[水沼貴史]EURO2020決勝Tではこの3人に注目! 大会後にはステップアップも!?

水沼貴史の欧蹴爛漫056

水沼貴史の欧蹴爛漫056

イングランドの中盤を支えるフィリップス photo/Getty Images

イングランドの中盤を支えるハードワーカー

水沼貴史です。1年遅れでの開催となりましたが、欧州No.1を決めるEURO2020もついにベスト16が決定しましたね。グループステージから非常に面白い試合が続いています。決勝トーナメントでは、さらに白熱した試合が期待できそうです。そして、何よりスタジアムにお客さんがいると、テンションや雰囲気がこれほどまでに違うんだなと感じました。やはりサッカーは有観客かそうでないかで、質も変わってくるのではないかなと思います。また、王者のポルトガルが苦戦を強いられたり、イタリアが復活してきたり……。勢力図がどんどん変わってきているところも面白さの一つになっているはずです。

さて、今回はそんなEURO2020のグループステージで素晴らしいパフォーマンスを披露し、私がひそかに注目している選手を3名ほど紹介したいと思っています。決勝トーナメントでのさらなる活躍ももちろんですが、EURO2020が終わって以降の飛躍にも期待している選手で、彼らからは目が離せそうにありません。

まず1人目は、イングランド代表の中盤を支えるMFカルビン・フィリップス(リーズ・ユナイテッド)です。中盤の少し後ろの方から長短のパスでボールをつなぎ、ゲームを作るのが得意な選手です。イングランドの前線には多くのタレントがいます。ここまでチームのバランスを重視しながら中盤を支えつつ、そこへきちんとボールをつなぐ役目をしっかり果たせていると思います。ただ、状況に応じて前へ上がってチャンスを生み出すスルーパスを出すこともできます。実際にクロアチアとのグループステージ初戦では、その形からFWラヒーム・スターリングの決勝ゴールをアシストし、決定的な仕事もしていましたね。
彼はハードワークもいとわない選手で、守備範囲も非常に広いです。グループステージの無失点突破に大きく貢献しました。普段からハードワークを徹底的に求めるマルセロ・ビエルサ監督(リーズ指揮官)の下でプレイしているのも大きいと思います。クラブでやっていることを代表でもしっかりやれている印象がありますね。イングランドのフィールドプレイヤーとしては、グループステージで唯一全試合にフル出場していて、昨年9月にデビューしたばかりですが、イングランドのガレス・サウスゲイト監督からの信頼も厚そうです。

イングランドのベスト16の対戦相手は、強豪のドイツです。グループステージでは苦戦を強いられたドイツですが、調子は徐々に上がってきていますし、劇的な展開で決勝トーナメント進出を決めたため、勢いに乗っていることでしょう。力のあるチームは、そういうのを引き寄せたらなかなか止められませんからね。ビエルサ監督の下で才能を開花させ、代表の主力にも定着したフィリップスが、そんなドイツの豊富なタレントを揃える中盤をどれだけ抑えられるのか気になるところです。

グループステージで2ゴールを記録したオランダのダンフリース photo/Getty Images

前へのパワーが凄まじいオランダの超攻撃型WB

そして2人目は、オランダ代表の超攻撃型ウイングバックのDFデンゼル・ダンフリース(PSV)です。彼はPSVの右サイドで、日本代表MF堂安律ともコンビを組んだことがある選手です。まだ25歳ではありますが、歳を重ねるにつれて荒削りだったのが洗練されてきているように感じます。少し前まではガンガン前へ行きすぎて、守備などの場面でも信頼を置けるようなタイプではなかったんですけどね。ただ今大会を見ていると、守備時には5バックになる[3-4-1-2]をオランダが採用している影響も大きいとは思いますが、そういったところの心配も解消され、今大会ではチームのキーマンとなっているように思います。クラブで2019年末ごろからキャプテンマークを託されるようになり、メンタル面が成長したことも大きな影響を与えているかもしれません。

ダンフリースの最大の売りといえば、やはり前に出て行くときのパワーです。それには凄まじいものがありますし、最初にいるポジションがほとんどウイングなので、ゴール前に顔を出すこともできます。逆サイドからのクロスには、もれなく合わせに行っています。一昔前までは動けるウイングバックやサイドバックと言ったら、小柄なイメージがあったかもしれません。しかし、そういった今までのタイプとは異なり、189センチの恵まれた体格を備える彼がウイングバックに入って身体的な部分の特長を最大限に活かし、フィニッシャーにもなっているのです。オランダにとっても非常に大きく、ゴール前に入って行けるのは相手にとって脅威です。それが2ゴール1PK奪取という結果にもつながっていると思いますね。

歴代のオランダ代表ではウイングがキーマンとなることが多々ありましたが、ウイングでなくても右サイドで縦に行ける。そういった選手として、とても面白い選手だなと思います。2トップの一角には197センチの長身を誇るFWボウト・ベグホルストがいるので、ダンフリースが前へ出て行ってからのクロスなども非常に効果的だと思いますよ。オランダは決勝トーナメントを勝ち上がって行く上で、ダンフリースのところで勝って行かないといけないと思います。オランダの中で面白い存在である彼が、まずはチェコとのベスト16でどのようなプレイを見せてくれるのか注目です。

イタリアの右ウイングを務めるベラルディ photo/Getty Images

イタリアの攻撃を支えるウイングらしいウイング

最後の3人目は、直近30戦無敗の快進撃を続けるイタリア代表の攻撃を支えるFWドメニコ・ベラルディ(サッスオーロ)です。イタリアはとにかく、今大会でとても面白いサッカーをしています。ロベルト・マンチーニ監督の下でずっと負けなし。守備的に戦って負けていないわけではなく、攻撃的に戦いつつのこの結果なのですごいです。堅守だけではダメ、カウンターだけではダメ、やはりボールをしっかり保持しながら前から行きたい。そのためにはリスクを伴いながら高いところから行く必要があり、ボールを取られたときも素早いネガティブトランジションをしっかり発揮しなければなりません。イタリアはこれらのことが、マンチーニ監督の下で洗練されてきています。ここ数年は良くない時期もありましたが、今大会を見ているとサッカーのスタイルも変わり、「いやいや、イタリアはまだ死んでないぜ」「イタリアはまだまだここからだぜ」といった勢いをすごく感じることができています。

その中で、ベラルディは個の力で突破できますし、それが今大会でも対戦相手の脅威になっているので、ウイングらしいウイングだなと私は感じています。チームでも結果を残していますし、ここでブレイクしたらビッグクラブへ移籍する可能性もあるのではないですかね。ベラルディの隣にMFニコロ・バレッラがいるのも非常に効いていると思います。バレッラはつなぎ役という部分では貴重な選手なので、彼がいるからこそベラルディも自由に仕掛けることができているはずです。MFジョルジーニョやMFマヌエル・ロカテッリを含めて、中盤の3枚がしっかり前を支えていることも大きいのではないでしょうか。ただ、ベラルディは得意のドリブル突破からトルコ戦で相手のオウンゴールを誘発したり、スイス戦で先制点をアシストしたりしたものの、今のところゴールだけがまだありません。自ら得点を決めることができれば、今後の戦いでさらに調子を上げるのではないでしょうか。オーストリアとのベスト16では、ぜひともベラルディのゴールが見たいです。

グループステージ第3戦のウェールズ戦では、同じポジションのFWフェデリコ・キエーザも素晴らしいパフォーマンスを披露していました。次のオーストリア戦ではどちらがスタメンに入るのか気になっている方がいるかもしれませんが、バレッラとの相性を考えても、私個人的にはベラルディでいいのではないかと思っています。ベラルディとバレッラのコンビの形が、今はすごく良いですからね。ベラルディ→キエーザで、ベラルディで疲れさせたところによりスピードのあるキエーザを持ってきた方が相手からしても嫌だと思いますよ。

他にも鉄板どころであるベルギー代表のMFケビン・デ・ブライネ、今大会で評価を上げているMFロビン・ゴセンスなど、気になっている選手は正直まだまだたくさんいます。EURO2020に出場している選手は、面白い選手ばかりですからね。今大会を機に、これまであまり見ていなかったリーグや試合を見る機会が増える方も多いのではないでしょうか。あと約2週間ですが、まだまだEUROで熱くなりましょう!


水沼貴史(みずぬま たかし):サッカー解説者/元日本代表。Jリーグ開幕(1993年)以降、横浜マリノスのベテランとしてチームを牽引し、1995年に現役引退。引退後は解説者やコメンテーターとして活躍する一方、青少年へのサッカーの普及にも携わる。近年はサッカーやスポーツを通じてのコミュニケーションや、親子や家族の絆をテーマにしたイベントや教室に積極的に参加。YouTubeチャンネル『蹴球メガネーズ』などを通じ、幅広い年代層の人々にサッカーの魅力を伝えている。

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