに、中盤から前線にかけて長く一緒にプレイする選手が多く、堅守から素早くタテに仕掛ける連動性のあるカウンターサッカーが可能となっている。基本フォーメーションは4-4-2で、守備的MFを務める2名が攻守をつなぐ重要な役割を担うが、ギルフィ・シグルズソン、アーロン・グンナルソンはU-21代表のころからコンビを組んでいる。また、右サイドのヨーハン・グズムンドソン、左サイドのビルキル・ビャルナソンも当時からのチームメイトだ。

この中盤の4名は初戦のポルトガル戦に先発出場し、1点ビハインドの51分にグズムンドソンのアシストからビャルナソンが同点ゴールを奪い、チームに勝点1をもたらしている。ポルトガルの守備組織が整う前に右サイドからグズムンドソンがクロスを入れ、ファーサイドに走り込んだビャルナソンが右足ボレーシュートで冷静にフィニッシュしたもので、攻撃の速さ、連係の良さが発揮されたアイスランドらしいゴールだった。

2トップの一角であるコルベイン・シグソールソンもU-21代表からともにプレイする選手で、中盤との連係が取れている。もうひとりのFWであるヨーン・ダーズィ・ベーズヴァルソンはひとつ下の世代だが、早熟だったベーズヴァルソンは2012年に20歳で代表デビューしており、すでに20を超える代表キャップがある。この間、いまの代表選手たちと連係を図っており、違和感なくチームに馴染んでいる。いわば、アイスランドの中盤、前線は長い期間をかけて熟成されており、当然ながら完成度が高い。

これを支えるのが経験豊富な選手が多い最終ラインで、32歳のハネス・ハルドールソンを守護神に、30歳のラグナル・シグドールソン、33歳のカウリ・アウルナソンのCBコンビがゴール前を固める。このトライアングルは冷静でミスが少なく、落ち着いて相手の攻撃を跳ね返す。ポルトガル戦ではクリスティアーノ・ロナウドにスペースを与えず、自由にプレイさせなかった。「われわれの守備はファンタスティックだった」と試合後に言葉を残したのは、アイスランドのヘイミル・ハルグリムソン共同監督である。

選手の冷静さ、プレイの正確さ、チームの完成度の高さを見ていると、とても大舞台がはじめてとは感じられない。ベンチには37歳となった大ベテランのエイズル・グジョンセンもいる。中盤、前線では若手や中堅が元気の良い動きをみせ、後方は経験豊富な選手がビシッとまとめている。そして、ベンチには“レジェンド”が控えている。アイスランドがグループリーグを突破したなら、番狂わせとして世界的なビッグニュースになるだろう。しかし、その戦いぶりから判断すると、決勝トーナメントに進出し、さらに上位へと勝ち上がるポテンシャルを十分に持っている。

文/飯塚 健司

theWORLD175号 2016年6月23日配信の記事より転載

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