[水沼貴史]遠藤航はデュエルだけじゃない! 遠藤に始まり遠藤に終わった21-22シーズンに見せた大きな進化

水沼貴史の欧蹴爛漫067

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今季はキャプテンとしてもチームを牽引した遠藤 photo/Getty Images

2年連続でデュエルキングに

水沼貴史です。熱き戦いが繰り広げられた欧州サッカーの2021-22シーズンもついに終了。今季も各リーグさまざまなドラマがありましたが、ブンデスリーガに関して言えば、「バイエルンの1強状態に対して」という点からすると、ドルトムントやレヴァークーゼン、RBライプツィヒあたりが「もっとやってくれないとね」という感じはあったかもしれません。ただ、監督交代が行われてどうなるのかという中で、欧州5大リーグでは前人未到であったリーグ10連覇を成し遂げたバイエルンがやっぱりすごい。これに尽きると思います。リーグをより一層盛り上げるためにも、来季こそは彼らを止めるチームが出てきてほしいです。

一方で、今季のブンデスリーガは「日本人の活躍が素晴らしかった」という印象もあります。新たな才能を開花させた原口元気(ウニオン)、チーム内得点王に輝いた奥川雅也(ビーレフェルト)、ブレイクを果たした伊藤洋輝(シュツットガルト)……。また、ブンデスリーガでの出来事ではありませんが、鎌田大地と長谷部誠が所属するフランクフルトは、バルセロナやウェストハムといった強豪クラブを退けてヨーロッパリーグ優勝を成し遂げています。そして、今季も語らずにいられないのが遠藤航(シュツットガルト)の活躍でしょう。そこで、今回は遠藤について少々話したいと思います。

ヨーロッパリーグの出場権を争った昨季に対して、今季は残留争いと、チームとしてはかなり難しいシーズンではあったと思います。強豪クラブのように毎年毎年整った戦力で戦えるわけではありませんし、エースであるオーストリア代表FWサーシャ・カライジッチが前半戦を負傷離脱していたことなどもありましたからね。シーズン通してみると、波があったのは間違いないでしょう。

そんな中で、昨季までの実績が認められ、今季はシュツットガルトのキャプテンに任命された遠藤。長谷部もそうですが、まずキャプテンとしてあの場に立っていること自体が素晴らしい。そして、チームを最後の最後で残留へと導く最終節でのあの劇的ゴール……。シュツットガルトの今季初ゴールも遠藤でしたし、まさに遠藤で始まり遠藤で終わったシーズンだったのではないでしょうか。責任感みたいなものをずっと背負ってきたんだろうなと思いました。オリンピックへの参加でチームへの合流が遅れるなど、決して簡単な初キャプテンではなかったと思いますが、彼がそれだけのパーソナリティと能力を持っていると、周りから認められている証拠です。それをシーズン通してもしっかり証明できたと思います。

また、背中でチームを引っ張る姿は得意の球際でもあらわれており、2年連続でデュエル勝利数が1位。昨季のデュエルキングが「たまたま」だったわけではないことも証明しました。アンカーだけではなく、今季はインサイドハーフとして数多くプレイしたことで、より攻撃的な守備が見せられたのだと思います。バランスや状況を見なければならないアンカーに比べてインサイドハーフは後ろにもう1枚仲間がいるということで、ガツガツ行けるポジションでもあると思いますからね。遠藤の良さや強みがより出た、出しやすかったのではないでしょうか。

守備面はもちろんのこと、攻撃面でも素晴らしい成長を見せた遠藤 photo/Getty Images

攻撃面がより進化

デュエル数などの守備にばかりに目が行きがちではありますが、インサイドハーフでプレイすることで、今季は前線での顔出しやパスなど攻撃の部分がより一層目立った印象もあります。もちろん、昨季もインターセプトやデュエル勝利からボールを奪い、前線へ繋げてショートカウンターというシーンはありました。ただ、今季は1列前でプレイすることになったことで、より高い位置で、ゴールに直結するような位置でそういったプレイが多く見られるようになったと思います。ボールを奪った勢いそのままに、ゴール前へ入っていくシーンなどもたくさん見られましたからね。パスに関しても、相手の背後に落とすような浮き球のパスがものすごく上手くなっている印象です。本人からしたら4ゴール2アシストという結果は、もう少し目に見える結果が欲しかったかもしれませんが、攻撃面が大きく進化したシーズンでもあったでしょう。

遠藤が今後さらなる進化を遂げるためには、どんどんチャレンジしていくべきだと思います。1対1は弱くないし、攻撃面もしっかり成長しているし、メンタル的な部分も十二分に持てているし……。あからさまなウィークポイントがあるようなタイプの選手ではないと思うので、強みの部分をより一層出していってほしい。このままどんどん腕を磨いて成長していってほしいなと思います。それが日本代表、はたまた日本サッカーのレベルアップにもつながると思いますからね。

残留争いをしている際、チームの状況に関わらず今夏の移籍を否定するようなコメントを残したり、チームへの愛着を口にしていた遠藤。一方で、以前からプレミアリーグなどへの憧れを示すこともありました。欧州でそれなりに認められている選手ではあると思いますし、上に行けるだけの実力はあります。チームへの愛着があるかもしれませんが、本人もどこか心の中ではさらに上のレベルへと思っているでしょう。それがなければ選手は向上しないと思います。移籍に関しては、本人だけでなくクラブ事情や金銭面などさまざまな条件があるので簡単ではありません。今夏かはわかりませんが、さらなるステップアップを見てみたいですね。

今年は11月から12月にかけてカタールW杯もあります。遠藤はW杯で日本代表の大事なポジションを任される選手だと思いますので、ぜひ日本をベスト8へ導いてほしい。来シーズンが始まって少し経ってからW杯が開幕するので、コンディションはすごく合わせやすいと思いますし、オフにしっかり休養をとって、来季もシーズンの開幕から素晴らしい活躍を見せてもらいたいです。

それでは、また次回お会いしましょう!

水沼貴史(みずぬま たかし):サッカー解説者/元日本代表。Jリーグ開幕(1993年)以降、横浜マリノスのベテランとしてチームを牽引し、1995年に現役引退。引退後は解説者やコメンテーターとして活躍する一方、青少年へのサッカーの普及にも携わる。近年はサッカーやスポーツを通じてのコミュニケーションや、親子や家族の絆をテーマにしたイベントや教室に積極的に参加。YouTubeチャンネル『蹴球メガネーズ』などを通じ、幅広い年代層の人々にサッカーの魅力を伝えている

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