昨季の大不振が嘘のように、今季は開幕から首位を走る神戸。第6節はアウェイでこれまた現在3連勝と波に乗る京都と対戦した。好調同士、関西ダービー、更に素晴らしいお天気という絶好の条件に16495人のサポーターが集結。声出し応援の制限もなくなり、最高の雰囲気の中で試合は行われた。
この試合で最も輝いたのが2ゴールを決めた神戸のMF汰木。先制点となるミドル、更に追加点のヒールを使った技ありのゴールは、ともにゴラッソと呼ぶにふさわしいものだった。
このゴールは神戸の快進撃を更に後押しするものであるとともに、開幕以降数字という結果を残せていない汰木自身が自らを奮い立たせるに充分なものだった。試合後、彼の言葉とともに、吉田監督、更に意外な裏話をしてくれたFW武藤に話を聞いた。
「本人が一番結果が欲しかったと思うので、良かったなと思います。僕自身は彼に対する信頼も厚いですし、得点を決める、決めないよりも(守備などの)色々な部分での貢献が大きいと見ていたので、そんなに自分自身は焦りとかはありませんでした。ただ本人は多少焦りもあっただろうし、(ゴールを)入れることによって本来のプレイというか、そういう彼の持っている技術も気持ちよく出せたんじゃないかなと思います」(吉田監督)
「昨日話したら汰木は(ゴールを)取りたい、取りたいっていってました。だから僕は固め取りするよって話したんです。そうなりました」(武藤)
周囲は決して汰木のパフォーマンスに問題があるとは考えていなかったようだ。ゴールも時間の問題。ただ当の本人は心中穏やかでなかったのも事実。
「とりあえずホッとしました。(1点目は)ボールが浮いてたんで、ふかさないことだけ考えて打ちました」
「前半お互いチャンスがあっていったりきたりのカウンター合戦みたいになっていて、後半もう1回自分たちがやってきたことをしっかりやろうという話でピッチに入って、スタートから勢いをもっていって先制点取れればという勝てるというモチベーションでいました。自分も先制点を意識していました」
少しだけ安堵の表情を交えながら、彼は振り返った。
「(焦りは)そうですねありました。アタッカーなのでゴールアシストがつかないと焦るし、乗ってきません。自分はいかに結果を出すかでもがいていたので。(ルヴァンカップでのアシストがあったが)あれで自分もギアがはいったし、勢いに乗った。今までもアシストゴールを決めると、乗るほど調子が上がっていくタイプなんで。ここから良くなるんじゃないかと思います。
「(同じポジションのルーキーの泉がルヴァンではゴールを決めているが)戦術的な部分でベンチに下がったこともあるので、自分でも割り切りましたが、目の前で(泉)柊椰が結果を出して自分的にも刺激になりました」
最後に表情が緩んだ瞬間、こんな話をしてくれた。
「今日のモチベーションでいうと昨日の浦和の試合観ていて、アキ(明本)が決めていて、あいつに負けていたらだめだなって気持ちで、そこが一番のモチベーションになりました(笑)」
試合途中担架で運ばれ交代したことに関しては「足は攣っただけです、大丈夫です」。そういい残すと彼はバスに乗り込んだ。待ち受ける沢山の神戸サポーターの声援が心地よかっただろう。
文/吉村 憲文