[MIXゾーン]まさに“痛み分け” 勝点1の代償大きかった大阪ダービー

G大阪の宮本監督は困難な状況下での指揮を強いられている photo/Getty Images

大久保、小野瀬が負傷交代

「GWやっちゅうのに、何やねんこの寒さは?」

 閑散としたスタンドの、僅かに人で埋まった記者席で誰かがいった。確かに春物のコートでスタジアムにきていたら、より一層寒さが身に染みただろう。辛うじて念のために引っ張り出したダウンが寒さから身を守ってくれる。

 ただ前半だけで6分ものアディショナルタイムになったのには、その寒さが影響した可能性もある。選手が次から次へと倒れ、担架の出動も数回。僅か23分でFW大久保は自ら要求してピッチを去ることになった。
「試合直後なので正確なことはいえない。明日以降ドクターからより詳しい情報を待ちたいと思うが、筋肉系のケガであるとは聞いている」(クルピ監督)

 映像を見ると左ハムストリングのケガが濃厚だろう。

 同時に寒さとは反比例するようにダービーという『熱さ』は感じられた。G大阪の宮本監督は「相手のプレッシャーも前の方でしっかりとかけてくる中で、スムーズにボールを運ぶという点でうまくいった部分もあったし、少し停滞したところもあった。しかしサイドにボールが出て、今までであれば少し大事にボールを戻すようなシーンでもあっても、今日に関してはしっかりとボールを前に進めようというところはあった」とチームのパフォーマンスには一定の評価を下した。

 しかしC大阪の選手の見方は違った。

「今日はチームとして立ち上がりから集中できた試合だった。シュートチャンスも作れた。運悪く1点しか取れなかったが、相手にチャンスは作らせなかった」

 この試合でC大阪に移籍して初出場となったCBダンクレーはこう語った。実際試合を通じてC大阪が押し込む場面が多く、GK東口の存在がなければ試合は一方的なものになっていたはずだ。

 前半終了間際にVARの判定でG大阪のエリア内のハンドが認定され、これをFW豊川が狙った。しかしシュートは枠を叩く。東口でも届かない弾道だったが、今度はゴールマウスがG大阪を守る。

 後半に入って一進一退の攻防が続いたが、C大阪がゲームを動かそうとカードを切り、結果的にこれが功を奏する。途中出場したFW中島が74分に見事なゴールを決める。

「どのポジションで出るか分からなかったが『左サイドならこうしよう』など、シュートやアシストの選択肢を色々と頭に入れて臨んだ中で、(ゴールシーンは)イメージを実現できた」

 温めていたイメージをしっかりとゴールに結びつけた。MF藤田のダイレクトパスを受けた中島が狙うと、これがG大阪のMF井手口に当たってコースが変わり、東口もお手上げのコースに飛んだ。

 このゴールで勝負あったかと思われたが、G大阪はそのゴールから1分後に3枚替え。圧を掛けて前に出る姿勢が明確になったことで、ようやくボールを運べるようになった。ゴール前での仕掛けで最後はシュートがC大阪の選手の右腕に当たり、PKの判定。これを途中出場のFWパトリックが確実に決め、同点に追いついた。

「自分たちが失点して追いかける形だったが、誰ひとり諦めることなく、自分たちの強さを出そうとする姿勢が見られた。その中で引き分けに持っていくことができ、もう少し時間があれば逆転ゴールも生まれるのではという状況を見せることができた。その点は今後のリーグにプラスの影響を見せてくれると思う」(パトリック)

 同点に追いつき、その後勝ち越し点を狙うG大阪の攻撃には迫力があった。惜しむらくはそれをもっと早くできていれば……。試合はこのまま引き分けに終わった。双方にとって1-1が価値あるものであったかは分からないが、C大阪が勝ち点2を落としたことは事実で、G大阪は未だに複数得点が奪えない状態が継続することになった。

 今年初めての大阪ダービーはまさに『痛み分け』の文字のごとく、両チームにとって痛みをともなう結果となった。

文/吉村 憲文

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