約2億1600万ユーロ。これは今夏アヤックスが売却した選手の合計額である。
マンチェスター・ユナイテッドにはFWアントニー(9500万ユーロ)とDFリサンドロ・マルティネス(5737万ユーロ)が向かい、前線の柱だったFWセバスティアン・ハラーはドルトムントへ(3100万ユーロ)、20歳のオランダ代表MFライアン・グラフェンベルフはバイエルン(1850万ユーロ)、センターバックのペール・スフールスはイタリアのトリノ(900万ユーロ)、左サイドバックのニコラス・タグリアフィコはフランスのリヨン(420万ユーロ)など、今夏は主力の流出が目立った。
他にもフリーで右サイドバックのノゼア・マズラウィをバイエルン、GKアンドレ・オナナをインテルへ送り出しており、大幅な戦力ダウンの夏と考えられる。
ところが、アヤックスは今季も強い。国内リーグでは無傷の5連勝で首位に立ち、チャンピオンズリーグ・グループステージではスコットランドのレンジャーズを4-0のスコアで粉砕。主力を大量に引き抜かれたチームとは思えぬ戦いぶりだ。
大きいのは、チームとしての戦い方がはっきりしていることだ。今夏には指揮官エリック・テン・ハーグもマンUへ引き抜かれたが、後任のアルフレッド・スロイデルの下でもテン・ハーグ流のDNAは残っている。選手たちが自由自在にポジションを動かし、相手のライン間へ次々とボールを送り込む攻撃的なパスサッカーが継続されているのだ。
レンジャーズ戦ではセンターフォワードの位置にガーナ代表の22歳MFモハメド・クドゥスを起用。クドゥスは偽9番のように動き、豪快な左足ミドルで得点まで奪ってみせた。クドゥスの最前線起用はオプションの1つになるだろう。またベンチには20歳のオランダ代表FWブライアン・ブロビーも控えており、ハラーをドルトムントへ売却したとは思えぬ層の厚さがある。
さらに前線ではトッテナムから獲得したオランダ代表FWステーフェン・ベルフワインが大当たり。リーグ戦では6ゴール、レンジャーズ戦でもゴールを記録しており、ウイングの一枚はベルフワインで決まりだ。右のウイングにはベテランのセルビア代表FWドゥシャン・タディッチもいる。やや調子を崩しているものの、実績は十分。チームの精神的支柱だ。
中盤ではテクニックの高いオランダ代表MFステフェン・ベルハイス、守備を引き締めるメキシコ代表MFエドソン・アルバレス、そして先日発表されたオランダ代表メンバーに名前が入っていた20歳のMFケネス・テイラーが新たな司令塔として主力になりつつある。
センターバックでは今夏獲得したカルバン・バッシーがフィットしており、オランダ代表ユリエン・ティンバーとのコンビも悪くない。彼らが縦へポジションを動かしたり、ワイドに開いたりと、センターバックもビルドアップへ絡んでいくのがアヤックス流だ。2人はその役割をレンジャーズ戦でもきっちりこなしていた。
そしてチャンピオンズリーグ第2節の相手はリヴァプールだ。アヤックスは敵地アンフィールドへ乗り込むことになるが、現状を考えればリヴァプールも油断できない。アヤックスの攻撃は確かに機能しており、アヤックスがリヴァプール、レンジャーズ、ナポリと同居するグループAを突破する可能性は十分に考えられる。
主力を失いながらも競争力は失わない。新生アヤックスも欧州トップレベルで通用するチームに仕上がってきている。