“杉田妃和&林穂之香”たち頼みでは耐えきれず 英国に読まれた、なでしこの守備戦術

イギリス代表戦で左サイドハーフを務めた杉田。献身的なプレスバックでチームに貢献した photo/Getty Images

相手CBの攻め上がりを許し、失点

24日に行われた東京五輪サッカー女子のグループステージ第2節で、E組の日本女子代表(なでしこジャパン)がイギリス女子代表と対戦。なでしこジャパンは74分に自陣左サイドからDFルーシー・ブロンズにクロスを上げられると、FWエレン・ホワイトのヘディングシュートを浴び失点。最終スコア0-1で敗れている。

なでしこジャパンの高倉麻子監督は、前節のカナダ代表戦から先発メンバーを5人入れ替え。GKは山下杏也加、最終ラインは右から清水梨紗、熊谷紗希、南萌華、宮川麻都の4人。中盤は右から塩越柚歩、林穂之香、中島依美、杉田妃和。2トップに田中美南と長谷川唯が配置された。

前節のカナダ代表戦と同じく、[4-4-2]の布陣で相手の攻撃を受け止めたなでしこジャパン。守備面で気を吐いたのが左サイドハーフの杉田と、2ボランチの一角に入った林で、両選手とも豊富な運動量でチームを牽引。林が自陣バイタルエリアとサイドのスペースをまめに埋め、相手の攻撃をスローダウンさせたほか、杉田は球際で抜群の強さを見せ、ブロンズとのサイドでのマッチアップで引けを取らず。縦横無尽に中盤を駆け巡った両選手の存在感は際立っていた。
なでしこジャパンの守備が崩れたのは、イギリス代表がビルドアップに工夫を加えてきた失点シーンの直前。イギリス代表はこの場面で、リア・ウィリアムソンとステフ・ホートンの2センターバック、この2人の間へ降りたボランチのキーラ・ウォルシュの計3人でビルドアップを開始。なでしこジャパンの2トップに対し、イギリス代表が自陣後方で数的優位を作りながらパスを回せる状況になっていた。

なでしこジャパンとしては、“2トップ対相手の変形3バック”という敵陣での数的不利を解消するべく、2トップの片割れが最終ラインへ降りたウォルシュにプレスをかけ、[4-4-2]のサイドハーフが相手の3バックの両脇の選手を捕捉するといった工夫が必要だったが、形状変化に対応できず。2トップのまま漫然と3バックにプレスをかけてしまったため、ボールを奪えなかった。

イギリス代表のビルドアップを止めきれなかったなでしこジャパンは、センターバックのホートンにボールを運ばれ、そのまま自陣左サイドを攻められる形に。この直後に、ブロンズのクロスからホワイトに決勝ゴールを挙げられている。相手の基本布陣やプレスのかけ方に応じ、陣形を当意即妙に変えてビルドアップを行うチームが近年増えており、この試合でイギリス代表が見せたボランチを最終ラインに組み込んだビルドアップも、今やサッカー界で定番の戦術となっているが、これに対しなでしこジャパンは有効な手を打てなかった。

熊谷と南の2センターバックが空中戦で強さを見せ、杉田と林の気の利いた守備により複数失点を免れたなでしこジャパンだが、この4人の奮闘で何とか相手の攻撃を凌いだ感が否めない。特に後半は敵陣でボールを奪いきれず、相手に自陣の深いところへ侵入されてクロスを上げられる場面が多かった。決勝トーナメント進出に向け、勝ち点3奪取が求められるグループステージ最終節(チリ代表戦)では、相手の形状変化に即座に対応できるかどうかが、なでしこジャパンの運命の分かれ道となるだろう。

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